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英雄は空へと駆ける  作者: まるゆ
40/42

少年は正義を貫く20

 白夜の刀と天魔の刃がぶつかった時、白夜の刀が折れることはなかった。


 岩をもバターのように切る程の切れ味。それをただの刀で防いだ事で、天魔は非常に驚いた表情を見せる。


 実際、この刃が切れないものはないと思っていたし、切れないものは今までなかった。初めての事で目を見開いて驚いていた。


 しかし、それ以上に天魔が驚いたのは目の前の光景だ。


 風の刃が徐々に緑色に光る粒子となり、刀に吸収されていくではないか。


「こ、これは!」


「いただくぜ!」


 天魔は一瞬考えるそ素振りを見せるも、すぐにその場から離れようと移動する。


 が、それよりも早く伸ばしていた白夜の手が天魔の胸ぐらを捕らえる。


 天魔はしまったといった表情を浮かべた。


「な、なにっ!」


 白夜はそのまま天魔を地面に叩きつける。天魔は肺の中の空気をすべて吐き出された。


 そしてその天魔を踏み台にして上空に浮かび上がり、刀の先を天魔に向けて構える。


「おのれ! 人間風情が舐めるなよ!」


 鬼の形相で白夜に向かって手のひらを向ける。そこから風の刃が発生し、白夜に向かって放たれる。それと同時に白夜の左目が蒼く光り輝く。


 白夜の天の恩恵(スキル)【事象停止】だ。


 天魔が放った風の刃、そして防御の為に纏っていた竜巻が緑の粒子となって消えていく。


 それを見た天魔は、苦虫を噛み潰したような表情で白夜を睨みつける。


「ぐっ、おのれ小童! この我は、貴様如きに負けはせぬぞ!」


 やはり、彼は人間と違った生物と言う事か。彼は一瞬にしてその場から少し離れた場所に移動した。


 美祈の天の恩恵(スキル)の様な移動。しかし、それは瞬間移動ではない。ただ単に早すぎる移動術だった。


 白夜は地面に着地すると、少し離れた場所で激しく息を荒げる天魔に向かって刀を振るう。それは離れている天魔に当たるはずがなかった。


 刀は空を斬った。しかし次の瞬間、天魔の腕が斬り飛ばされた。


 それを認識できないまま、天魔は飛んでいく自身の腕を見ることしかできなかった。斬られた場所からは赤い血が噴き出る。


「わ、我の腕がアァァァァ!」


 腕を押さえて悲鳴を上げる天魔。白夜は油断することなく、その場で刀を構える。


 が、その時だ。少し離れた場所で銃声が聞こえた。


「それだけでは奴は倒せないぞ!」


 そう聞いたことのある女性の声が聞こえた。声色で白夜は無自覚で身構えたが、発砲対象は白夜ではなかったようだ。


 その放たれた銃弾は、天魔の頭に命中する。その後、ぐったりと地面に倒れた。


 地面が腕から流れる血で真っ赤に染まっていく。


「倒したのか?」


「倒せるものか。あれでまだ健在だ」


 美祈が白夜の隣まで歩いてくる。白夜は両方に対して身構えるが、美祈は白夜に対して攻撃する気はないらしい。


「くくく。まさか、事象停止にマナを吸収し放つ特性の忌々しき星天武装(スタリア)を持っているとは、些か驚きよ」


 倒れている天魔の方から声が聞こえる。それは先程までの声とは全く違う声だ。


 男性とも女性でもない聞きなれない声の笑いが辺りに響いていた。


「貴様、増援は要らぬと言った筈だぞ?」


「もちろん。貴様の増援に来た訳では無い」


「くくく、我を騙していたというわけか」


 天魔はゆっくりとした動きで上空にふわりと上がっていき、上空でピタリと止まった。


 目は閉じられており、意識はなさそうに見える。だが確実にこちらを捉えており、こちらに向かって声を出している。


「が、残念だったな。貴様らの行動など、我には筒抜けよ」


 美祈は冷静を装ってはいるが、その表情は険しくなっていく。


「我が初めに遺跡へと勇者を誘導した後、貴様はそこな剣士を遺跡へと誘導したであろう? 多額の金額を払ってまでな」


「……もしや、俺が勇者に会った時の」


 美祈は観念したように目を閉じる。


「なるほど、初めからお見通しと言うわけか」


「くくく、そうだそこの貴様。気になっていることを教えてやろう。ここの場所を選んだのは勇者を守る為、貴様がいるこの町を選んだのだ!」


 まるで心を読まれているような感覚を覚える。確かに、そこは白夜も気になっていた。


 まさか勇者を守る為だとは思っても見なかったが。


「やれやれ、バレてしまっては仕方あるまい。天魔、最後に教えてくれ。貴様らの目的はなんだ?」


「くくく」


 天魔の怪しい笑いが、辺りに響き渡る。


「いいだろう。貴様らの最後に教えてやっても良いぞ。我らの目的は人間の破滅! そして、我らの大地を再び手中に収めること! 」


 天魔が言い終わると、今までにないくらいのマナの振動が置き、起こる地響きに白夜と美祈はしゃがみこんだ。


 その後落ちていた天魔の腕が浮かび上がり、吸い込まれるように天魔の切れた場所にピッタリくっついた。


 天魔はグーパーすると、満足気にニヤリと笑った。それを見ながら、美祈は白夜にだけ聞こえる声で白夜に問う。


「白夜、まだ左眼は有効か?」


「なんとか。しかし、そこまで長くは持たんな」


「アレ相手に短期決戦か。フッ、いいだろう。その挑戦受けて立とうではないか」


「あんた、存外戦闘厨だよな。だが、今回ばかりは俺も本気で頑張ってやるのぜ!」


 白夜と美祈は立ち上がり、それぞれ武器を構える。


 それを見た天魔はまた不気味に笑い始める。


「さぁ、決戦だ。勝つのは我らの悲願か、もしくは貴様らの可能性か。勝負しようではないか!」


 白夜は走って距離を詰め、天魔に向かって斬り付ける。そして、それを天魔は風の刃で受けた。


 もちろん白夜の刀がマナを吸収し始めるが、その風の刃は弱まることを知らなかった。


「所詮人の技術など、そのようなもの。我らの力には到底及ばぬ」


 天魔は白夜を軽く押し返す。


 そこに美祈の銃弾が襲いかかるが、それは周りに纏う風に阻まれる。


「女の銃弾は、我には当たらぬ。まずは事象停止でマナを止めるのだな!」


 その後、側面から奇襲した白夜が高速の斬撃を見舞うも、それを高らかに笑い飛ばしながら打ち返す天魔。


 それに対し、美祈は舌打ちだけを返した。


 すぐ天魔は美祈の方へ、白夜をはじき飛ばす。白夜は美祈の隣へ地面を滑りながら止まった。


「物理攻撃はきついな」


「あぁ、しかし我らは魔術を扱えん。敵としては最悪だろうな」


「だな。とはいえ、魔術すら跳ね返しそうなあの竜巻が厄介だな」


「あれをなんとかするには、事象停止しかあるまいて」


 方法はある。だが、それをするには相手の不意をつくしか無い。しかしそれはかなり高難易度であった。


 なぜなら先程と同じことをしなければならないのだ。


 相手はそれを知っており、警戒するだろう。だからこそ、その警戒を超えていかなければならない。


 状況は絶望的。白夜は重くなってきた左眼を無理やりこじ開け、天魔を睨みつけた。

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