1話 夢の異世界転生
―いつからだろう
この部屋に引き籠もりこうしてずっとラノベ(異世界転生ものばかり)を読みふけって過ごすようになったのは。
・・・そうオレは大学の4回生(まぁ単位を取っていたらの話だが)何もやる気が起きず1年の入学直後から何だかんだでずっと引き篭もっている。
大学デビューを決めようと張り切り過ぎて大失敗、気付けば周りに人が居なくなり異物の様にポツンとお一人様の大学生活に耐えきれずこの有様である。
そんなオレの心の支えは異世界転生もののラノベ現実逃避と言えばそうかもしれない。しかしもう彼処へ戻る勇気も無い。
希望の光すら見えない絶望のあの現実からこうしてオレは目を逸らし続けているのである。
しかしとうとうオレも卒業の年、親にはもうバレているのだろうが何も言ってこない・・・
それもそれで辛い所ではあるが親としてもどう接したらいいか分からないのだろう。
これでも高校までは格闘技に捧げてきた・・・と言っても筋トレこそしていたが基本見て声援を送る側。
決して自ら戦う場所に上がりたいわけではないあくまでスポーツ観戦として応援しちょっとした筋トレで選手の気分を味わうそんな陰キャであった。
それが嫌で大学デビューを目論み儚く砕け散ったのである。
そして今日は数週間分のサラダチキンを買いにコンビニへと役割を長く忘れていた扉を開き向かうったのだった。
異世界転生した格闘家に憧れコンビニで数週間分のサラダチキンとサラダを買いまた部屋へと戻るこのルーティーンいつまで続けられるのか・・・
それともうちの親は卒業と同時に家賃を払わず大家に追い出してもらうつもりなのか?そんな恐怖に怯えながらも今日も現実逃避な1日を終えるべく鍵を回し部屋へと戻る。
!?!???
ヅル、ドガッドド〜ン
扉を開け靴を脱ぎ廊下と呼ぶには短いフローリングに歩を勧めた瞬間見えたのは天井・・・そして視界は縁から白く曇り意識を失った・・・
数日前に食したサラダチキンの包装紙に靴下を滑らせ玄関の外履きと内履きの境目となる僅かな段差の角でオレは後頭部を強打したのだった・・・
・・・眩い光に包まれ目が覚めると古代神殿の様な場所にオレと幾人かが同じ様に立っていた。
「おぉ〜勇者様方よくお越しになられました。」
そう話しかけて来たのは白髪ロン毛の爺さんで、その顔には年輪の刻まれた執事の風格が備わっていた。
「えっとここは一体どこなのでしょうか?」
まず口を開いたのはロブヘアーの清楚な雰囲気の少女が現状を訪ねた。
「ここは国王ファシル様の治めるセイティン王国でございます。皆様方は魔王ロゴス討伐の為に異世界より召喚させて頂いたのでございます。」
そう言って白髪の執事は丁寧に頭を下げ一歩前へと歩み出てそれからその場の全員を案内すると通路の方へと進み始める。
「ちょ、ちょっと待てじゃあ俺等は何処のどいつかも知らない奴等の為に戦えって言うのか!?」
そんな抗議の声を橙色でウルフメッシュ髪の男が吠える。
その声に前を進む執事が上半身のみ振り返る様にこちらを向き「お話は取り敢えず王宮の方で…」と短く答え大きな石柱の廊下を進み始めた。
言われた男の方もその静かながら気迫の籠もった返答に呑まれ渋々ながらその後に続く、それを見た皆もそれにつられるように続いていく。
中世の王宮…そう形容するのが最もしっくりくるセイティン王国の王城に俺達は招かれた。
・・・王宮〜謁見の間・・・
赤い絨毯が真っ直ぐ玉座に向かい天井の高い如何にも王様に謁見する場所という雰囲気の所へ招かれ待つ事数分・・・
「おぉ〜こちらの6名が今回来て頂けた勇者殿達ぢゃお。まずはこの国を代表して礼を言うのぢゃお。此度の魔王討伐の任大変感謝しているのぢゃお。わしがここセイティン王国国王のファシルぢゃお。可能な限りの支援は惜しまぬ故是非お力を貸して欲しいんぢゃお。」
