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英雄は空へと駆ける  作者: まるゆ
38/42

少年は正義を貫く18

 突如現れた竜巻。


 数秒経った後、そこから人の影らしきものが見える。竜巻は徐々に弱くなっていき、現れたのは不思議な格好で額に紋章の刻まれた男性だった。


 中性的で、美形。肌の白い男性で、見下すような余裕な表情で白夜達を見ていた。


 服装は今まで見たことないような不思議な格好だ。魔法使いの着るローブやワンピースなどに似た感じもするが、それとはまた違う。


 白の服から凄まじいマナを感じられ、ただの服装ではないことはすぐにでもわかる。


「人間……?」


 白夜がそうボソリと呟くと、目の前の男性は首を横に振った。


「貴様ら低俗種と同じにするなよ。むしろ、貴様らが我らを真似ているのだろうが」


「我ら?」


 我ら。それは彼のような者が複数いるということ。


 そして真似ているということは、彼らは人ではないと言える。


「じゃああんた達は何者なんだ?」


「んー、そうだな。魔王への反逆者って言ったらわかるか?」


「分からんな」


「それは頭の中身がちっさいだろ。お前が分かるように簡単に説明してやる。我らはこの世で1番悪いやつ、そう魔王を討つべく動いている者、我らは【天魔】だ!」


 わざとらしい演技のかかった動きと口調で言う彼の言葉を、白夜は真に受けれなかった。


 否、怪しすぎて疑いしか頭には残らなかったのだ。


 が目の前にいる天魔は、白夜の反応が薄すぎたせいか少し目が引きつったのが目に入る。


 短気なのかもしれない。


「おいおい、静かすぎんだろ。魔王を討つって言ってんの。悪を討つ正義の味方に対して、希望を持つのが人間だろうさ」


「悪いな。あまり興味がないんだ」


「そーかいそーかい。それなら我らの目的の邪魔してもらっちゃ困るな」


「目的、ね。勇者の暗殺のことか?」


「そうさ。それこそ、世界が平和になるただ1つの方法だ!」


「本当に? それはお前たちのとっての平和ではなくて、人間にとっての平和か?」


 そう白夜が言った途端、飄々としていた表情が一気に真面目な表情になった。


 その表情は冷たさすら感じる。


「貴様、言葉は選べよ。低俗種の貴様など、私の手に掛かれば一瞬で始末できる」


「おっと、これは失礼。低俗種だと呼ぶからには、俺たちがどんだけ煽ろうが気にしないと思ってたけど」


 白夜は目を細めてそう言う。


 強いのは感覚で直ぐにわかった。美祈達が従っているのも、それが要因の可能性も高い。


 しかし、白夜は貴重な情報源として聞きたいことが山ほどある。


 の、だが。


 白夜の煽りを相手はかなり気にしているようで、先程から口すら引きつっているのでイライラしているのが分かる。


 やはり、気が短いのかもしれない。


「それで、平和ってのはどんな? まさか、人間全てを滅ぼして『はい、平和です』なんて言わんよね!」


 白夜が少し笑いながらそう言えば、相手は初めの飄々とした表情とは掛け離れていた。


 会って数分。これだけ気が短いのも、白夜は初めて見た程だ。


「……貴様らは、世界にとってなにが1番の毒か知っているか?」


 厳かに言った天魔からは殺気、そして圧が同時に襲いかかる。


 白夜はそれをものともせずに目を閉じる。


 そして、ゆっくりと口を開いた。


「そりゃ、人間だろうよ」


 そういい放てば、周りにいた人達は凄く驚いた表情をしていた。


 驚いた表情なのは天魔もそうだったが、美祈だけは少し気まずそうに地面に目を逸らした。


「こんな世界になったのも、全ては人間のせいだから。人は他の生態系にどれだけ悪影響を及ぼしているか、考えただけでも恐ろしい」


 先日戦ったリバイアも、人間が捨てた物を飲み込み暴れていた。


 世界にとって、人間のゴミは少しかもしれない。だが、それが積もって山となればそれは世界に悪影響を必ず及ぼす。


「人のせいで滅びた物もある。だが、人が滅びたところで元の世の中には戻らない。失ったものは戻ってはこないから」


 そう言って白夜は目を見開く。


 それによって発生した殺気は天魔の殺気を軽く跳ね返す。


 天魔は口角を上げて笑い始めた。


「貴様、なかなかの殺気! 面白い、これは面白いことになってきた!」


 天魔の両腕を覆うように竜巻が発生。そして、彼はどういう原理か上空へと浮かび上がる。


 ふわふわと浮いており、自分の目がおかしくなったのかと錯覚してしまう。


「私達も手伝うか?」


 それは誰に言ったのか。美祈は誰もいない方向に向かってそう言った。


「必要ねぇ! こいつの相手は我だけで十分よ!」


「俺は欲しいがな!」


 2人がバラバラにそう答える。


 天魔は一層力を込めると、部屋中に風が吹き荒れる。後ろにいる澪奈たちは地面にしゃがんで飛ばないようにするのでやっとだ。


「2人を外に転送します。後は頼みましたよ、十六夜君」


 そう校長が言うと、短い詠唱を唱える。すると、白夜と天魔の足元に魔法陣が現れ、そこから光のオーラが2人を包む。


 この魔術、白夜は見たことがあった。人生に1度だけ。


 それは人の叡智を超えた先にあるとされた、奇跡の魔術。それは、転移魔術だ。


 対象の物体を別の場所に瞬間で移動させる。それを1秒もかからない速度で。


 美祈の天の恩恵(スキル)【神瞬】に似た魔術だが、こちらは対象が自分でなくてもよく、且つ特に使用後の制約も無いため非常使い勝手がいい。


 しかし、扱えるようになるにはそれ相応の知識が必要だ。


「確かにこの空間は我らの戦いには些か狭すぎる。いいだろう、転移魔術で我らを相応しい場所に運べ」


「さっきから上から目線で」


「実際、貴様より高い位置におる。それに背も貴様より高いしな」


「うっぜ! てめぇ、絶対ボコすから覚悟しとけよ!」


 光は一層輝き、皆が目を閉じた。


 そしてその光が収まった時、その部屋に白夜と天魔は姿を消した。


「……あいつ、勝てますか?」


 そう言ったのは結菜。それを聞いた美祈ははいとは答えなかった。


「最悪死ぬだろうな。あの天魔は強すぎる」


「えぇ、1度戦って勝てないと思ったのは初めてです。今日2回目を味わいましたが」


 ため息を吐いた結菜はその場に立ち上がる。


「さて、我々も作戦の最終段階に移ろう」


 そう美祈が言って剣を振るうと、澪奈や神薙たちは身構える。


「……やるぞ、覚悟は出来てるな?」


 美祈の言葉に、結菜と爺は大きく頷いた。

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