13 魔女の作法
「しかたないなぁ」
めんどくさそうに睦美さんが前に出る。
「やっぱり降参ですか?
まあ、女性がつぶされるのを見るのは私の趣味ではありません」
空知が言う。
「降参???
そんなわけないじゃん」
半目がちに睦美さんは空知を見る。
「そろそろ本気だすよってこと…
イン・ザ・ワンダーランド!!!!」
睦美さんがロッドを振り上げる。
あたりが突然、闇につつまれる…
でも魔獣には効かないはず???
「これはすごいですね。
しかし、無意味です…」
「どうかなぁ…」
睦美さんがニヤッと笑う。
そこに、また翼竜の攻撃…
睦美さんがロッドをバトンのように廻す。
だんだん長くなるロッド…
そして、それは箒に形を変える。
「FAKE!
ただのマヤカシです…」
「そうだよっ。
魔女のやることはマヤカシ。
でもねっ。
マヤカシでも、このバカ鳥を焼き鳥にすることはできるんだよ」
箒にまたがる睦美さん。
ぎりぎりのところで翼竜を避けて空に舞い上がる。
「ほぅ。
飛べるんですね。
しかし、機械の精神を惑わすことはできせんよ」
「わたしの魔法は空間魔法なんだよ。
空間を変化させることはできるんだよ。
わたしが飛べるようにね」
クルクルと翼竜をからかうように飛ぶ。
それを追いかける翼竜。
でも、睦美さんみたいに小回りは効かない。
右に左に避ける睦美さんの動きにかなり遅れての動き。
「ばーか」
急にぴたっと止まって振り返る睦美さん。
そのまま、急上昇を始める。
魔獣もその動きに従う。
すぐに追いつかれるが、横に避けたりしない。
時々繰り出される嘴を最小の動きで避けるだけ。
「きゃははははは」
スリルを楽しむかのように、歓声をあげながら睦美さんが飛ぶ。
だんだん高くまであがっていく。
わかった。
睦美さんの作戦。
たぶん魔獣シュミレーターの制御できる距離は1キロくらい…
それを超えるまで飛び上がるつもりだ。
でも、ある程度の高さで止まって…
魔獣を待つ…
魔獣の嘴が目の前に迫ったとたん…
いきなり急降下を始める・・・・
まるでフリーフォールを楽しむかのようにすごいスピードで降下する。
それを追いかける魔獣・・・・
でも、ぎりぎりのところで届かない・・・・
地面・・・・
いえ・・・・
沙耶香さんや沙織さんの方へ・・・・
だんだんと近づいていく・・・・
ぶつかる!!!!!
そうシャッターにぶつかるすぐ手前で、また急上昇・・・
それも壁に沿って直角に・・・・
魔獣は????
巨体はそんなに小回りが効かない・・・・
壁全体が揺れるほどの大きな音・・・・
見事に顔をシャッターに突っ込んでる・・・・
そして、そのシャッターには高圧電流・・・
バチバチという音・・・・
魔獣は咆哮する・・・・
でも、壁から離れることができない・・・・
電流が核を捕らえたのか。
急に粒子に弾けて消えてしまう・・・・
睦美さんはみんなに左手親指を上げて、
そのまま、空で2回転宙返りをした。