表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

道化を救った魔法使い

作者:

蛹です。

コメディを書こうとしたらあまり笑う箇所がないのでファンタジーとして投稿します。

鈍っているんですかね?

ちょっとダークな表現があります。

苦手な人はご遠慮ください。

時間が空いたときにまた短編を投稿しようかと思います。

生まれ変わったら何になりたいって事考えたことがあるかな?

僕は小さいころは蟻になりたかった。

だって蟻の巣って何十匹も蟻が住んでいるんだよ?

蟻になれば僕みたいに寂しい人生なんて送らないだろう?

まぁ僕の不幸自慢は置いといて…神様、いくらなんでもこれはないんじゃないかな?


気がついたら僕は知らない森の中にいた。

…僕ってさっきまで公園にいたよね?

辺りを見渡すと木々が生い茂った深い森。

目の前には湖。

そういえば喉が渇いたから公園に寄ったんだっけ?

初めての経験だけど湖の水でも飲んでみようかな?

見た目綺麗な湖の水を飲もうと湖に近づく僕。

そして、手で水をすくって飲もうとすると…


誰ですか、貴方?


湖の中に変な人がいた。

口が裂けた笑顔のピエロみたいなお面をつけた人。

そして、何かのRPGでかっこいい魔法使いが着るような不思議な服。

イメージで言うとジブリ映画のカオナシが人型になってPS2のFFに黒魔道士として登場した感じ。

自分で言ってて訳がわからないや。

…あれ、これってもしかして僕?

まさかね。

とりあえず人を探そう。

現実逃避気味に後ろに振り返った

すると…


「「「グルルッ…」」」


何?このRPG的な展開?

目の前には狼らしきものが3匹。

けど、2本足って何さ?

しかも、涎垂らしているし。

ものすごい牙が鋭いし。

…あれ、僕ってピンチ?


「「「グラァアアァァ!」」」


すぐさまダッシュで逃げた。

何これ!?

さっきからおかしくない!?

何処のアニメ、ゲームネタ!?

だったらこういう時ってすかさずヒーローとか助けてくれる人が出てくるのが定番じゃないの!?


助けて、勇者様!


助けてくれるならアンパンマンでもいいから!


助けて、ドラえも〜ん!


ドラえもんVS狼男?

…なんか不安だ。


助けて、ウルトラマン!

…僕まで踏み潰されそうだ。


「グルアァァァァ!!」


逃げ回っている内に2体は何処かに行ってしまったようだ。

諦めたのかな?

けど、もう1体はしつこく追いかけてくる。

君、しつこいよ!?

あ〜、誰でもいいから助けてくれよ!

じゃなかったら伝説の武器が落ちてるでもいいから!

と思ったらいきなり手元が重くなった。


「グオォォォォ!!」


やばい。

突然のことにバランスを崩した僕に狼男は襲い掛かってきた。

仕方ない。

僕は手元にあるのが何かもわからずに無我夢中でソレを狼男に向けて振った。


「ギャアァァァ!!!」


手元に軟らかい感触の後に何か抵抗を感じたが気にせずに振りぬいた。

手元を暖かい水が濡らした。

ゆっくりと狼男がいた場所を見ると…

さっきまで狼男だった赤いものがあった。

見ると周辺の木々は僕を中心に数メートルほどの範囲にあったものはすべて切り倒されていた。

手元を見る。


何だよ、これ。


僕が持っていたのは禍々しい鎌。

柄が真っ赤で呪詛のようなものが書かれた包帯が少し巻かれている。

刃はギラギラしていて赤い水に染まっている。


何かもうどうでも良くなってきた。


自分がおかしな場所にきたのも。

自分の姿が化け物になっているのも。

化け物に襲われたのも。

化け物を…殺したのも。


僕は足を抱えて、その場で泣いた。

もう疲れたよ。


………

……


しばらくすると遠くで悲鳴が聞こえた。

女の子の声だ。

人間だった僕には聞こえないほどの遠く。

体が勝手に動いた。

体が悲鳴のする方へと走り出した。

風よりも早く、悲鳴の元に。


…何してるんだろう僕?


