平和を守った正義の瞳 1
第2章です。
空一面、灰色の雲で多い尽くされて、太陽の姿は全く見えない。
地上には海がひっくり返ったかのような大粒の雨が降りしきり、アスファルトの地面を濡らしている。
ここはアメリカ・ニューヨークはマンハッタンの郊外に位置する公共墓地。
草の生い茂る広い敷地内に何百という数の墓石が立ち並び、その墓石の下にはまた何百という数の死者が永劫の眠りに就いている。
その霊園の入り口に一台の霊柩車が停車し、男性数人の手で中に積まれていた棺が降ろされた。
X-2nd/シャーリー・リンクの遺体が入れられた棺だ。
今日…雨の降りしきるこの墓地で、サイボーグX-2nd/シャーリー・リンクの葬儀が行われようとしていた。
霊柩車から棺が降ろされると、後続の自動車から葬儀の参列者達が降り始めた。
先頭の黄色いタクシーから最初に下車したのは、喪服の上から黒いコートを羽織ったX-9th/朱雀キョウジだった。
続いて、喪服姿に黒いソフト帽を被ったヨセフ・パブロフ博士が杖を付きながらよろよろとタクシーから顔を出す。
キョウジはパブロフ博士が雨に濡れないように気をつけつつ、パブロフ博士の体を包み隠すように黒いコウモリ傘を広げた。
続けて、タクシーの後方に停車していた黒い大型リムジン車の助手席からいささかツンツルテン気味な喪服姿のX-5th/ロブリコが下車し、リムジンの後ろのドアを開ける。
開けられたドアからは中華風の喪服に身を包んだX-6th/藤 妹紅が姿を現し、ロブリコはマイホンが濡れないように彼の体もスッポリ覆ってしまうほど大きなコウモリ傘を広げてマイホンの頭上を包み込んだ。
最後に一番後方に停車していた軍用と思われるカーキ色のジープから蒼いマフラーとオレンジ色の改造人間用戦闘服姿のX-1st/リーシャ・フルスキーが降りてきた。
服装こそ戦闘服ではあったが、左上腕には喪章を装着しており、腰まで伸ばした銀色の髪は綺麗に結い上げられていた。
自身が持つ念動力の作用によってX-1stの肉体は風船のように空中に浮かんでおり、同じく念動力の作用によって、雨粒が自分から避けるかのように彼女の体を避けていた。
葬儀の参列者は大半がX-サイボーグのメンバーであり、残りは一部の国連職員で、シャーリーの家族やX-サイボーグ以外の友人の姿はなかった。
キョウジとパブロフ博士、マイホンとロブリコ、そしてX-1stは挨拶もそこそこにシャーリーの棺に続いて墓地へと入っていった。
墓地の中にはすでに真新しい墓穴と墓石が用意されており、コウモリ傘を刺して聖書を携えた神父が墓穴の手前で待機していた。
シャーリーの棺は真新しい墓穴の隣に下ろされ、キョウジ達参列者も墓穴を覗き込む形で整列した。
準備が済んだ事を確認し、神父は手にした聖書を開いた…。
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