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英雄は空へと駆ける  作者: まるゆ
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少女は夢を見る13

「祭りだぁ!?」


 ギルド内の一室で白夜の驚いた声が響き渡る。


 現在白夜がいるのはギルドマスターである亮介の部屋。彼の部屋はかなり質素だ。必要なものが必要なだけと言った感じで、資料が入っているであろう本棚、事務仕事の為の机に椅子。


 そして応接用の低めの机とそれを挟むように置いてある二つのソファだけ。


 現在そのソファーに座った白夜は亮介と向かい合って話をしている。ギルドに諸々の報告を終えた後に亮介の部屋に案内された白夜は突拍子もない話に驚いる。


「そう、せっかくかの有名な舞姫が来てくれたのだからと町長から話があってね。せっかく外でやるならみんなで派手にやろうって訳さ」


「それは分かるんだけどさ、少し浮かれすぎじゃないのか?」


「それはそうさ、大変な有名人なんだから。我々ギルド、そして冒険者も可能な限りその祭りに協力するつもりだ」


 白夜は「えぇ……」と怪訝そうな表情を浮かべながら、目の前に置かれたコップの中の物を口に含む。


「もちろん白夜にも役目があるから、そのつもりで」


「お断りします。なにか嫌な予感がする」


 白夜は即頭を下げるも、それが分かりきっていたかのように一枚の紙を差し出す。どうやら特別依頼書のようだ。


 白夜はその紙を手に取り、内容を読む。


 -------------

 特別依頼

 舞姫の護衛兼案内人


 祭りの際にかの舞姫になにか

 あってはならない。

 その為、冒険者でも実力の高

 い君にこの依頼を任せたい。

 報酬は金貨一枚。


 ギルドマスター

 -------------


「引き受けましょう! ていうか、水竜と戦ってきた依頼よりもこっちの依頼の方が報酬がいいと言うもはいかなるものか」


 現金なものだ。報酬に目を奪われた白夜は即了承した。護衛だけで金貨1枚貰えるのだ。これほど楽な仕事は今までになかった。


 先程の死闘が嘘のようだ。


「んで、祭りっていつやるのさ」


「明後日だよ」


「またえらく急だな!」


 祭り開催まですぐなことに驚いた白夜は、一層疲れた表情をしている。


「ま、報酬いいし引き受けるさ。ところで、明後日学校なんだけどそれはどうすんのさ」


「すでに校長には話を通している。君はその日は特別休暇ってことにしてもらった」


「話が早すぎないか!?」


 白夜のツッコミを笑って返す亮介。


「でも君が引き受けてくれてよかったよ。この依頼、実は舞姫本人きってのお願いでね。私としては是非叶えてあげたかったんだよ」


「は? 俺、なにかした?」


「それは知らないが。会ったことあるんじゃないのかい?」


 亮介の質問に白夜はツッコミしすぎて疲れている頭を回転させて考えてみる。が、ないものを思い出そうとしても出てくるはずもなく、出会ったのは恐らく町で踊っている時が初めてである事を再確認する。


 しかも面と向かって話しているわけではなく、こちらは見ていただけ。


 指名されるようなことは何一つ思い浮かばなかった。


「いや、昼間に踊ってたのを見たのが初めてのはず」


「そうか。 過去に助けた人、ってわけでもなさそうなのか」


 白夜は昔のことを思い浮かべ、それに花音を重ねてみる。が、どの記憶にも花音程の美少女は当てはまらなかった。


「ならなんでだろうね。あちらは白夜君のことを知っている風だったけど。ま、君がただ忘れているだけな気がするけどね」


「しれっと馬鹿にしてない?」


「してないよ」と笑いながら立ち上がり、亮介は自身の事務作業用の机の方へと歩き始める。途中でコーヒーを入れて机に置き、椅子に机についている引き出しを開ける。


「あと、今日現れた清掃部隊もその祭りに参加してくれるみたいだから、最後の掃除もだいぶ楽になるだろうね」


「は? あの怪しい人たちも? なんか怪しいと思ったらもう怪しくしか見えないんだよな」


「まぁ、私も怪しいとは思ってるよ。せめてフード取ればいいのにね。あれじゃ隠したい事があるようにしか見えないね」


 うんうんと白夜は首を振る。


「でも、清掃活動ってのはみんなしたがらないだろ? それをやってくれている人には感謝しなくてはならない」


「まぁそれは理解してるつもり」


「ならいいじゃないか」


 亮介は見つけたであろう厚紙のようなものを机の上に置く。その後コーヒーを口に含み、また別の段の引き出しを漁りだす。


 何やってんのかと思った白夜は、ソファから立ち上がって近寄る。


「ところで、さっきから何やってんだ?」


「え? サイン用の色紙とペンとか必要だろ?」


「めっちゃ楽しみにしてるじゃん!」


「何を言う。こんな機会滅多にないんだし、出来うる準備はしておくものだ。そうだ髪も切りに行った方がよいだろうか」


 そう言って長くもない髪を弄り出す亮介。それがボケているようにしか白夜には見えなかった。


「なんだツッコミ入れて欲しいのか?」


「ん? ボケたつもりはないのだが」


「いや髪を切る程髪の毛ないでしょうが!」


「何を言う、舞姫に会うのだぞ? 君こそ髪型を整えた方がいいのではないか? 寝ぐせぐらい直したほうがいいと思うよ」


 そう言われた白夜は急いで寝ぐせを治そうとするが、少しくせ毛な白夜の髪はそう簡単には直らない。そう思った白夜は諦めてソファに戻ってお茶を飲む。


「しかし、なぜ祭りをすることになったのか。それが不思議でたまらないな」


「は? 町長が提案したんじゃないの?」


 白夜はソファーで全力脱力しながらそう質問した。


「いや、ところがそうではないみたいでね。 むしろギルド総出で彼女をサポートする気だったさ」


「もっとやばいこと考えてた!」


「ま、みんなが楽しめるようになったのだから結果オーライさ。さ、君も早くおうちに帰りなさい。私はこれから明後日の着る服を吟味しなくてはならないのでね」


「お祭り楽しみにしすぎだろう!」


 鼻歌を歌いながら洋服ダンスに向かう亮介を見て、白夜は盛大にツッコミを入れるのであった。

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