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3話 家のない孤児たち 後半

火の玉はまっすぐ俺の胸にあたった。


ああ、終わった。これは死ぬやつだ。









ん?


なぜか全く痛みがない。しかし体の感覚は普通にある。神経が焼かれて感覚がなくなったわけではなさそうだ。


あれ?どういことだ?



俺はまだその場に立っていた。胸のほうを見ると何の傷もないし、火が燃え移った痕跡はない。



へ?


すると

「え....許して...お願い...お金返すから私を攻撃しないで...」

彼女は後ろに下がりながら、先ほどの強気の発言とは真反対の弱弱しい声で言った。追いかけられていた時よりも恐れてる表情を見せていた。



あんな火の玉を手から出せるやつがなんで俺を怖がっているのか?自分に効かなかったことが関係しているのだろう…


暗くて狭い裏道には沈黙が流れていた。





「別に俺はお金を返してほしいわけじゃない。お前が住んでいるところに案内してくれ」

「はい...」



彼女は素直に返事をしゆっくり歩きだした。俺は何もできないのであろうのに彼女が住んでいるところへ向かった。何かしら力になりたかった。。なぜか捨てられた子供たちに対して強い同情のような感情を抱いている。


彼女は緊張しながらゆっくりと歩きだしよた出し、ついていく。先ほどよりさらに細かい裏道を進んでいく。大通りでは綺麗な灰色の石と木材の使われた建物だったが、ここの建物は汚れた荒い石造りの建物が多い。窓も小さく住みづらそうなエリアだ。


しばらく裏道を歩いていると壁に穴が開いている建物についた。ドアなどは近くにないのですべて建物の裏だとわかる


彼女は穴の前で止まって、穴のほうを指さした。


「ここ。いえ」


中を覗いてみるとなんとひどい。ぼろぼろの布の上に横になってひどく咳をしている10歳くらいの少年と目がうつろになって座り込んでいる5歳くらいの少年がいた。


中は薄暗く汚い。狭くてカビのにおいがひどい。人が住むような場所ではない。


おそらく家と家の壁の間の空間だろう。


「弟のユッティとキルア。ユッティは病気」



彼女は平然と言った。だが、どう見てもユッティはもうすぐ死にそうな咳をしている。よく見ると布には血があり、おそらく彼が咳をしたときに出たものであろう。


俺は何も言えなかった。どうしてこのような状況でこどもが放置されるのだろうか...


「医者はいないのか」

「医者...ヒーラーは、高い...お金渡しても足りないといってお金持っていく...」


まじか。この町の医者はくそ野郎がいるようだ。ちゃんとした食事だけでも悪化を防げたかもしれないのに...もう相当な医療技術がないと彼は助からないだろうな...


「ヒーリングポーションなら...元気...なるかも...」

「ヒーリングポーション?」

なんだろうか?薬?なんか怪しい響きだがこの世界では普通なのだろうか..



「けがと病気を治してくれる飲み物...高い...かえない...けど.....」

彼女は俺の財布を開いて銅貨二枚を取り出した。そして彼女は悲しそうな顔をした。

まだあげるとは言ってないけどな??


「どれくらいするのか」

「安いのは銅貨2枚...だけど...ユッティが治るのは...銀貨4枚...やつって...きいた...」



ああ、そうか...今日見たパン7200個分だ。あり得ない数のパンだ。ジャムも多く必要だろうな...

