34 一網打尽
「めんどくせえやつだな。
ちょろちょろしやがって!!
レベル4!!」
愛莉さんは苛立ちながら槌を振る。
でも、逃げられてしまう。
愛莉さんの槌は進化する武器。
だんだん動きは速くなる。
そして長くなって、ヘッドの部分も大きくなる。
愛莉さんは4つの井戸の中央…
でも、よく考えたら…
1つの井戸に注目したら他の井戸は死角になる。
あまりいい立ち位置とはいえない…
4つの井戸がみんな見えるところからダッシュするのがベストなように思える。
また空振りをする愛莉さん。
そして、皿のフリスビーを避けるのが精一杯。
服はもうボロボロになっている。
「へたくそっ!
ちゃんと考えろよ。
おまえの後ろばっか出てくるじゃん」
とうとう金槌がしゃべりだす。
そう、愛莉さんの武器には悪魔が閉じ込められているって言う。
「うっせえな。
だあってろ」
軽くあしらう。
でも、悪魔の言うのも事実。
こっちにいくと見せかけてとかすればいいのに…
「レベル5!!」
愛莉さんはただ現れた敵に対して金槌を振るだけ…
ほんとうに考えたりするの苦手な人だ…
金槌のスピードはもう目にもとまらないくらいになっている。
でも、当たらない。
たぶん、当たるまで振り続けるんだと思う。
もうそろそろ動かなくても幽霊を倒せるくらいに金槌は長くなっている。
幽霊が井戸から飛び出す。
その瞬間!!
愛莉さんが金槌を一閃させる。
「レベル6!!
ジ・エンドだよっ」
愛莉さんが叫ぶ。
そのとたん。
4つの井戸が同時に破壊される…
戻れない幽霊は立ち往生する。
その一瞬の隙をついて愛莉さんが金槌を振る。
そのヘッドが幽霊をジャストミートする。
空高く吹っ飛ぶ幽霊…
青空の中へだんだん吸い込まれるように小さくなっていく。
そして、豆粒になって…
わたしたちの視界から消滅した。