12 バカキャラっ
「だからさぁ。
普通に考えて、そんなのありえないっしょ」
麻耶リンの部屋で諭されるわたし。
「うんうん」
「でもさぁ。それしか考えられないよ」
綿密に組み立てられた、わたしの推理は完璧だと思う。
「美月…
それじゃあね」
敬子が新聞を広げる。
事件の記事のところ…
殺人事件とか載ってるけど…
「どんな事件も透明の巨人が犯人なの?」
「あっ・・・・」
そういわれれば、透明の巨人がいたら、どんな殺人事件も可能かもしんない。
「それにねっ。
そんな力あったら、コソコソと隠れて一人づつなんてすると思う?」
麻耶リンが追い討ちをかける。
「……」
言葉が出ない。
「回りくどいことしないで、いきなり新道たちを叩きのめすっしょ」
そういわれれば…考えてなかった。
わたしの推理は3分で論破されてしまう…
「まあ、まえから思ってたけど、美月がバカなのはわかったから…」
美樹の哀れむような上から目線の目…
わたしは自分の推理の穴を探す。
名探偵、美月ちゃんとしてはあきらめるわけにはいかない。
たぶん、大体は合ってるんだ…あとは推理の穴をふさぐだけ…
ひらめいたっ。ピンク色の脳細胞はすぐに最適解をはじき出す。
巨人だから、だめなんじゃん。
これで完璧じゃん。
これが、精密推理ってやつ?
「あのぅ。空を飛ぶ透明の魔獣っていうのはどう?」
しばらく静寂が流れる。
みんなわたしの顔を見る。
なんか、たぶん、そんな方法があったかみたいな…驚いた顔…精密推理に対する尊敬の眼差しってやつ…
やっぱ、わたしって凄いかも。
でもすぐにみんなわたしから目を反らす。
「さぁ、お菓子たべよっ。たくさんあるからね」
「うんうん」
「美月もバカなことを言ってないで食べよっ」
わたしがこの学校でバカキャラであることが確定した瞬間だった。