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英雄は空へと駆ける  作者: まるゆ
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プロローグ2

「さて、町に着いたな。さっさとギルドに行って仕事を終わらせよう」


 白夜はしばらく走っていると、大きな白い壁の立つ場所。そしてその中央にある全開放の扉の前で立ち止まる。


 そこは背景に海が広がる町、ナパージュ。この世界で最も大きな町と呼ばれている。ここは世界最大国家であるルキエナス帝国の領土の中でも1位を争う程の大国であった。


 その町は数十メートルはある大きな壁に囲まれており、その真ん中に位置する辺りには大きな扉がある。それを潜れば目の前には様々な店が立ち並ぶ商店街。そこは人で溢れ返っていた。


 賑やかで、活気のある風景。これは平和の証だ。


「見てくれよ! 昨日とーちゃんに新しい剣買ってもらったんだ!」

「えーいいなぁ! 僕も強い剣ほしー!」


「私、ついに憧れのあの人と明日依頼をご一緒するの!」

「ほんとにー? しっかりアピールしてきなさいよ!」


「そこの奥さんこの魚とれたて新鮮だよ!」

「馬鹿おっしゃい! それバナナじゃないの!」


 それぞれが大声で話す人々の横を無言で通り過ぎ、一つの大きな建物に着く。冒険者ギルド本部の館である。


 その建物の扉を開けて、白夜は中に入る。


 中には男女問わず、数十人の人がいる。大多数は白夜と同じ冒険者。そして残りはギルドの就労者である。


 白夜は目の前にいるカウンターにいる女性、既定のユニフォームを身にまとった受付嬢の前まで歩く。


 そしてカウンターの上に集めていた角を机の上に置く。その数は20個。受付嬢はその数を確認する。


「お疲れ様です。依頼を達成したことを確認しました。これは報酬となります。あ、それと。依頼主はこれがすぐ欲しいそうなので、出来れば白夜君が届けて欲しいのですが」


「ん、わかった。届けておくよ」


「ありがとうございます。地図はこちらに書いてありますので」


 白夜はお金の入った小袋を受け取り、腰に付けていた袋の中に仕舞う。


 そしてもう1枚の紙切れを受け取る。書いているのは町の地図で、1箇所には赤マルをしてある。どうやら目的地はそこのようだ。


「ところで白夜君、あなたに特別依頼がきているのですが」


 受付の女性は白夜に小声で話しかける。


 特別依頼は一般公開していない依頼。ギルド内でこの人なら任せられると思った人にのみに紹介される依頼だ。


「急ぎの依頼ですが、明日でも構いません。どうか受けていただけませんか?」


「明日でいいなら。今日はもう遅いし、明日また学校帰りに寄るよ」


「ありがとうございます。ではまた明日よろしくお願いします」


 受付嬢は丁寧にお辞儀をする。白夜はそのまま踵を返して外に出ると、まっすぐ依頼主の家へと向けて歩き始めた。


 数分歩いて商店街を抜ければ、そこは住宅地。そこでは家の前で話し込んでいる人、散歩している人、掃除をしている人。


 時間的に夕飯の時間の為か、台所であろう部屋の窓から漂ういい匂いが白夜の鼻腔をくすぐる。肉の匂いから、魚を焼いた匂いなど匂いは様々だ。


 そんな中、白夜は一軒の家の前に立ち止まり、地図を見る。目的地に着いたことを確認し、一軒の家の扉をノックする。出てきたのは人のいい大柄のおばさんだ。


 肝っ玉おばさんという名がよく似合う女性で、手にはオタマを持っている。料理中だったのだろうか。外に出る時は置いてくればいいのにと思いながら、白夜は角が入った袋を差し出す。


「おや、依頼の物かい? いつもすまないねぇ」


「仕事だから構わないのぜ」


 女性は袋の中身を確認し、大きく頷いた。


「数も物も大丈夫だね! ありがとね!」


「いえいえ! それじゃ俺はこれで!」


 白夜は一礼してその場を後にする。おばさんは白夜の背中に向かって手を振って家の中へと戻っていく。


 実はこの角を何に使うのか、白夜はすごく気になっていた。ホーンピックの角は硬くて丈夫なのだが、丈夫過ぎて加工が難しい。


 しかし依頼品を何に使うのかなどは聞いてはならない。これは冒険者としてのマナーなのだ。


 そんな白夜はしばらく歩いていると学校の前を通りがかる。この町唯一の高校、ナパージュ高等学校。この高校は数ある高校の中でも、強い生徒をより多く選出する有名な高校だ。


 校門からはまだ学生が帰っている。丁度下校途中に出くわしてしまったようだ。


「おい、あいつうちのクラスにいる低レベルじゃね?」


「うわほんとだ。あんなところで一人でいるやん。暇そうでいいな。俺たちは修行で忙しいってのによ」


 そんな声の先には、少し離れたところで制服姿の少年二人が白夜の方を指を差して話をしている。それは白夜が聞こえるくらい堂々と大きな声で。


 低レベル。それは蔑称である。要は差別用語だ。レベルは低ければ弱い。その為、何をされても構わないとまで言われるほど。この世はそんは理不尽な世の中なのだ。


 レベルが低いだけでいじめの対象にされることもしばしば。しかも就職や進学などにも不利になったりする。


 それほどまでに【レベル】という数値は、この世界において最重要視されているのだ。

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