随分とラフな感じで挨拶をしてきたのは威厳からは程遠い、丸みのあるそして随分と背の低いニコニコ笑顔張り付いているお爺さんもとい国王だった。
「あ、あの〜すみませんその僕らがその魔王?と戦う事はもう決定事項なのでしょうか?」
呼ばれた時に居た召喚陣の中で1番影の薄い・・・と言うか6人居たんだ・・・存在感の無い刈り上げ君が国王に問いかけた。
その問を聞いた国王と執事の顔が驚愕に染まる。
次の瞬間、二人は脱兎のごとく玉座の後ろに回り込み二人して小声でナイショ話をしている。
「どう言う事じゃヴェートン!?召喚された勇者殿達は積極的に魔王討伐に乗り出してくれるのじゃなかったのか?ぢゃお?」
「はい、私めもそう聞いておりました!?歴代勇者様の事を記した勇者の書にはその様に記されていましたし。」
何やら玉座の後ろで国王と執事による緊急会議が繰り広げられている様だ。
そして二人は玉座の横に居た宰相と思しき風格のある白髪混じりの老齢のオッサンに目を向け手招きしている。余程想定外の事だった様だ。
・・・数分後話終わったのか平然と玉座に座り直した国王は改めて俺達に向き直り座して話始めた。
「そうぢゃお(笑)まぁ取り敢えず魔王を倒してもらわないと君達を元の世界に帰す魔法陣が起動させられないのぢゃお。だからどうしてもとは言わないけど此方も可能な限りの支援はするから引き受けて欲しいんぢゃお」
「えっ帰れないんですか僕等!?」
その影の薄い存在感が消えそうな程に青ざめている。
しかし、国王の方は終始笑顔で必死に訴えてくる。
「いやいやなにも死んでも勝って欲しいという事じゃなくて大怪我しない程度に頑張ってほしいってことなんぢゃお。」
そして"しまった”っと一瞬口を滑らせた国王の顔に焦りの色が見えるも人好きする笑顔で続ける。
「勇者はとても凄い力を持っていてチョチョイノチョッイと倒して魔王が倒された時に放出される魔力をウチの宮廷魔法師団が魔法陣へ送り込めば元の世界に行けるんぢゃお」
おいおい随分とお手軽な魔王討伐だなと思って聞いていたら横に居た銀髪が話に割り込んできた。
「おいおい陰キャこう言うのはチートで楽勝ってのが相場だろゴチャゴチャ言わずにちゃっちゃと魔王倒してやりゃいいんだよ。」
そう息巻いて影の薄い刈り上げ君に威嚇でもするかのように怒鳴り散らす。
「ちょっと貴方ここがどういう世界で私達に何が出来るかも分からないのにその言い方はどうかと思いますよ。」
桜色の綺麗なセミロング美女と言っていい少女が銀髪君を諌めに入る。
正義感の強そうなその瞳に睨まれて一瞬話が止まったそこで国王が口を開く。
「おっとそれなのぢゃお。君達の力がどれ位で何が出来るのかこの魔道具:『汲取り君初号機』でステータスを調べるんぢゃお」
なんってネーミングセンスなんだ!?まるで昔の田舎のトイレに使うアレみたいだ。
と言っても見た目はただの大きな鏡それをのぞき込むだけで良いらしい。
鏡を台車に乗せて執事のヴェートンさんが6人の前に運んでくる。
「それではどうぞお一人ずつ鏡をのぞいてみてください。」
ホホホと笑みを浮かべつつヴェートンさんが俺達に促せば我先にと銀髪君が真っ先にその魔道具をのぞき込む。
名前 佐川 瀧
魔法特性 防具強化 特級
闇魔法 上級
火魔法 上級
風魔法 上級
木魔法 上級
「これは!?流石勇者様かなりの特性をお持ちの様ですじゃ。一般的なこの世界の者は魔法特性は殆どの者が1つか2つ持っています。3つ以上持っている者はその殆どが各国の精鋭魔導師などになっております。」
どうやらこの世界では魔法が生きていく上で完全にアドバンテージになっていてその如何は存在価値と同義らしい。