[side:レイミー]


私は死を覚悟した。

近くの町まで仕事を探しにきたが何処も断られた。

理由は私の足だ。

小さい頃の怪我が元で満足に歩けなくなった私の足。

そのために満足な生活が送れずにぼろぼろの服を着ている私。

どこも断られたために森の薬草で生計を立てようと森に入るとこの状況。

目の前にはワーウルフ。

この魔物からもう逃げられそうに無い。

どうやらこの不自由な足にも限界がきたようだ。

今まで逃げられたのもこのワーウルフが遊んでいたからであろう。

魔物は私に噛み付こうと口を大きく開けた。

私は覚悟を決めて目を閉じた。


………

……


何も起きない。

私は恐る恐る目を開けると…


「えっ!?」


そこには違う景色が広がっていた。

切り倒された周りに木々。

周辺の木々と同じく、ワーウルフは半分にされていた。

辺りの草木は真っ赤に染まり、気がついたら私自身も赤く染まっていた。

そして、私の目の前には別の化け物がいた。

2mほどの人型の不気味な仮面を被った悪魔。

それ以上に異常なことがその化け物よりも大きな鎌を構えていることだ。

その化け物は私に気がついたのかこちらに寄ってきた。

私は後ずさりすることもできなかった。

これだったら先ほどのワーウルフに殺されたほうがましだ。

尋常じゃない恐怖。

悪魔は私に手を伸ばした。

私は目を瞑ることもできない。

その悪魔はそっと私の足に手を伸ばした。

心なしか悪魔の手が光っている。


「(嫌っ!嫌っ!嫌っ!嫌っ!いやっ!いやっ!いやっ!イヤッ!イヤッ!イヤァァァァ〜!!)」


涙が流れた。

多分、私が流す最後の涙。

なぜか私はあの悪魔を突き飛ばすことができた。

そして、急いで立ち上がり、悪魔から逃げ出そうと…?


「えっ?」


立っていた。

私が数年間も立ち上がるのにも苦労した足がちゃんと動いた。

なんで?

気がついたら逃げ回った時についた小さな傷も無くなっていた。

あの悪魔が直してくれたの?

見ると悪魔は私から離れていった。


「まっ待って!!」


[side:僕]


しばらくすると遠くで女の子が狼男に襲われていた。

それを見た僕は血が熱くなり、さらにスピードを挙げた。

そして…


「■■■ーーーー!!」


声にならないような断末魔をあげる狼男。

それと同時に真っ二つになるそれと木々。

これで2匹目。

血の匂いがしないのはこの体に鼻がないからか。

あったら多分吐くだろうな。

後ろを振り返ると怯えた少女。

僕より少し年下ぐらいの外国の少女。


もう大丈夫だからね。


どうやらこの体は声もでないらしい。

とりあえず彼女に手を伸ばそうとした。

しかし、彼女は怯えていた。

さっきの狼男じゃない。

僕という化け物にだ。

泣きたくなった。

この体ははたして泣けるのだろうか?

そんな疑問も今はどうでもいいか。

彼女は足から血が出ていた。

多分さっきの狼男から逃げていたときに怪我をしたのだろう。

僕はせめて気休めになるだろうと彼女の足の怪我の箇所に手を伸ばした。

そこに触れた瞬間、火傷のような痛みが僕を襲った。

思わず手を離し、彼女を見るとうつろな目で涙を流していた。

そして、いきなり彼女は僕を突き飛ばして逃げた。


…あはは、仕方ないよね。僕は化け物だもの。


もうどうでも良くなった。

遠くへ行こう。

誰も来ない遠くでひっそりと暮らそう。

いや、生きてても仕方ないか。


「まっ待って!!」


立ち去ろうとする僕に声がかけられた。

振り返るとさっきの彼女だった。


「その…えっと」


言いよどむ彼女。

恨み言でもあるのかな?

しかし、彼女の後ろには…


「キシャーー!!」


しまった!もう1匹いたか!

