夢のかたち・10
――夢を見た。子供の夢だ。柔らかな光の中で、笑っている子供の夢。
「ん……」
「お目覚めになりましたか?」
「うん……」
ぼんやりしたままの俺の頬を撫でる指先。それを辿っていくと、「夢でも見ていましたか」と尋ねる愛しい笑顔があった。
「ああ、子供の、夢……二人、いや、三人、かな」
微睡みながら答えると、リリーが「それから?」とやんわり急かした。
「一人は弟で……あとの二人はまだ小さくてわからなかったけど、みんな楽しそうで、幸せそうだった」
「いい夢ですね」
「うん、いい夢だ。もう少し見ていたい」
頬を撫でていた手を掴んで引き寄せた。「アーノルド!」と慌てた声が俺を呼ぶのを知らんふりして、また目を閉じる。
「いい夢、だなあ」
傍に立つ自分も、子供たちと同じ光の中にいた。ずっとそこに行きたかった気がする。柔らかい光の中。
「二度寝する時間はありませんよ」
「五分だけ」
「もう。仕方のない人ですね」
そう言ってすっぽりと腕の中に納まった俺の夢は、あたたかい、光のかたちをしている。
(おしまい)
王太子編、お付き合いありがとうございました。楽しんでいただけましたらぽちっと評価よろしくお願いいたします。
あと三つくらいはぼんやりネタがあるのですが、全部書くかはわからないのでまた後日活動報告にでもネタ出ししておきます。一つは短いと思うのでおそらく書きます。
たくさんのいいねやブクマ、感想ありがとうございました。ゆっくりお返事していきます。