2番目は橙色のメッシュ君がその鏡をのぞき込む。
名前 黒後 市郎
魔法特性 武器強化 特級
闇魔法 特級
時魔法 特級
3番目に桃色セミロングの生真面目そうな子が
名前 数原 美玖
魔法特性 身体強化 特級
光魔法 特級
水魔法 上級
時魔法 上級
4番目はもう一人の大人しそうなロブヘアーの女の子
名前 持里 桜
魔法特性 身体強化 上級
武器強化 上級
防具強化 上級
時魔法 上級
木魔法 上級
風魔法 上級
水魔法 上級
光魔法 上級
5番目は影と共に存在の薄い彼が鏡をのぞき込む。
名前 會退 哲
魔法特性 火魔法 特級
闇魔法 上級
時魔法 中級
そして遂に俺の番がやって来る。
ん?思わず顔を顰めてしまう。
「あの・・・何も写らないんですけど・・・」
『『えっ』』!?その場の全員が驚きと共に呆気にとられた何とも言えない表情をする。
「えっと何かしら文字が写っていませんか?稀に魔法適正の無い方が王国にも居ますが名前だけは表示されるのですが・・・」
そう声を掛けてきたのは宮廷魔法師団を名乗るユバスという女性だった。
勿論一緒に確認して貰ったがその鏡には何1つ文字や模様も含め何も写っていない。
「こ、これは一体どういう事でしょうか?今まで魔法特性が無く魔法が使えない人でも名前だけは表示されていましたし・・・こんなのは見たことがありません・・・。」
ユバスさんとその周りの魔法師団の方々もザワザワと今までに無い状況に戸惑い困惑している。
そこに執事のヴェートンさんが口を開く。
「そもそも勇者様と言うのは規格外の方々、歴代含め確かに事例はありませんが何かしら素晴らしい能力をお持ちなのは歴史が証明しています。勇者の書にも載っていない新たな力をお持ちなのかも知れませんし、ここは1つ訓練場で今確認されている魔法を使って頂いては如何でしょう。」
「う、うむそうじゃの確かに召喚されし勇者様達ゆえ汲み取り君初号機に写らぬからと諦めるのはまだ時期尚早ぢゃお。もしかしたら魔法を使えば何が起るかもしれんのぢゃお。」
なんか"諦める"とかこの世界に来たばかりか呼び出したのはあっちなのに、かなり酷い言われ様なような気がするが本人は口を滑らせた事に気づいて無さそうだし。
そんな事を思いつつも場所を変えるべく練習場へと移動を始めたのだった。
・・・王宮兵士訓練場・・・
「それで魔法と言うのはのどうやって使うのですか?」
美玖が尋ねれば直ぐにユバスさんが俺達6人に説明をしてくれた。
何でもこの世界の魔法は属性魔法と固有魔法に分かれていて属性魔法とはその名の通りその属性を有している者であれば誰でも使えるらしい。
ただし、魔法の名前や詠唱を間違えると失敗するらしい。そして衝撃的だったのがこの世界にはレベルという概念が無く"汲み取り君初号機"で表示された特級、上級、中級、下級はその名の通りその人が生涯使える魔法のレベルを表しているらしく。
鍛錬等によるレベルアップはしないとのことだった。それによりどんなに火魔法を使い修練を積上げても下級適正の者は生涯下級適正の魔法しか使えないそうだ。
上級火魔法の才能を持つ者は中級火魔法を詠唱無く使え名前だけ叫べば良いらしい。
そして、下級に至っては無詠唱で(つまり心の中で使うぞ思うだけでも詠唱も呪文の名前喋らず)使えるそうだ。
もっともレベルアップは無くても使いこなす為の練習は必要で迷ったり動揺したり、躊躇していれば上級の使い手が下級の使い手に敗北する事もあるらしい。
ただこの世界では魔法特性が大きく人生を左右する為、3歳の誕生日に行われる"判定の義"はちょっとしたトラブルが毎回あって色々と大変らしい。
