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英雄は空へと駆ける  作者: まるゆ
21/42

少年は正義を貫く1

 白夜の朝はいつも通りだ。


「ところで、最近学校はどうだ?」


 そう言ったのは拓斗だ。白夜はそれに興味無さそうに答える。


「別に、普通」


「そうかそうか! たまにはここに友達とか連れてきてくれてもいいんだぞ!」


「ここ俺ん家だわ」


 パンを齧りながら牛乳を飲む。拓斗は壁にもたれてゲラゲラ笑っていた。


 更にちゃぶ台を囲って隣には咲姫がお茶を飲んでいる。


「昨日来なかったから知らないんだ! 昨日は可愛い女の子が来てたんだよ?」


「まじか! うっわ後悔! 昨日は二日酔いで来れなかったんだよな。んで!どーなん? 可愛いんか!?」


「そりゃ、もう最高に可愛いの! 笑顔が可愛くてー、髪の毛サラサラで、いい匂いしてて……グヘへ」


 顔がふやけて情けない表情になる咲姫。その慣れた光景を白夜は一切気に留めずに黙々とパンを食べている。


「話したの最近だけどな」


「まぁいいじゃねぇか! 仲良い友達がいるのはいい事だぜ?」


 白夜は一瞬硬直した。だが直ぐにまた食べ始める。


「2人がいれば十分なのに」


「はははっ! なんだなんだ? この可愛いヤツめ!」


 小声で言ったつもりが完全に聞こえていたようである。


 拓斗は嬉しそうに白夜に近寄って頭をわしゃわしゃする。それを鬱陶しそうに払い、脇腹を右手でつつく。


 白夜の攻撃は効いておらず、笑顔で受けきっている拓斗にため息を吐いた。


「学校行ってくる! 戸締りよろしく!」


 拗ねたように立ち上がって鞄を持ち上げ、同時に今空いたばかりの皿とコップを台所に運ぶ。


「おー! いってらー!」


「いってらっしゃい!」


 白夜が家を出た後、残された2人も動き始める。


「友達、出来て良かったな」


「本当に。やっぱり同年齢の友達がいないと」


「だな、なんか安心した。さて、俺も現場に行ってくるわ」


「うん、いってらっしゃい!」


 拓斗は手をひらひらさせて、外に出ていった。


「さて、洗い物して私も行こーっと」


 残された咲姫は台所に向かい、パン粉の付いた皿とほんのほんの少し牛乳が残っているコップを洗い始めた。



 ◇―――◇―――◇




「えぇいいなぁ! 羨ましいよ!」


 翌日。咲姫と拓斗に見送られた白夜は、学校で澪奈と恵夢に昨日の話をしていた。


 その話をした瞬間、澪奈は白夜を羨望の眼差しを送っていた。


「本当だね、十六夜君すごいじゃないか。なんか十六夜君の強さがどこまでなのかちょっと気になってきたよ」


「じゃあ腕試しでもやるか?」


 やる気無しにそう言うと、恵夢はニタリと笑う。


「是非! 僕をギッタギ……いや、サンドバッグにして欲しいんだ!」


「言い直しても言ってること同じだからな!?」


 相変わらずの純粋な目で不純なことを言う恵夢に、少し嫌そうにツッコミを入れる。


 なぜ嫌か。


 こういうツッコミをしてもなぜか気持ちよさそうにしているのが目に毒だと思っているから。


 そう恵夢に怪訝そうな表情を向けていると、前の席の澪奈がため息を吐いて口を開いた


「でも、なんで明日なんだろうね。私たち学校あるからいけないじゃない! 大人だけ楽しんでずるいよ!」


「それは本当に謎だよな。学生もいけるように夕方にすればいいのに。もしくは週末とかに日を延ばすとかさ」


「ほんと! 学生に優しくないよ!」


 そうプンプンと怒りながら言う澪奈。


 そこでふと思う、昨日の夕方辺りに決まったのになぜ今日の朝には気がついているのか。


「そういや、祭りすることもうみんなに伝わってんな。どうやったらそんなに早く伝わるんだ?」


「そりゃ、主婦の力を舐めたら駄目だよ!」


「なにを広報担当にしてるんだ! 回覧板回せよ!」


「回覧板なんて数日掛かっちゃうから、明日になんて間に合わないって。なら主婦の連絡網に頼った方が断然早いよ」


 確かにと納得してしまった白夜は、「うぅむ」と唸る。


 その時、教室の扉が開いて白夜の方に一直線に歩いて来る。来たのは昨日1対1で戦った杉下だ。


 なぜか杉下はすごい形相でこちらを睨んでいた。


 白夜は「はて?」と頭を傾げると、昨日の事が原因であると直ぐに分かった。


「十六夜!」


「なんでござろう?」


「次は絶対におまえに勝つ! その時まで首を洗って待ってろよ!」


 そう言って踵を返し、前の方にある自分の席に座った。


「あいつは強くなるな」


「何言ってんのさ! きっと今まで以上の陰湿ないじめが……羨ましくて震えが」


「お前の感情が理解できなくて笑うのだが?」


「白夜君、なんで強くなるって分かるの?」


「え?」


 白夜は聞こえていなかったのか、耳に手を当てる。


「なんで急に耳が遠くなるのよ!」


「はは、冗談だって」


 白夜は笑いながら澪奈を宥める。


「なに、理由は簡単よ。一度敗北を知り、自分は強くないと分かった時がスタート地点なのさ。どうしても自分が完璧である、自分は強いと思ってしまうと、人間それ以上には見えなくなるものだ」


「むむ、それもそうだ! なら私も敗北を知らないとね!」


 澪奈はその細腕を曲げて力こぶを作るが、そこに盛り上がりはできることは無い。


「澪奈」


「なに?」


「お前は弱い」


「そんなことは分かってるもん! あえて言う必要ないじゃない!」


「言った方がいいのかと思ってな。それに、ゆっくり成長していけばいいじゃないか。急いても後悔するだけよ」


 白夜は澪奈の額をつつく。それと同時に授業開始の鐘がなり、生徒は席に着いた。

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