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英雄は空へと駆ける  作者: まるゆ
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少年は正義を貫く6

「もうイジメだこれは。絶対自分が護衛役になれなかったからって理由で嫌がらせしてるんだ。パワハラってやつなのぜ」


 白夜が特別依頼を終えた時、既に時刻は22時を超えていた。


 特別依頼の内容は、舞姫に万が一のことがあった場合の為に奇跡の宝珠を所持しておこう。というものだ。


 そこまでするか?と思いながら、白夜は不帰らずの遺跡でデスキメイラを討伐したのだ。


 無事奇跡の宝珠を手に入れた白夜は、脇目も触れずに町へと駆け出し、現在に至る。


 白夜は明るい場所を目印にしながら草原を走っている。既に町の扉も見えているためもうすぐ町につきそうだ。


 ちなみに、閉められた大きな扉へ22時を過ぎると閉まる。その場合は、扉の右隅にある人1人入れる位の大きさの扉から中に入れる。


 その際は見張りの人に、個人証明を行わなくてはならないが。もちろん、白夜は学生証を持っている為問題なく通行できる。


 白夜は真っ直ぐ端にある扉に向かうと、1人の男性が近くに立っているのを確認した。見張りの人である。


 その男性は白夜に気が付くと、笑顔で話しかけた。


「おかえり、白夜君。とんだ災難だったね」


「ホントだよ。これは嫌がらせなのぜ」


「ははは! 案外本当にそうかもね。さ、扉は開けておいたから、早く帰って明日に備えなよ」


 どうやら事情を知っているらしい。男性は既に前もって開けていたのか、扉を開ける。


 建前上と思い、白夜は学生証を取り出す。


「一応学生証とかあるけど?」


「いいよ別に。君なら顔パスだ」


「ん、了解。ありがとう、おじさん」


「あぁ、またね。あと出来ればおじさんよりお兄さんの方が……」


 男性が言い終わるより早く、学生証をズボンのポケットに突っ込んだ白夜は扉を抜けて町の道を走り始める。既におじさんの声は白夜には届いていない。


 現在、町は道の端に一列に等間隔で並ぶ街灯が照らすと、月の光だけが辺りを照らしているため町なかは薄暗い。


 白夜は、真っ暗で人が誰も居ない道を走る。昼間の活気を知っているからこそ、なにかもの寂しい気分になる。しかしその昼間はうるさすぎて嫌ではあるが。


 と、そんなことを考えていると、ギルドに近くを通りがかった。するとギルドの扉に鍵をかけている人物が目に入った。


 その人鍵を閉め終えた後、白夜のいる方へ振り向く。走る音が気になってだろうか。


「あ、白夜君だ。お疲れ様ー」


「お疲れさーん。咲姫も仕事終わり?」


「そうなの。これから帰るところだよ」


 白夜は挨拶代わりに右手を上げると、咲姫は地面に置いていた荷物を手に取って、白夜の方へと歩み寄る。


 その後2人は同じ帰路なので、横に並んで歩き始めた。


「そうだ。今日仕事しながら思ったんだけど、白夜君はあれから陽菜ちゃんに会った?」


「陽菜ちゃん?」


 少し戸惑ったが、昨日の朝に咲姫と澪奈が話をしていた自分が助けた少女の名前だと気が付く。思い返してみれば、あれから一度も会っていない。


 なにかしら忙しかったというのが頭に一番最小に浮かんだが、それはただの言い訳だろうか。


「そういえば会ってないな。元気してるかな」


「元気してるかなじゃないでしょ? 責任持って迎えに行かないと!」


「そうは言いますがね、今や貴族の娘ですよ。身分の違いというものがありますですます」


 咲姫はやれやれと言った表情だ。


「私は一度会いに行ったの。3年ほど前だったかな?」


「そーなん? 一緒に連れてってくれたらよかったのに」


「私はお仕事で行くことがあったの。そしたら、白夜君の為にと花嫁修業頑張ってたよ? 将来の為に自分のできることをしておきたいって。それで白夜君の隣にふさわしい人間になるのって。もう尊すぎて抱きしめちゃったじゃないの」


 そう途中まで呆れた感じに話していたが、最後はなぜかどや顔で話す咲姫。そっかぁと白夜は未だ他人事だ。


「会えたら会いに行くかな」


「そうだね。早くしないと、あっちから会いに来ると思うよ?」


「なっぜ」


「だって、ここにいること教えたもん」


 白夜は思考が停止した。足を止め、口を開けっぱなして咲姫を見ていた。


「そりゃそうでしょ。主である東条様も、陽菜ちゃんを白夜君のお嫁さんにする気満々だよ? 数日前にスマフォで通話もしたけど、陽菜ちゃんは最近になってより熱心になってるみたい」


「ま、卍?」


 あんぐりした表情はきっと暗い道でも街灯に照らされ、はっきりと見えているに違いない。


「次の休みに会ってこよう」


「ふふ、会ったら即結婚だね」


「うぅむ。しかしよいのだろうか。陽菜も貴族の子になったわけだし、同じ貴族と結婚した方が将来幸せになるのでは?」


「はぁ……本当に分かっていないんだね」


 咲姫は呆れたような、それでいて可哀そうな人をみる目で白夜を見ている。


「ま、それは今後の人生で学ぶことをお勧めするよ」


 そう言って、咲姫は自宅についた為に自身の家の前に立つ。見た目は一軒家だが、中は3つの居住エリアがある。咲姫はそこの鍵を開けて中に入ると、振り返って白夜に直る。


「それじゃ白夜君、また明日ね」


「おう、またなー」


 そう別れの挨拶をしたあと白夜も同じように中へ入ると、その内の一つの部屋の鍵を開ける。咲姫は階段を使って2階に上がっていった。


 ちなみにもう一つの部屋では、今頃お酒を飲んで一人でテンション上がっている拓斗が住んでいる。

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