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3話 家のない孤児たち 前半

俺が目覚めてから三日がたった。


この三日の間、残念ながら記憶は戻ってこなかった。


もしかしたら記憶は二度と戻ってこないかもしれないと思い、一からこの町、この世界について学びなおそうと積極的に宿主に話しかけている。主に街のことや社会情勢について聞いているのだけど、流石に何も知らないことを察したのか、最近特に俺に優しくしてくれて居るようだ。記憶が完全になくなったことを理解して世話してくれているのはありがたい...


ちなみに俺はまだ目覚めてから一度も外に出ていない。治安は特に悪くはないらしいが、人攫いや強盗はよく起こると聞き、怯んでいた。しかも、宿には食堂があり外へ出る理由もないのだ。木のコップで出される水の感触が非常に不自然なのをのぞいたら。


しかしまだ世界のことを知らない、、、人の話ばかりではなく実際に出てみないと分からないのではないかと宿主に朝食の時に言われ、今日は外に出ることにした。


現在、俺は玄関のドアの前に立っている。木製の頑丈そうなこのドアの先には知らない世界が広がっていると思うと怖いが少しばかりウキウキする。


でも、もし出た瞬間さらわれたらどうしよう...それか記憶がなくなる前に恨みを持たれたものに待ち伏せされ殺されたりしたら...


俺って結構心配性なんだな...


もじもじドアの前に立っていると


「おいおい外に出るのが怖いのかい?少年よ。」


びくっとして後ろを見ると、毎朝食堂で見かける背の高い金髪のおじさんが鉄製の防具をつけて立っていた。腰には剣がついており、一目で剣士だとわかる。


「まあ、、」


「あっはっはっは。お前面白いな。そんな気持ち悪いくらいの魔力量のオーラが出ているくせにこんな平和なラー二ナ町で歩けないなんて。あっはっは」


あー、馬鹿にされた。ん?魔力?オーラ?

もしかしてこの世界には魔法があるのかもしれない。

彼は俺をよけてドアに近づいてゆく。


「せっかくならお前が案内してやればいいじゃないか、ルード」


また背後から声が聞こえたと思えば、宿主さんだ。


「はあ~?めんどーだぜ。金払ってくれんならべつだがな。あっはっは」


と言って男は外へ出た。


なんだよ期待しちゃったじゃないか。


「ごめんな、彼はいいやつなんだが、めんどくさがり屋なんだよ。というか俺が言った通り外に出ることにしたのだな?」


「あ、はい..出ようと思っていましたがまだ自分には...」


と言おうとした瞬間、彼はあり得ないスピードで俺に近づき、気付いたら俺は外にいた。


え?ええええええ?


「はじめの一歩が一番大変だよな。ほら、もう外だ。俺はもうやることがたくさんあるからいけないが、町探検楽しんで来いよ」


と言って彼は消えた。外からドアのほうを見ると彼はまた家の中にいた。


彼のその速度はやばすぎる。人間なのか?

彼は先ほど俺の目で追えないほど早く俺を持ち上げ外へ連れてきたのだ。


別に昔の記憶が残っているわけではないがあの速度は普通じゃないような気がする。。


そう思いながら俺は歩き出した。

____________________________


初めに来たのは部屋の窓から一番よく見えた町の中央通りだ。昼は出店が並び多くの人でにぎわっている。奥の川のほうでは魚介類や輸入品、自分がいる側ではパンや花を売っている。おそらくこっち側に畑などがあるのだろう。


いろんな年齢や性別の人々がそれぞれの出店で物を買ったり、値段交渉したりしている。


「パン二つで銅銭一枚でどうだ?」

「高い高い!そんな値段で買うわけねーだろ、4つで一枚だ。」

「3つで一枚でどうだ?」

「ああ。それでいい」

というような調子だ。見てて少しばかり面白い。あとたまにまともに交渉できていないやつがいるのも面白い。


「この人参おいしそうだな。値段は?」

「ああ、カルア民国の南部からの輸入品だ!二つで銅銭三枚だ。」

「まじすか!少し負けてもらえませんか?」

「無理だ無理だ」

「ええー。一つで銅銭二枚はどうだ?それくらいなら」

「それくらいならいいぞ」


完全に商人のほうはこいつが馬鹿なのを利用してやがる。算術ができてよかった...


