14 鎧竜
「次はわたしの番だねっ」
次のゲートの入り口で沙耶香さんが前に出る。
「じゃあ、頼んだよっ。
わたしはちょっと体力回復してるから…
次は、沙織を出すわけにもいかないしね。
あいつだって、同じ人が出てはいけないとは言ってないし」
睦美さんはその場に座り込む。
「大丈夫だよ。
軽く片付けてくるから。
連戦もOKだよ」
沙耶香さんが片目をつむる。
「わたしももう行けますよ」
「ああ、頼むよ」
栞が言うと沙耶香さんが栞の頭を撫でて、
ゲートの中に…
その後ろでしまるシャッター…
でも、沙耶香さんの場合は何の心配もない。
ブラックホール…
反則なくらい強すぎる技…
沙耶香さんの冷静な判断…
どこをとっても穴は見当たらない…
どう考えても無敵だった。
鞭を軽く一振り…
黒のロングドレス…
どこからみても女王の風格…
その前に現れるドクター空知。
こいつも沙耶香さんの風格にひるまない。
いわば、王の風格を持っている。
「さて…
つぎはあなたですか?
強敵ですね…
しかし!」
しばらく間をあける。
まるで舞台役者のせりふみたいに…
「その技には重大な欠点があるんですよ」
むこうの方に砂埃が立ち黒いものが近づいてくる。
まるで小山のような…
「トリケラトプス。
鎧竜です」
そう、固い装甲に覆われた巨大な体。
鞭なんて効きそうもない。
たぶん鎧を砕けるのは、希美の大剣か、愛莉さんの鉄槌だけ。
「弱点?
教えてくれる?
わたしにはわかんないけど…」
あくまで落ち着いている沙耶香さん…
リーダーの美那子さんとは違って氷のように冷静。
影のリーダーを呼ばれるのもわかる気がする。
「それはね。
ブラックホールにあります。
出さないんですかブラックホールを…」
そういえばいつものようにブラックホールはまだ出していない。
「ええ…
無駄だからね」
「そう、こんな大きな魔獣を吸い込むブラックホール。
そんなもの出したらどうなるか?
先にあなたが吸い込まれてしまいますよね」
「そうだね」
気のない返事をする。
でも、ブラックホールなしで勝てるの???
突進してくる鎧竜…
まるで闘牛のように一直線に…
さやかさんは軽くかわす…
それも闘牛士みたい…
通り過ぎた鎧竜はすぐにとまれない…
かなり過ぎたところで止まり方向を変える…
またこちらに顔を向ける…
また突進してくる…
軽くかわすさやかさん…
でも今度はすぐに止まって方向を変える…
そうさっきみたいな突進ではない…
踏み潰すだけでOKなんだから…
力を抜いたんだ…
そう、これはシュミレーター…
本物と違って学習能力を持つ。
壁のそばに移動している沙耶香さん…
たぶん、さっきの睦美さんみたいに…
魔獣を壁に衝突させようとしてたんだ。
でも…
魔獣の作戦は変わったんだから…
思いっきりの突進は期待できない…
逆に壁は沙耶香さんの逃げ場を奪ってしまう…
でも、角に向かって鞭を振る…
角に鞭が巻きつく…
それを引っ張って飛ぶ…
高く…
鎧竜を超えて後ろに着地…
でも、このままじゃ…
次には同じ手は通用しない…
その沙耶香さんの方にまた鎧竜が突進を始めた。