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英雄は空へと駆ける  作者: まるゆ
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少女は夢を見る10

 白夜は森の中を魔物を倒しながら走っていた。


「全く、変な依頼を受けてしまったのぜ」


 澪奈と別れた後、白夜を待っていたのはギルドの入口を入ってすぐに笑顔で待っていた涼介だった。そして1枚の紙を渡され、現在に至る。目的地はこの森の最奥だ。


 涼介の話によると、森の最奥には湖があり、その水中にいるはずの魔物の集団が狂暴化して陸に上がって暴れているいるとの事だ。


「この手の依頼は難度の割に報酬しょっぱいんだよな。つかあの人はこの手の依頼ばっか寄越しすぎでは?」


 白夜は文句を言い、森の中にいる魔物を倒しながら森の中を歩いていた。


 しかし、白夜は唐突に明日を止める。


「……あれは?」


 そんな時、少し離れた先に人であろうシルエットに気がついた。


 違和感を感じつつ、足音をなるべく立たせないよう用心しながら近づけば、その人は目を引くほどの美しい女性であった。


 大人の色香を出しながら、そしてどこか幼なげな雰囲気の女性は綺麗な赤い髪を風にたなびかせている。


 そして隠れていてもわかる程の脅威、もとい胸囲はつい視線に入ってしまう。しかも大胆にかばっと空いているため視線が離れようとしない。


 とりあえず木の影に隠れて様子を見ることにした。


 女性は少し大きめな丸い石を椅子代わりとして座っており、その手にはペンを持ち本のような物に何かを記しているようだった。


 魔物の蔓延るこの場所で。


「あら、こんな所に人が来るなんて珍しいわね」


 白夜の存在に気がついてか、その女性は視線は動かさずペンを走らせながらそう口を開いた。


 白夜は少し違和感を覚えながら木の影から出て女性の前まで歩く。


「こんな魔物だらけの場所に人がいる方が珍しいのぜ」


「でもあなたもここにいるじゃない。なら私がここにいてもなんら不思議はないとは思わない?」


「それはまぁ、確かにそうだけどさ……」


 女性にそう言われた白夜は言い返せなくなって口籠ってしまう。その様子を見て女性はくすくすと笑う。


「ごめんなさい。別に困らせるつもりはないのよ。私は雪乃江ゆきのえ つづり。あなたは?」


「俺は十六夜 白夜。冒険者兼学生をしている」


「あらあなた学生もしているのね。ふふ、若いっていいわね」


 手を口で隠して上品に笑う女性。


「若いと言ってもお姉さんとはあまり変わらないような気もするけど?」


「ふふ、嬉しいこと言ってくれるじゃない」


 綴は手で口を隠して笑う。


「ところでお姉さん、この近くに凶暴化した魔物がいるらしい。離れた方がいいのでは?」


「ふふ、忠告ありがとう。でも、大丈夫よ。私逃げ足早いから」


「いや、普通に危険だからさ。せめて離れておいた方がいいのぜ」


「ふふ、あなたは優しいのね。そんなあなたにいいこと教えちゃおうかしら」


「い、いいことってなんなのぜ!?」


 なぜか動揺し始める白夜だが、少し嬉しそうな表情をしている。綴はそんな白夜をくすくすと笑い、石から立ち上がって近づく。


 そして体が密着するくらい近寄って白夜に顔を近づけると、白夜は目を閉じる。そして……。


「鐘が鳴り、栄光は闇へと沈む」


 そう、耳元で囁いた。意味深な言葉を告げた綴は白夜から離れ、奥へと進んでいく。


 白夜は意味が分からずぽかんとしてしまう。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 全く意味がわからんのぜ!」


「大丈夫、今は分からなくてもいいのよ。また会いましょう、白夜君」


 歩く女性を引き止めようと白夜は走るが、綴から眩い光が放たれ白夜は目を瞑ってしまう。


 数秒経った後、白夜は光が収まったのを確認して目を開く。


 が、そこには既に誰もいない。


 周りを見渡し、気配を探るが感じ取れるのは魔物の気配のみ。


 魔術の類か、または【天の恩恵(スキル)】によるものか。しかし、白夜にはそれよりもひっかかるものがあった。


 白夜は腕を組んで、顎に手を当ててthe考えてますよフォームを取り、夢を思い出すかのように先程の出来事を思い返す。


「鐘が鳴り、栄光は闇へと沈む、ね。まったく聞いたことないんだけど。あとで咲姫に聞いてみるか」


 白夜は現状の最適解をそう決めつけ、突如襲いかかってきた鶏が巨大化したような魔物をいつの間にか抜いていた刀で真っ二つにする。


 魔物は黒い霧となって消えていく。


「とにかく、今はできることをしよう。考えるのは俺の役目ではないのぜ」


 刀を鞘に仕舞い、歩き始める。


 森をまっすぐに進んでいくと、まっすぐに進んでいくと開けた場所に着く。そこには大きな一本の木がそびえたっている。その背景には湖が広がっており、なんとも幻想的な雰囲気を醸し出している。


 その大木に圧巻されながら白夜は近づいていくと、サイドからこちらに近づく気配を感じ取った。足音からすると3匹。


 奥からの視線を合わせると軽く10匹は超えるだろう。


「言っていた魔物化は知らんが、殲滅しておいて間違いはないかな」


 近づいて来るのは二本足で立つワニのような魔物。手には鉄製の槍を持つ、緑色の鱗に覆われた魔物、名はダイルソルジャー。


 本来ならば水の中に生息する魔物なので、陸を歩いていることに違和感を覚えていた。


 と、その時だ。


 大きな木の後方、湖が唐突に激しく波打つ。


「一体なんだ?」


 湖に近寄れば、その湖の中に大きな生物がいることに気が付く。白夜は慌てて後ろに下がると、その生物が白夜目掛けて飛び出してくる。


 白夜は大きく後退すると、その巨体は大きな地震を起こしながら地面に降り立った。


 その巨躯は白夜の数十倍はでかく、爬虫類のような図体には逆立つ青黒い鱗が凶器のように連なっている。そして大きな口には鋭い牙、強靭な腕には鋭利な爪。その姿はまるで竜を彷彿とさせる。


「いや終わったわ」


 その絶対強者。人間如きが勝てるはずがない。白夜は棒読みでそう言うと、周りを見渡す。先程いたダイルソルジャーたちは見る影もない。


 その後、また白夜は巨躯を見ると、目の前の生物が大きな目で白夜を見ていた。まるで餌を見ているかのようだ。恐らく捕食対象としか見ていないのだろう。


 しかし、白夜は少し合点がいった。陸でダイルソルジャーが暴れているのは、住処をこの生物に追い出されているからだと。


 ならば、この生物さえ倒してしまえば元に戻る。


「ダイルソルジャーたちが陸にいるのがこいつの原因なら、こいつを始末しないといけないわけだ」


 白夜は刀を引き抜くと、その竜はけたたましい程の咆哮を上げた。

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