幼馴染みのお嫁さんになることになった私ですが異世界生活に慣れるのでしょうか?
私の幼馴染みは年上です。
小さいときから彼は私を守ってくれました。
私が男の子にいじめられて泣いているとそのいじめた男の子とけんかをしていつも勝っていました。
私はそんな彼をいつも頼っていました。
彼が中学生になる前に彼は引っ越していきました。
最後の別れも言わず、彼とは会わないまま月日は流れました。
私は彼のことを思い出すこともなく毎日をただなんとなく過ごしていました。
今日は雨です。
傘を差しながら歩いていると傘も差さないで立っている男の人がいました。
どう見ても変な人です。
私は見えてないフリをして男の人の前を通りすぎようとしました。
しかし、私は通りすぎることができませんでした。
それは何故かって?
それはその男の人に腕を握られたからです。
私は恐怖で震えます。
「俺のこと忘れた?」
男の人がそう言ったので私は男の人の顔を覗き込みました。
幼馴染みの彼でした。
どことなく面影があります。
「どうして?」
「君を迎えに来たよ」
「迎え?」
「そう。君を俺のお嫁さんにするために俺の世界から君を迎えに来たんだよ」
「ん? 理解できないのですが」
「約束したでしょう? 小さいときに」
私は記憶を思い出そうとしました。
彼との約束?
「もしかして、あのお花の指輪のときのこと?」
「そうだよ」
「それって、子供の約束だよ。本気にしないでしょう?」
「俺は本気」
お花の指輪の約束とは、彼がお花で指輪を作り私にはめてくれました。
そして“大きくなったら結婚しようね”って言った子供の頃の約束でした。
「私には結婚は無理。まだ高校生だし」
「これはもう決まったことなんだ」
「決まった?」
「君の小指を見てごらん」
私は彼に言われ小指を見ました。
ん?
小指に赤い糸がついています。
そしてその赤い糸をたどると、彼の小指に繋がっていました。
「何で繋がってるの?」
「俺と君は運命の相手なんだよ」
彼にそう言われても私には運命の相手なんて納得できません。
なぜなら私は、彼に全然惹かれていません。
そして彼はもう一つ私が納得いかないことを言いました。
「君には僕の世界に住んでもらうよ」
「何で全部あなたが決めるの?」
「だって、俺の世界は俺のものだから」
「意味がよくわかりませんが?」
「俺の世界は俺がトップって言えば分かる?」
「あなたの世界が分からないの」
「それなら一回、行ってみる?」
彼はそう言って私の目を手で覆い、何かを唱えると私の耳に入ってくる音が変わったのが分かりました。
車の走る音や、信号機の音、雨の音、人の声が全てなくなり、聞こえるのは鳥のさえずり、木の葉っぱが風で擦れる音、そして彼の優しい声。
「君はこの世界で俺と幸せに暮らすんだ」
顔が見えないからこそ、彼の声で気持ちを読みとろうとしている私。
ゆっくり目を覆っていた手がなくなります。
眩しくて少し目を細めながら目を開けます。
私の目の前にはキラキラと輝いている、木や、草。
イキイキと楽しそうに咲いている花。
人間なんて怖くないと言うように私達から離れようとはしない野生のリス達。
彼の世界は幸せで溢れていました。
「ここはどこ?」
「俺の世界」
「それは私からすると異世界ってこと?」
「そういうことだね」
「この世界は私の世界と何が違うの?」
「魔法があって、いろんな種族がいて、魔物もいるし、妖精もいるし、一番はみんなが幸せに暮らしてる世界」
彼は嬉しそうに話します。
本当にこの世界が好きなのが顔から滲み出ています。
私は私の世界を彼のような顔で話せるのでしょうか?