親子関係が崩壊する事も多いとユバスさんは話す。上流階級の子なら本来長男が跡を継ぐ、しかし下級特性が1つしかなかったり特性無しだと分かった瞬間次の子供を跡継ぎに変え長男がネグレクトに合うなんてよくあるらしい。
それでもそれはまだ良い方で昨日まで可愛がっていた子供を養子に出したり(殆どが貧しい農家や商人で過酷な環境で短い人生を送ることになるらしい。)貧困層から産まれた高特性の子供を買取り我が子とすり替えるなんて事もある様だ。(すり替えられた子供はスラム街で物乞いになれたら良い方らしい。まぁ他はご想像にお任せするという事で・・・)
またその逆に貧しい家に産まれた子供が高特性と判明したら親が教育熱心になり借金してまで育て上げたら子供が物心付いた時親を見下し親を見捨て面倒をみないなんて事まであるそうで国民の問題になっているらしい。
勿論、親だけでなく高特性の子持ち貧困層なら金を回収しやすいと言葉巧みに金を貸し付ける悪徳業者も問題なんだとか・・・現代日本のインフラは素晴らしい。
その根幹には魔法特性が生活の全てに関わっており何をするにもそれ無くして成り立たずと言う現実がある。
また、特性持ちの割合として人口の1割は無特性、5割は特性1つ持ち、3割は特性2つ持ち、残りの1割にそれ以上の様々な特性持ちが居て多くても3つそれ以上はほぼ千年に1人といった所らしい。
更に特級、上級、中級、下級と使える魔法のランクも当然上位になると使い手は少ない上、特性の持ち数が多い人程ランクも下がる傾向にあるらしく4つも特性を持っているのに全て下級しか使えないなんて事もあるらしい。
器用貧乏より下手したら特性1つでも上級1つある方が良いとも言える側面がある様だ。
因みに特級持ちはこの世界に居ないらしい。勇者か以前召喚された勇者のこちらの世界に残った直系の子孫に3代目位までは極少数現れる事もあるようだが基本特級魔法は勇者専用の魔法と言い伝えられているそうだ。
そんな話を移動中に聞きながら"汲み取り君初号機"に並んだ順番と同じ流れで魔法を1人づつ使ってみることになった。
大きな的があるそれなりに広い室内バッティングセンターの様な所に着くとすぐに佐川は前へと進み出て先程聞いた火魔法上級の詠唱を始める。
「燃え盛れ火炎・・・火炎流星」
掌から直径1m程の火球が真っ赤な尾引きながら的に向かって飛んでいく。そして・・・
次の瞬間には耳を塞がなくては耐えられないほどの爆音と共に的は砕け燃え上がっていた。
「!?とても私達の知る上級の火炎流星とは思えません確実にワンランクは威力が上がっています。」
そんなユバスさんの声に宮廷師団の面々と国王達が信じられないものを見た様な驚愕の表情を浮かべている。
それは更に爆煙が風に吹かれ去った後に訪れる。
「なっ、ここは耐魔法素材で作られた建物であの的も魔法を当てる為に世界でも最高硬度の物で作られているのに・・・吹き飛んでるなんて。」
どうやら王宮の練習場という事だけあって耐魔法素材を使った建物を耐魔法障壁魔法で覆っていたらしい。
・・・がそれ等を全て吹き飛ばしていたのだ。
「これは屋内での下級魔法以外は勇者様達には控えて貰った方が良さそうですね。」
呆れにも似た疲れた様子で他のメンバーへ次の魔法の使い方の変更点を伝えていく。
そして、黒後・数原・持里・會退とその後は恙無く魔法の行使を終えていく・・・そして最後に問題の俺の番がやって来た。
しかしそれは当然の様に・・・
「火の加護よ顕現せよ小さき炎 炎 」
「水の加護よ此処に水球 水」
「風の加護よ声に応え此処に吹け 風」
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
その後も下級魔法をいくつも行使していった・・・が何も起らなかった。そこには恥ずかしい詠唱をするも何も変化を起こせないTHE・中二病と誰もが見まごう俺の姿があった。
