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英雄は空へと駆ける  作者: まるゆ
28/42

少年は正義を貫く8

 ギルドを出た白夜は、亮介と一緒にフードの隠れ家に向かっていた。


 近くに行くことで分かるが、外で3人のフードを被った人がいるのは今回の護衛にあたる人物たちだろうか。家の前に立つ彼らはどうにも不自然にしか見えない。


 白夜が来たと分かれば、こちらに一礼する。


「お待ちしておりました。彼女はただいま準備中でして、準備が整うまでもう少々お待ちください」


 その男性の声は聞き覚えのある声で、先日澪奈といるときに話した男性の声と同じ声に思える。


「あれ、その声。お兄さん先日会わなかった?」


「まさかもう一度会えるなんて思ってもみなかったよ。今日はよろしくね」


「おう!」


 聞いてみると、どうやらその人本人だったようだ。会ったことがあり、且つその人が良いことも相まって、この後の気分がすごく楽になった。


 そんな話をしていると、後ろの戸が開く。そして、そこから花音であろうフードを深く被った小さい人物、そして未だ名前の知らない背の高い女性らしき人物が外に出てくる。


「お待たせしました。それでは移動しましょうか」


「私は会場にいるから、もしなにかあれば連絡してくれ。すぐに駆け付けるからね。それでは」


 亮介は白夜にそう言うと、フードの被っている5人に向けて一礼して町の外にある祭りの会場へと向かっていった。


 取り残された感じのある白夜は少し不安が残る。


「それでは君たち、武運を」


 そう言って背の高い女性も他の4人に一礼してその場を去ろうとする。


「あんたはこっちに来ないのか?」


「昨日も話をしたが、私はこれから大切な用事がある。その用事が終われば、そちらに顔を出そう」


「そーかい。ま、何の用事かは知らないが、早めに帰ってくるんだな」


「そのつもりだ。それでは」


 一礼して去っていく女性。と、そんな時。学校の始まりの鐘がここまで聞こえてきた。商店街が今の時間稼働しておらず、賑わいがなければ遠く離れたこの場所でも余裕で聞こえるようだ。


 先日森の中であった雪乃江 綴と名乗った女性の言った言葉が脳裏を横切るが、気のせいだろうと彼女の言葉を頭の片隅に追いやる。


「それでは我々も行きましょうか」


 そしてそれが合図だったかのように、白夜と花音はフードの三人案内されて町の外へと向かう。大きな扉を潜れば既に祭り会場には人が沢山いた。


 見張りの騎士や


 商店街が静かだったのも頷ける。ほとんどの住民や冒険者、騎士たちがこちらに移動しているのが分かる。


 そんな人だかりを避けるよう人目を盗んで大きく外回りし、ステージの裏側へと向かう。すると、そこには小さな小屋のようなテントが立てられていた。


 どうやら目的地にたどり着いたようだ。


「お二人ともこちらにどうぞ」


 男性が扉を開ける。案内されるがまま、花音は何の躊躇いもなく中へ入っていく。白夜も少し違和感を持ちつつだが、花音に続いて中へと入った。


「……ん?」


 白夜達が待機用のテントの中に入った後、ボディガードの3人が部屋の隅に立って魔術の詠唱を始める。その後直ぐに魔術は発動し、テントの床面積を超える程の大きな魔法陣が足下に展開。


 それから三角錐の透明な壁が現れ、次第にテントより大きくなっていく。


 その魔術は結界術と呼ばれている。この魔術は結界外部の攻撃から身を守ることができる護身術だ。本来一人でも発動可能だが一人だと脆さが目立つ。しかし今回は三人で発動している為、なかなか頑丈に見える。


 恐らくデスキメイラからの攻撃すら軽く弾き返してしまいそうだ。


「ここまでして守るんだな」


「当然です。さ、白夜さんもお座りください。すぐお茶を入れますので」


 フードの女性が白夜を席へと誘導する。そこは舞姫の花音の隣だった。


「おや、ガードが緩いんじゃないか? 俺はこの町の者とはいえ部外者なのぜ?」


「いえ、これがご所望のようですので」


 今度はフードを被った女性がカップにお茶を注ぎながらそう答える。白夜は「望み?」と女性に問うが、その答えは返ってこない。


「白夜、このお茶すごく美味しいの。飲んでみて?」


 隣に座る花音が咲姫にお茶を飲み、白夜にもそれを勧める。


 その誘いに乗り、白夜も同じくお茶を飲む。確かに香りが強く、それでいて甘さ控えめのお茶だ。花音が先に飲んでおり、且つ同じポットで作っているため毒などが混ざっている心配は無さそうだ。