この世界は幸せで溢れているのが彼の顔でよく分かりました。
「私はあなたと結婚をしたら何をするの?」
「何もしなくていいよ。ただ俺の隣にいてくれればそれでいいよ」
「それって、私は必要なの?」
「君がいるだけで俺の世界はもっと幸せになるんだ」
彼は目をキラキラとさせて言いました。
「それなら、結婚はまだ無理だからお試しでこの世界に住んでみるよ。」
「お試し?」
「そうだよ。簡単に言えば婚約者かな?」
「婚約者。分かったよ」
私はこの世界に興味を持ちました。
こんなに幸せが溢れている世界に住んでみたいと思ったのです。
私が婚約者ということはすぐに広まりました。
いろんな種族の人達が私に挨拶に来ました。
私の半分くらいの背丈の小人さん。
私の何倍も大きい背丈の巨人さん。
剣を腰にさしている、顔は熊さんで体は人間のベア族と言う種族。
ライオンやチーター、狼やゾウなどの人の言葉を話す、見た目はそのまま動物の獣族と言う種族。
掌サイズの小さい人間に羽が生えた可愛い妖精さん。
そして私と同じように普通の人間に見えるが魔法を使える魔族という種族。
彼は魔族の人間でそしてこの種族達をまとめる王様です。
私はこの世界の人達に歓迎されました。
私もこの世界に来て、すごく幸せです。
このままこの世界にいてもいいかもと思っていました。
しかし、私はこの世界の闇を見てしまいました。
それは、私が住んでいるお城の地下へ行ったときのことです。
私は道に迷い、部屋があったのでドアを開けました。
そこにはとても綺麗なお姫様がいました。
何故こんなところにいるのでしょう?
「あなたは何故、ここにいるのですか?」
「私はこの世界に闇をもたらす存在なのでこの部屋に閉じ込められています」
「えっ、でも鍵なんてかかっていませんよ」
「魔法で鍵がかかっているのですが、あなたには魔法が効かないのですか?」
「そうみたいですね」
「ここにいるのがバレたらいけないのでは?」
「それじゃあ、お姫様はここから逃げますか?」
「えっ」
「せっかく鍵が開いているのですから、逃げませんか?」
「私はここにいます」
「何故ですか?」
「私はここにいないと、闇がこの世界を包んでしまいます」
「それって誰が言ったんですか?」
「言い伝えです」
「そんな、曖昧な理由で閉じ込められているんですか?」
「曖昧ではないです。ちゃんと本が残っています」
「それを曖昧って言うんですよ」
「それでも私はここを離れることはできません」
「分かりました。あなたの気持ちが変わるまで私はここに来ます。あなたは自由になるべきです」
私はそう言って部屋を出ました。
そして毎日、彼女の元へ行きました。
「君は最近、俺の隣にいないよね?」
「そう?」
「何か、隠してる?」
「何も隠してないよ」
「君は変わってないね」
「え?」
「嘘をつくとき、君はまばたきが多くなるんだよ」
「えっ、知らなかった」
「さあ、教えて」
そして私はお姫様の話をしました。
彼はお姫様の存在を知りませんでした。
しかし、彼は“自分は王様なのに知らないのがいけないんだ、お姫様に会いに行く”と言いました。
彼は自分の責任だと思っていたのです。
私は彼とお姫様の部屋へ向かいます。
彼がドアノブに触れた瞬間に眩しい光が発生し、私は目を閉じました。
目を開けたときには彼はドアの前で倒れていました。
私は彼の呼吸を確かめました。
彼は眠っているように呼吸をしていました。
心臓はトクン、トクンとゆっくり動いています。
私はお姫様の部屋のドアを開けます。
「お姫様。彼はどうなったの?」
「このドアは触れると一生眠り続ける魔法がかけられていると誰かがいっていました」
「彼は眠っているんですね?」
「そうだと思います」
「お姫様。今、逃げないと私がここに来ていたこともバレちゃう。今しかないよ」
「何故、あなたは私の心配ばかりするのですか?」
「だって、悲しんでいる人がいたら笑顔にしてあげたいですよね」
「あなたの気持ちは分かりました。私は逃げます」
「それならお城の外まで一緒に行きます」
「でも、王様は?」
「彼は寝てるだけでしょう?」
「ありがとうございます」
お姫様は初めて私に笑顔を見せてくれました。
お姫様はやっぱり、ここから出たかったのだと私は思いました。
お姫様が一歩、部屋から出ると雲行きが怪しくなり、雨か降り出しました。
お姫様は心配そうに私を見ます。
「あなたのせいじゃないです。あなたは何も考えずに、幸せになることを願って下さい」
「はい」
そしてお姫様はお城から出ていきました。
私はすぐに彼の元へ戻りました。
それから彼はずっとベッドに寝たままです。
もう何日が過ぎたのでしょう?
