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英雄は空へと駆ける  作者: まるゆ
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少年は正義を貫く16

「ぼさっとすんな! 治癒出来るやつは治癒しろ! 人が死ぬぞ!」


 白夜がそう叫ぶと、皆がハッと我に返る。そして、1番に駆け出した神薙は聖奈の隣に座り、傷口に手を差し伸べる。


 傷は深い。しかし、治療できないことはない。


「僕は治癒術が少し使える。応急処置ぐらいは出来る!」


 わざとかどうかは分からないが、どうやら刺されたのは肩口だ。心臓を貫かれたわけでは無いため、今から治療すれば間に合うだろう。


 その後、僧侶である雫も少女に駆け寄る。


「もらった!」


 だが、その隙を逃す相手では無いだろう。


 聖奈の傷口に向かって、青白い光を手から放つ神薙へと女性は剣を振るう。しかし、それは間に入った白夜に防がれる。


「……遅かったな」


 力任せに押し返した白夜は、さらに追撃するため距離を詰める。


 が、そこは他の2人に防がれる。追撃し損ねた白夜は、すぐ様後方に飛び退る。


「あぁ、本当に。人を守るあんた達が、まさか人殺しをしようとはな」


「世界平和の為の犠牲だ。やむを得んよ」


「人を守る為に人を殺すなんて本末転倒だろうが」


「だからなんだ。おまえは犠牲なくして、この世界を救えると? それこそ甘い考えだな」


 白夜はキッと女性を睨む。


「あの頃からまったく変わっていない。何かを得るには、それなりの対価が必要だ。それを分からないとはまだまだ子供だということだな」


「は? 1対1の取引なんて俺は御免だな。そんなのただのまやかしに過ぎない。それに、俺は1対0の不等価交換の方が好きでね。人は守るし、殺させはしないさ」


「……やはり、変わらんな」


 女性は話にならないと思ってか目を閉じる。


「あんたは変わりすぎたな。帝国騎士の隊長をやっていた頃とは比べ物にならないな。それもクソッタレな方にな」


「人は変わるものだ。お前こそ、そろそろ現実を見たらどうだ? 今更偽物の正義の使徒を追いかけても、何も得られんぞ?」


「偽物の正義、ね」


 白夜は後ろを見る。聖奈の痛々しい傷を治癒する、神薙と雫。


 そして、それを泣きながら見守る澪奈。


 そこには自分の正義が存在した。今この場を守ることが自分の正義であり、その先を見るのも同じく正義だ。


「確かに、俺の正義は偽物なんだろうな。勇者を目指し、それと同じ正義は貫けはしない」


 白夜は正面に直り、目の前に立つ3人を見据える。


「だが、それでよかったんだ。そんな御伽噺に出てくる勇者と同じではなく、俺は俺自身が正しいと思ったことへの正義を貫くことこそ俺の目指す正義だ」


「開き直ったか」


「あぁ、開き直ったさ。開き直って何が悪い! 他人と同じ正義なんて、言い訳して終わり。自分が思ったことこそ、貫けるってもんだ」


 女性はため息を吐いた。


 その後、隣に立っているもう1人の女性が隣で囁く。


「美祈様、時間です」


「あぁ、わかっている」


 白夜は疑問に思いながらも、その目は目の前の相手から離さない。


 美祈(みのり)と呼ばれた女性は剣を構える。そして、左の太腿に付けていたホルダーから銃を引き抜く。


 それに乗じて、他の2人も剣を構える。


「悪いが、話はここまでだ。随分と話し込んでしまった」


「3対1ですが、悪く思わないでくだされ」


「これも世界を救う為よ」


 白夜は口角を上げた。


 面白い、そう言いたげな表情で白夜は体勢を落として、刀を鞘にしまう。


「いいだろう。全員まとめて掛かってくるがいい!」


 白夜が放つ殺気に、3人は気圧される。騎士団隊長と呼ばれた女性は涼し気な表情だが、左足は1歩後ろに下がっていた。


「2人とも、魔術は使うな。あいつ相手に、魔術は意味が無い」


「魔術が無意味とは、まるで規格外ですな」


「ですが3対1です。数の差で私たちは勝っています」


「本当にそう思うか?」


 白夜のその問いに、3人は何も言い返せない。


 目の前の敵は強い。それも桁違いに強いのは、目で見るだけで分かる。


 実力の差は放つ気や感覚で大体わかるものだ。しかし、目の前の敵は大体ではなく、確実にヤバい。下手すれば死ぬ。


 放つ殺気からはそれが伺え、背中が寒くなるのを感じていた。


「これで正々堂々なんて言わんさ。これでさえ、まだハンデが足らんよ」


「さすがは、剣を持てば最強と言われるだけあるな」


「剣しか持てなかっただけさ。しかし、それが故に今の俺がいる。それさえあれば、人を守れる武器にはなるんさ」


 白夜には、魔術の才能は無かった。頭も良くなかった。ただ、剣を振ることしか自分には道がなかった。


 だから剣を振り続けた。いつか周りを守れるくらい強くなれると信じて。


「勇者になりたい、そう思った。しかし、今は違うんだよ」


 初めのきっかけは、所詮大したものでは無い。やろう、始めようと思い1歩前へ踏み出すことが大事だと白夜は思っていた。


 きっかけは、はじめの一歩を後押しするだけだ。


「帝国騎士団隊長、輝川(てるかわ) 美祈(みのり)。ここであんたの野望を打ち砕く」


「ふん、出来るものならやって見せるがいい。さぁ、世界最強と呼ばれた【剣聖】の力で、我々の大願を砕いて見せろ!」


 2人は同時に地を蹴ると、丁度真ん中で2人はぶつかった。


 剣へ込めた正義がぶつかりあい、火花を散らす。


 今の想いはただ1つ。目の前の人を守ること。

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