僕は彼女を抱き寄せ、狼男を切り裂いた。

油断した。少し引っかかれた。

見ると腕から少し血が流れていた。

…緑色の血。

さすが化け物。

僕は彼女から離れた。

そして、逃げ出そうと後ろを振り返ると…


「…ありがとう」


彼女は搾り出すような声で言った。


[side:レイミー]


怪我の事を言おうとすると後ろから奇声が聞こえた。

振り返ると先ほどとは別のワーウルフがいた。

私のすぐ後ろ。

襲われる直前に引っ張られた。

気がつくとあの悪魔に抱きしめられた。

そして後ろから飛んできた暖かい水。

すると悪魔は私から離れた。

また、助けられた…。

悪魔は何事も無かったかのように立ち去ろうとする。


待って!


置いてかないで!!


初めて私を助けてくれた人!!!


「…ありがとう」


抱きしめられた時、彼は暖かかった。

まるで人みたいに。

久しぶりだった。

人の温もりを感じたのは…。


彼を見ると腕から血を流していた。

緑色の血。

やはり、彼は人間ではない。

でも、もう関係ない。


「貸して」


私は彼の腕を掴むと売ろうと思っていた薬草を口に入れる。

何度も噛み、軟らかくなった所で吐き出す。

そして傷口に塗りこむ。

少し腕がピクッと動いたがそれ以上は何もしてこなかった。

私は服を脱ぎ捨て、それを細く切り裂き、彼の腕に巻いた。

これで応急措置は完了。

今の私は裸だ。

下着など買うお金は無い。

恥ずかしいが彼に見られてもなぜか嫌な気分にはならなかった。

彼は私が治療した箇所を不思議そうに見た。

それがどこか滑稽で思わず笑ってしまった。


「ねぇ、貴方の名前は?」


彼は答えなかった。

というよりはどこか困ったような表情に見えた。

もちろん仮面なので顔など見えないがそう思った。


「私も…一緒についてっていい?」


今度は驚いた表情。

多分そうだろう。

このまま町に戻っても私は近くに死んでしまうだろう。

それこそ犯罪でもしない限りは。

私はなんとなく彼についていきたくなった。

化け物だけど誰よりも優しい人間らしい彼。

一目ぼれではないが彼が気になる。


「ねぇ、いいでしょう?」


私は自分が裸だと言うことも忘れて彼に抱きついた。

今度は照れたのかな?

おもしろい。

こうなったら彼が拒絶してもついてってやる♪


[side:僕]


おかしなことになった。

彼女になつかれたようだ。

離してほしいが僕はしゃべれない。

君って自分が裸だっていうこと忘れてない?

腕に心地よい感触を堪能しながら僕は…って堪能したら駄目だろう、僕!?

とりあえず、彼女をどうしようか?

このまま一人で行くか?

それは死ぬと同じ意味だろう。

彼女と一緒に行く?

拒絶しようにも言葉が出ない。

仕方ないか。

とりあえず僕は彼女の腕を取った。

すると彼女は笑顔になった。

まぁ、かわいいし、これも面白そうだ。

せめて服は着てほしいな。

僕がそう思うと彼女は光り輝き…


「わぁ〜♪」


そこにはまるでどこかの貴族のような服を着た彼女が立っていた。

彼女は魔法使いなのか?

そういえばさっきの足の怪我もいつのまにか直っているし。

これは楽しそうだ。

絶望だった僕を救ってくれた魔法使い。

例え、この身が化け物であろうと僕を救ってくれた貴方を守ります。

声の出ない僕は心の中で隣で微笑む彼女に誓った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 続き読みてーーーーーーーー
[良い点] 話が面白かったです。 [気になる点] ない [一言] 続きを書いてほしいです。
[一言] とても解りやすい文体ですが、もっともっと心理描写を深く多くして説得力を持たせたらとても魅力のある作品になると思われます。 人物描写ももうちょっと増やした方がいいと思われます。 ヒロイン視点で…
2008/12/23 05:19 とおりすがりん
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