15 30対3?
「ふぅん、やるのか?
いじめられっ子と転校生で」
新道はわたしたちを睨む。
新しいガムを口の中に放り込む。
でも、こちらには透明の巨人もいる…
本体はしょぼいにしても、半分くらいはなんとかなるよ。
「ねえ、正憲くん…
透明の巨人でやつらをなぎ倒してみたら?」
「うーん…でもできないよ」
「どうして?
勇気だしてよ。
君が彼らを倒してるの。
麻耶リンのためでしょ?
こうなったら、やるっきゃないよ」
そう、隣どおしの正憲くんは麻耶に惚れてるんだって思う。
だから、新道に目をつけられて…
たぶん、そう…
「うん、でもやつらを倒せないのは、ちょっと違うんだ。
巨人の足元を見てみなよ」
わたしは正憲の視線の先を見る…
あぁっ…
巨人の足はもう白いもので包まれている…
たぶん新道のガムだ…
いつの間にか巨人の足を固定している。
馬鹿だけど、わたしが正憲を探している隙に巨人を探し出したんだ。
こうなると、巨人の位置は特定できるし、巨人は動けない。
ガムにつつまれた両足だけが見えている。
透明といっても実体はあるんだ…
じゃあ、わたしの力だけでやらなきゃだめなの???
まあ、しゃーないかぁ…
その時、
麻耶リンがわたしの横に立つ。
「正憲はわたしの幼馴染だよっ。
それでも、やるならわたしが相手するよっ」
新道を睨む。
「麻耶がいうなら…
って言いたいところだが、
俺もよ。
連れがやられて、引き下がるわけにはいかないんだよ」
ガムヨーヨーをこっちに投げる…
でも簡単によける。
威力がすごいというより、汚いって感じ。
これに絡み取られると、この状況じゃ終わりだ。
慎重に新道の動きを目で追う。他のやつらはまず大丈夫。
「おまえら。
やっちまいなっ」
部下をけしかける新道。
新道の部下の男子たちが、こっちに走ってくる。
やっぱこいつらを倒しながら、新道に注意を払うのはすこし辛いかも。
30対3…
うぅん、ひとりは使いものにならないから…
30対2か…
まあ、なんとかなるよ。
そういうふうに、わたしは麻耶リンと顔を見合わせて微笑んだ。