あの日から空はずっと雲に覆われています。
私の心も寂しさのあまり曇り空です。
「あなたはいつ、目を覚ますの?」
私が彼に話しかけても返事はありません。
この世界に来て幸せだった私の今は幸せなんて程遠く感じます。
彼の笑顔が見たくて仕方ありません。
彼の声が聞きたくて仕方ありません。
彼の真剣に仕事をする横顔を見たくて仕方ありません。
彼が私を愛おしそうに見る目を見たくて仕方ありません。
私の中で彼の存在が大きくなっていることを私は初めて知りました。
彼はここにいるのにいないみたいです。
私は悲しくなりました。
すると涙が私の頬を伝いました。
私は我慢していた涙をとうとう流しました。
何滴も何滴も涙は彼の枕に落ちました。
彼に触れたくて、私は彼へ顔を近づけキスをしました。
すると私は後頭部を軽く押さえられました。
私はすぐに目を開け、唇を離すと彼の目が開いていました。
彼は私を愛おしそうに見て、言いました。
「初めてのキスはちゃんとしたいよ」
私は彼にそう言われ“もう、仕方ないな”と照れ笑いをしながら彼にキスをしました。
いつの間にか空は雲一つない青空になっていました。
私は彼のお嫁さんになる……
とは決めていませんがいつかなれたらいいなと思っています。
今はまだ恋人でいいです。
少しずつこの世界に慣れていけたらなあって思います。
また、毎日楽しく過ごしていましたが私はお姫様が気になっていました。
お姫様は幸せになったのでしょうか?
そんなある日、お姫様がお姫様のドレスを着てはおらず、腰に剣をさして王子様のような格好で現れました。
「お姫様?」
「私の命の恩人。王様の婚約者様」
「えっと、普通に話して欲しいです」
「あっ、そうですか? 早速お話があります」
「何ですか?」
「私はあなたのような優しい人間がいる世界へ行きたいのです」
「えっ、私の世界に?」
「はい。あなたのような人をもっとたくさん知りたいのです。」
「私の世界は幸せだけではないですよ?」
「はい。分かっています。あなたと出会ったのには意味があると思うんです。私はあなたの世界へ行く運命なのです」
「お姫様、それは違います。運命ではなくてあなたが自分で決めたことなんですよ。運命なんて言葉では表せないですよ」
「そうですね。あなたも運命ではなくて自分で決めてここにいるのでしょう?」
「私はまだここに居続けるか決めてはいないです」
「でも王様の横にいるときのあなたの目は決まっているように見えますよ」
「えっ」
「私はあなたの幸せを願います。あなたが私の幸せを願ったように」
「ありがとうございます」
「こちらこそありがとうございます」
そしてお姫様は私の世界へと旅立ちました。
私はというと、
「ねえ、今日こそ一緒に寝てもいいよね?」
「ダメ、まだダメ」
「いつだったらいい訳?」
「ん~私があなたのお嫁さんになったらね」
「それはいつ?」
「もうすぐ」
そうです。
私は彼とラブラブ生活を送っています。
異世界に住むのは大変ですが彼がいれば大丈夫だと心から思えたとき私は彼のお嫁さんになろうと思います。
そのときはもうすぐそこまで来ています。
読んで頂きありがとうございます。
読んで頂いた方の心が暖まるストーリーだといいなと思って書きました。
ブックマーク登録と評価をしてくださりありがとうございます。