22 武蔵
麻衣さんと希美が階段を上がると
部屋の中央に大きな男が座っている。
ボロボロの裃と袴。
後ろで無造作にくくったような髷。
そして、その座っているだけなのに、すごい殺気みたいなものをまとっている。
「ここがゴールね」
麻衣さんが言う。
でも、この男が最終関門だって見ただけでわかる。
ラスボスの貫禄を持っている。
「ああ…
ただ…
俺を倒せば…
だ…」
ゆっくりと立ち上がる。
希美が大剣を構える。
今にも飛び出しそうになって…
でも、麻衣さんがそれを静止する。
今度は私の番だよって感じで…
麻衣さんが木刀を構える。
それに応じるように、男がゆっくりと刀を抜く。
右手に長い刀。
それだけじゃない。
左手で脇差を抜く。
2刀流の構え。
「俺は武蔵。
空知という男に呼び出された。
気にくわねぇんだがな。
すげえ強い奴と戦わせてくれるらしいんでな」
ギラリとした目で微笑みながら、刀をゆっくりとまた鞘に収める。
そして、軽くため息をつく。
「ここで待っていればということだったんだがな。
女子供を斬る趣味はないんでな…
行きなっ…」
「そうなんだっ。
じゃあ、行かせてもらうね」
麻衣さんは前に進む。
後ろの希美は構えを解かないまま…
武蔵と麻衣さんがすれ違う瞬間。
武蔵が長刀の柄に手をかける。
その手を素早く押えて刀を抜けないようにする麻衣さん。
「ハハハハハ。
やっぱりお前らか。
すっげえ強い奴と言うのは…
気が変わった。
ここは通さないぜ」
素早く麻衣さんから離れる。
間合いをおきながら、刀を抜く。
2刀流の構え。
「しかたないわね。
相手するよ」
麻衣さんも木刀を上段に構える。
背筋のピンと伸びた隙のない構え。
じりじりと間合いをつめる武蔵。
そして、武蔵の動きにあわせて向きを変える麻衣さん。
麻衣さんの木刀が青白い光をまとい始める。
やぁぁぁ!
気合い!
そして正眼から武蔵の剣が横になぐ。
それを受け止める麻衣さん。
木刀と日本刀が火花を散らすくらいに激しく衝突する。
麻衣さんのオーラをまとった刀は鋼鉄以上の強度をもつ。
2つの剣は交差したまま静止する。
その姿勢のまま、
武蔵はもう一方の刀で突きを繰り出す。
思わず後ろに飛びのく麻衣さん。
「フフ…
五分の力だ。
確かに強いが…
俺の敵ではない!」
再び刀を振り下ろす。
今度は上段から…
麻衣さんはその攻撃を正面から木刀で受け止めた。