とふざけたことを言っている場合ではない。

ものすごく高価なものだとは分かった。俺は金持ちではないが、それくらいのものを買ってもそこまで痛くはない。


別にこの子供たちにつながりがあるわけではない。が、助けてあげないといけないと俺の本能が言っている。


「それ買ってやるよ」

「え?」


「どこで売ってあるんだい?連れて行ってくれ」


彼女はポカンと見てきた。そして目を細めながら歩き出した。


俺たちはそのまま大通りに戻ってポーションを売っている出店に来た。

怖そうな店主がいてピンク色の液体が入ったガラス瓶が売ってある店だ。この女の子にすられる直前に見ていた店だ。


そうか、あれは回復ポーションだったのか。



「何か用か、少年」

店主は機嫌悪そうに言った。


「この子の弟がなんかの病気で死にそうなんだ。咳もひどく血が出ていて...そこのポーション二つお願いします」

「聞いた感じじゃこのローポーションでは治らんな。」


「え、では何を買えばいいのですか?」

「ハイポーションだ。在庫はあるがまあお前ごときが手に届くもんではない」


なめられている気がする。まあ仕方ないか。20歳にもなってない少年が大金を持っているとは思わないだろう。



俺はバッグに入ってる予備の財布から銀貨4枚を取り出し彼の前の台に強く置いて言った。



「ハイポーションを二つ」


店主は驚き、ピンク色のポーションが並んだ棚の裏に回り、真っ赤のポーションを二瓶持ってきた。


「ほい。ありがとさん」


態度が全く変わったなこいつ。宿主の時と同じだ。

やはり世の中は金なのだろう...。嫌な気持ちになりながらも大金をバンッと置いて相手をびっくりさせるのは少し気持ちいい



そして俺と少女は急足で戻り、ユッティにそのポーションを飲ませた。


彼の口に入った瞬間、彼の顔色はよくなり、咳が止まった。しばらくしたら彼は目を覚まし、さっと起き上がった。


「お姉ちゃん...」と言って彼は少女に抱き着いた。


「ユッティ...」

二人は涙を流していた。久しぶりに動けたのだろう。




なんだろう。悪い気持ちはしないな..




そして彼女はこっちも向いた。

「お兄さん。ありがとう。私の名前はハナ。なにか...返せることがあったら...する...」


「何もいらないよ。治ってよかったよ、ほら彼にも使ってあげな」

といってもう一人を指しながらポーションを渡した。


「キルアは何も悪くない...いつもそう...」


どうやら彼はいつもうつろな目をしているらしい。病気ではなくてよかった。


「しごとはできないのかい?」

「できない...私たち...きらわれているから」


「え?どうして?」

「わたしは...わからない。生まれた時から呪われてる...って言われて...それでだめ..って」


赤髪の少女ハナは俺の前で涙を浮かべながら話している。


理由はわからない。全くこの世界の常識もわからない。しかし、子供が呪われていると決めつけ捨てる親の気持ちは全くわからない。許し難い...


「そうか...」


だからといって俺は何もできない


したくてもできない。そのようなもどかしさがある。



「ハナ」

「はい..お兄さん」

「お前は弟たちのために頑張っているのはえらいな」

「...」



彼女は少しほほを赤らめ、下を向いた。まだまだ子供なはずなのに今はすごく大人のように見える。


正直俺よりもたくましい。昔の俺がどうだったかは知らないがそんな俺は人のためになんでも捧げられる人ではない。。


これから彼女たちが救われるといいのだが....



「俺はしばらくは近くの宿に泊まっているよ。何かあったらそこにおいで」

「わかった...ありがとう!」


涙の乾ききっていない目をキラキラさせながら彼女は言った。

俺はその場を離れ、宿へ向かった。


歩きながら回復ポーションについてぼんやりと考えた。


回復ポーションは聞いた感じ万能で怪我から病気まで治るようだ。濃度の高さによって回復能力が違う。興味深い。一つ気になるのはそれが効かない場合があるのかとそれはどういう時なのかだ。いつ病気や怪我をするかわからないし、ポーションで治せると油断してると痛い目に遭いそうだ。


宿に着くと静かにドアを開け中に入った。いつものデスクには宿主は座っていなかった。


そして、外はもう暗くて、宿の中は静かだった。


玄関の廊下を歩いて階段を上がろうとしたら、薄暗い食堂の中で宿主が一人で飲んでいるのをみた。


今日外へ出してくれたお礼だったり今日会ったハナたちが働けそうなところを聞いたりしたいので彼に話してみようと思い、食堂に入った。






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