26 波動拳
「でも…
なんとかしなきゃ」
愛莉さんが心配そうに金槌の柄を握り締める。
「今、考えてるから…」
美那子さんも光弾を作り出す。
でも、まだ手の上に乗せて考えている。
「もう、固まりました。
モニュメントの完成です!」
ドクター空知だけが上機嫌だ。
うつむいていた胡桃が顔を上げる。
絶望……
ううん、違う。
いつもの胡桃と同じ、いたずらっぽい微笑み。
「そろそろかなっ」
ドクター空知は胡桃を振り返る。
「うん、いい感じっ」
「何が…だ」
「うん、固まり方っ」
「もう、抜け出せまい
それだけ固まれば…」
「じゃあ、そろそろ行くよっ」
「どっかぁぁあぁぁん!」
胡桃が叫ぶ。
そのとたん壁が砕け散る。
わたしもだけど、
空知の驚いた表情。
何が起きたかわかんない!
パタパタと服の埃をはらう胡桃。
「秘技、波動拳!
壁が十分に固まるまで時間がかかったけどね」
そう、前に練習してた技。
格闘全般に通じている胡桃。
ピタッと壁に手をつけて、
手の平から波動を出すって…
間合いがゼロからでも相手を倒せるって言ってたけど…
ここで使えるってすごいかも…
とりあえず、
胡桃たちの前は開ける…
「次に行こうかっ」
愛利さんが歯を見せて微笑む。
それにみんな頷いて、前に向けて歩き出した。