(おいぃぃぃーどんな羞恥プレイだよこんなの元居た世界なら完全に中二病じゃん。ヤバい奴だよみんなから目線を逸らされて通報されるヤツだよねぇ!何時までこんなのやらせんだよぉ〜勘弁してくれよぉぉ。)
心で血の涙を流しながらも言われた通りに次の詠唱をする俺(涙)20歳も過ぎた俺にはこの詠唱は地獄だよょ〜。
俺の顔はどんどんと青くなっていき同じ世界からの転生者共はその殆どが俯き口を押さえ必死に笑いを堪えている。
しかしそんな中でもユバスさんはアレコレ思考錯誤し宮廷師団の人達と話し合いをしながら次の魔法の行使を指示してくる。
遂に小一時間が過ぎようとした時銀髪が口を出して来た。
「もういいじゃんソイツはハズレなんだろ?1人位使えない落ちこぼれが居ても俺等5人居ればなんとかなるだろ?」
痺れを切らした佐川が心無い言葉でこの無限地獄を止めてくれた。(羞恥の限界を越えた俺にはもうそんなヤツの人を見下した言葉の刃でも救いに聴こえる状態まで追い込まれていた。)
「そ、そうぢゃお。まだ時間も掛かりそうな事じゃし続きは明日から1人でやって貰うとして他の勇者様達にはこれからの方針を明日から伝えて行くとして今日の所はここらで・・・」
笑顔で国王が言い終わろうとした所に・・・
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!ドドォ〜ン!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
風に乗った火の玉が爆炎と成って先程佐川の開けた大穴から暴風雨の如くが降り注ぐ!!
訓練場とはいえ王宮内での不測の出来事に一瞬全員の動きが戸惑うその虚を付き軽装ながらも顔を隠し武装した連中が大穴からなだれ込んできた。
「な、何者だ!・・・」
反応に遅れた数瞬の間の後、不審者を取り押さえるべく宮廷師団の面々が動こうとするも身体の動きが明らかに鈍い。
発した言葉は思考に囚われ途中で途切れる。
(しまった!!さっきの火魔法は風魔法で威力と方向精度を上げるだけでなく中の生存者を取り押さえるべく痺れ系統の毒も混ざっていたのか派手な見た目に気付くのが遅れてしまった。)
毒も麻痺して動けなくなる程ではなくあくまで相手に本来の動きを制限し自分達が突入する頃には無毒化している程度のものであった。
ユバス達は本来は絶対防御の魔法陣で守られた王宮内への侵入という自殺行為に不覚をとった事で少からず動揺していたとはいえここ迄用意周到に立ち回る敵を内通者なくしてあり得ないと考えつつも行動に移る。
そして覆面のリーダーと思われる黒覆面が国王に迫る。しかしそこは執事のヴェートンが身体を張って時間を稼ぐ。
(ま、どう考えても王様の敵だろコレは流石に何かあれば俺達の今後にも影響ありそうだし。)
そんな中俺は事態をようやく理解し取り敢えず瓦礫の棒を覆面ボスに背後から後頭部目掛けて叩きつける。
他の覆面達は王宮師団と乱戦中いくら麻痺があるとはいえ地の利、数の優位、更には実力の差は歴然で相手も不意打ちの短期決戦を仕掛けてきていたが故の隙だったのだろう。
俺の不意打ちにボスは昏倒しチッという舌打ちと共に部下に撤退を指示自身も逃走すべく煙幕を投げた。
しかし煙幕で姿は見えずとも逃走ルートは大穴のみユバスは痺れの残る身体を引きずりながらもボスに迫る。
「いっ痛て〜なぁクソが、何処のクソ野郎だこの!」
佐川が無詠唱で火魔法を大穴に向けて放つ!!
しかしその方向にはボスとユバスさんがいる。
ユバスさんを引き止めるべく走り腕を何とか掴むも真横で炎が爆ぜ吹き飛ばされる。
ボスは火魔法の直撃を受け炎の中心へ燃え溶けていく。
反応がみたい!
ご意見聞かせて〜