12 翼竜
遠くの空から黒いものが近づいてくる。
鳥???
違う…
もっと大きなもの…
ゆっくりと翼を上下に動かしながら…
とがった嘴・・・
近づいてくるに従ってその巨大さがわかる…
図鑑でみた翼竜プテラノドン…
それにそっくりの姿だった。
いきなり空間にドクター空知が現れる。
その傍らに降り立つ翼竜…
すごい風圧が睦美さんを襲う…
髪の毛が舞い上がり、服がはためく…
前を向いてられないで横を向く睦美さん…
「さて、今度はさっきのようにいきませんよ」
作り笑いをする空知。
「睦美さんでしたっけ?
あなたもご存知でしょう。
自分の弱点を…」
「わかんないなぁ。
魔女に弱点なんてないんだけど…」
睦美さんは空知を睨みつける。
その睦美さんを翼竜の嘴が襲う。
さっきの恐竜の緩慢な動きではない。
素早く転がってよける睦美さん。
「さて、ワンダーランドはどうしたんです?」
でも睦美さんはロッドを振り上げない。
どうして???
「あなたの技は人間の精神に作用するもの。
あくまで、魔獣使いやウィザードがいないと意味がありません。
確かに、睦美さんは高い身体能力をお持ちだ。
しかし、特別な技なしに空を飛ぶ竜を倒せるわけがありません」
睦美さんは、黙ったまま空知を睨みつける。
そうなの???
ドクター空知の言うとおりなの????
そういえば、睦美さんがシュミレーターでトレーニングしてるの見たことないし。
みんな一緒に戦うときは最強すぎだけど…
一人だけじゃどうしようもないじゃん。
でも、睦美さん、自分から出て行ったし、
なんか策があるのかも…
次々に繰り出される翼竜の攻撃をかわすだけ…
睦美さんの手には短いロッドしかない…
どう考えても魔獣の核は壊せない。
「そろそろ、降参しますか?」
空知が余裕たっぷりに言う。
何も言わず空知をにらみつけるだけの睦美さん。
空知の言うことって本当なの???
また翼竜のくちばしが睦美さんを襲う。
その時を狙って、飛び上がり目を狙って蹴りを入れる。
でもそんな攻撃は通じない。
はじかれるだけ…
睦美さんの小さな身体が地面を転がる。
でも受身をとってすぐに立ち上がる。
「無理ですよ。
そんな攻撃。
ハハハハハハ…」
空知の高らかな笑いが空に響いた。