 その後は花音が白夜に話し掛け、白夜はそれに答えるの繰り返しだ。


 しかし数十分それを繰り返した後、白夜は若干の違和感に気がつく。


 視線だ。フードの三人からじっと見られていた。


 やはり怪しまれているのか、それともなにか別の意思があるのか。どちらなのかははっきりとは全くわからないが、恐らく答えは後者であろう。


 が、視線には敵意はなく、見守られているといった感じに近いか。たまに別の方向を向いていたり、時折スマフォをいじったりしている。それでも見られているというのは少々気恥ずかしいものがある。


 とそんな時、白夜の携帯が鳴り響く。すると、フードの三人が一斉にこちらを向く。


 何の躊躇もなく白夜はスマフォを耳に当てる。相手は亮介のようだが、いつもと違いなぜか小声だ。


『手短に言う。学校が危ない』


「は?」


『偵察部隊から連絡。助けに行きたいが我々も監視されている為、身動きが取れない。町に入ろうとすれば、フードに止められる。至急学校へ向かえ』


 それだけ大切なところだけを切り取ったような亮介からの通話はそこで途絶える。白夜が今の話を頭で整理していると、今いる場が張り詰めたような静寂が訪れた。


 それを破ったのは白夜だった。なんの躊躇もなしに口を開いた。


「なんかお茶飲みすぎたな。ちょっとトイレに行きたいんだが、結界といてくれんかね?」


 いままでと変わらない飄々とした感じに、白夜は男性に話しかける。すると、男性はなぜかスマフォを取り出して画面を見る。


 なにかを考えた後、男性は口を開いた。


「申し訳ないが、もう少し待ってくれるかな」


「生理現象を我慢しろと?」


「うん、大変申し訳ないが今は駄目なんだよ」


 いつの間にか一人が入り口に移動して二人体制でこちらを見ている。そして目の前に男性も、いつでも抜刀できるよう手を剣にかけていた。


 白夜は目を細めて、現状を見据える。


「トイレ一つで物騒すぎん?」


「悪いが、君をここから出すわけにはいかないんだ。できれば荒い手は使いたくない、言うことを聞いてくれるよね」


 一応問いかけなのだが、それにははっきりと命令されている感覚に陥る。


 今の現状、例え4人と戦闘して勝ったとしても結界がある為外には出られない。結界術は外からの攻撃を封殺できるのに対してこちらからは一切相手に干渉できない。


 それは結界術のデメリットとなるのだが、物は使いようだ。今回のように閉じ込めることも可能なのである。


「……なぜそんなに外へ出るのを拒む? そうまでしなくてはならない理由があるのか?」


「君には関係ないことだよ」


 白夜は「あぁそうかい、そうかい」と諦めたように、椅子に脱力する。白夜は学校の方を見ながら、心配そうな表情をしていた。


「関係ない話なんだがな」


 そう開口したのは白夜だった。


「クラスメイトがな、騎士になりたいって。そんで皆が笑って暮らせるような世界にしたいだって言ってたんだ。あんた達ならわかるだろ? それがどんなに辛い道のりなのか」


 三人は何も話喋らない。ただひたすらまっすぐに白夜の方に向いているだけだった。それが分かってか、白夜はひと呼吸してさらに話を続ける。


「そんな1人の少女が世界を変えるかも知れない物語、あんたたちも見たいと思わんか? 勇者の物語よりもずっと面白いのぜ? その為にも、勇者には世界を救ってもらわなくてはならん。だからここで殺させはしない!」


 そう白夜がそう言い放つと、魔法陣が壊れ結界が解除される。


「こ、これはどういう!?」


 三人は驚いた様子を見せる。辺りを見渡しているその隙に、白夜は出入口にいる2人に向かって一足で距離を詰める。さすがは元騎士と言ったところだろうか、2人はしっかり白夜に反応する。


 白夜が振るった高速の剣戟を2人は引き抜いた剣で受ける。しかし受けた反動で扉を破壊しながら外に大きく吹き飛んでいった。


「なっ!」


「悪いね。この程度では俺は拘束はできない。それにあんたたちが元騎士だとしても、俺は負けるつもりはないね」


 白夜はそのまま町の方へと走り始めた。


 今起きた現状を呆然と見ている男性とただ微笑んでいる花音。吹き飛んだ二人はすぐに体勢を立て直している。 男性は立ち上がった二人に歩み寄った。


「大丈夫かい?」


「はい、何とか。あの少年は何者ですか?」


「分からない。だが、僕たちより遥かに格上なのは理解できたね」


「……あの目」


「ん?」


 吹き飛んだうちの一人が、フードを取って走っている白夜の後ろ姿を見ていた。その人物は長い金髪を風でたなかせた大変綺麗な女性だった。


「あの子、どっかで見たことあるような」

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