多くの商品は食料か装飾品だが、ひとつ目に留まったのはピンク色の液体の入った瓶を売っている出店を見つけた。値段を見ると一つ銅貨二枚。一見安そうだが、さっきのパンの100倍ほどの値段だ。この謎の液体はなんだ?


聞いてみようと思ったが、ちょっと怖い顔をした商人に話しかける勇気がなかった。


「どこのポーションなんだい?」


運よく通りがかりの男が聞いた。ポーションらしい。なにか魔法のような効果を発揮するのだろう。案外病気の薬や幻想剤かもしれないのだが...


「ロスエン共和国の西部だ。この品質はほかにないぜ旦那」


商人は得意そうに話す。ロスエン共和国という国が近くにあるようだ。どのようなところなのだろうか?


「へえ。永族が作ったものではないだろうな?」


永族?人種のことなのだろうが非常に不思議な名称だ。


「はっ...つくったものの人種はかんけいーねーだろ?品質がいいならいいじゃないか!!」


「よくねーな。あんなけがれた者たちが作ったものを買うわけねーよ」


どうやら永族は被差別民族のようだ。そこまで言われるのであれば相当な差別意識が広がっているのだろうな。


すると横から髪の毛が赤い少女がぶつかってきた。小さく謝りそのまま歩いて行った。

人も多いし仕方ないな。


あれ?


手をポケットの上に置くと財布がなくなっていた。


スリだ!


後ろを振り返ると先ほどの赤髪の少女が見えた。どうせお金は少ししか入れてこなかったので盗まれてもそこまで困らないのだが、記憶をなくす前に汗かいて稼いだ(たぶん)お金を簡単に人が盗んで使われるのが嫌で彼女を追いかけた。


彼女は追われているのに気づいて走り出した。そして、急に曲がり脇道に入った。


おれはそのあとを追う。先ほどまでの活気が嘘のような静かな通路だった。少女は足が速く全速力で走っているのに見失いそうだ。


もう無理かもしれないと思った瞬間、彼女は行き止まりになっているところで曲がってしまった。


彼女は止まり、すぐに後ろを向いた。彼女の目には恐怖が現れていた。手は震えあせもかいていた。


俺は道をふさぐように立ち、彼女を見た。まだ幼いのに美しい顔立ちだ。きっと美人になるのだろうな...

だが彼女の来ている服はいろんなところが汚れており、破れたりしてボロボロだ。


「財布を返しなさい。物を盗んだらいけないと親に教わらなかったの?」

戒める親のような口調でいった。無理やり取り上げたくはないので素直に渡してほしいところだが。


「私、親、いない」


彼女は小さな声で言った。一瞬にして俺は自分の行動を悔いた。この少女は親がいない。つまり養ってくれる人がいないという可能性がある。生きていくためにスリをしないといけないのかもしれない。


もしかして、追いかけずにそのままにしたがよかったかもしれない...


「どこにすんでいるんだい?」

口調をやわらげ言った。別に俺が何かできるわけでもないだろうが、彼女の状況を知りたかった。


「...言えない」


家ないのか。なんちゃって。こんな冗談言ってる場合じゃないなごめんなさい。


なんか言えない理由があるのだろう。


「どうして?」

「弟たちがいるから」

そうか、この少女は弟らを守っているのか。


この状況、どうすればいいのか。お金をあげたがいいのか。でも銅貨二枚くらいしかないから食料だけでも2、3週間で尽きる。


「帰らせて。じゃないとお兄ちゃんあぶないよ」


急に強気になったようだが、俺がもし短気な悪人であったら..あぶ...


「燃え尽きろファイアーボール」


彼女は手を前に出しそう叫ぶと彼女の前に手のひらの二倍くらいの大きさの火の玉が現れたと思えばこっちに飛んできた。状況を理解する暇もなくその火の玉は飛んできた。


まずいな。死ぬなこれ。


来ているのに気付いているが体が間に合わない。まっすぐ胸へ向かっている。

すべてがゆっくりになった。死ぬ前に時間が長く感じるやつなのだろうか。




火の玉はゆっくり、しかし確実に俺の胸に近づいていく...




避けれない...








ああ、もうおわりだ。




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