10 メテオフォール
「栞っ!」
睦美さんがシャッターを掴む。
「あぁっ」
でもすぐに離して、自分の手を見る。
「電流流されているよっ」
睦美さんの残念そうな心配した顔。
「自分でなんとかしてもらうしかないねっ。
栞は幼くってもLOVE WITCHESなんだからねっ」
沙耶香さんが睦美さんを諭す。
「うん、でも汚いよ。
こんなの…
もし最初から知ってたら…
私が行ってたのに…」
「まあ、みてなっ。
栞の目…
まだ、死んでないよっ」
沙耶香さんが栞を見る。
大丈夫って言うように手を上げる。
「栞っ…」
あくまで心配そうな睦美さん。
「リーダーはメンバーを信頼するしかないじゃん。
見届けてやろうよ…」
睦美さんの肩に沙耶香さんが手を置く。
「うん、がんばれっ。栞っ」
その声に答えるように栞が立ち上がる。
フラフラだけど…
「もう、ドッペルゲンガーは無理でしょう。
あと…残されているのは…
洗面器を落とす技くらいですよね…
恐竜に通用しますかね?
降参してもいいんですよ…
死ぬのは同じですが、アナザーワールドで楽に死なせてあげましょう。
先輩たちと一緒にね」
勝ち誇ったように饒舌になる空知。
でも、栞は横に首を振る。
「スチールレインっ!」
幼い声で天を指差す。
金の洗面器が落ちてきて、恐竜の頭に当たる。
カコーンって間抜けな音がする。
でも、恐竜には一切通じない。
「スチールレインっ!!!」
また同じ技…
さっきと寸分違わず同じところに洗面器は落ちる。
でも、全然効いてない…
っていうか…
効くわけがない。
「ふぅん。
そういうことか」
睦美さんがつぶやいてニコって微笑む。
再び、栞が天に向かって手を上げる。
「メテオ・フォール」
えっ、スチールレインじゃないの????
上を見ると、さっきの洗面器の代わりに大きな石…
それも赤く焼けている…
太古の恐竜を滅ぼした原因のひとつといわれる隕石の落下…
それがさっきの洗面器が落ちたところに正確に落ちてくる…
恐竜は動かない…
そう、その巨大な身体はその隕石を認めてから逃げるまでにかなりの時間を要する。
逃げ遅れた恐竜の頭を、その隕石落下が直撃…
そして、次の瞬間…
恐竜は、大きく吼え、そのまま粒子となって消えうせた。