10 七不思議
「あーあ、最悪っ!
あんなやつがこの学校のヘッドなんて…」
麻耶リンがため息をつく。
「裕也がしめてくれればいいのに…」
今日は駅前のドーナッツ店に来ていた。
「でもさ。
新道のチームがやられてるの。
本当にあいつらだったのかな」
わたしは疑問を口にする。
だって、なんか違うくない?
やられてるの新道の部下だけじゃないみたいだし、
あいつらだったらそんな回りくどいことするかなぁ。
それに…
あの時聞こえた声…
やっちゃえ、潰しあえ…
なんか真実は別のところにあるような気がする。
「あいつら以外に考えられないよ。」
麻耶リンもやっぱあいつらと同じ、短絡的思考・・・
これで事件が終わるんなら、麻耶リンの考えでいいと思う。
でも、なんか悪い予感がする。
「で、新道の部下ってどういう風にやられたの?」
「んー…確か…」
「あっ、一人は屋上から植木鉢が落ちてきて怪我…
それから、プールで溺れかけてたとこを発見…
それと…
立花や西条の部下は
ひとり…裏山の大きな木に引っ掛けられてた。
あと、4階のトイレで倒れて人もいるみたい」
噂に強い美樹が教えてくれる。
「でもさぁ。それって七不思議じゃん」
敬子が重大なことに気がついたように。
「うん、確かにね。魔獣学園の七不思議だね」
「屋上の影、プールの亡霊、裏山の巨人、トイレの女…」
「うんうん・・・」
「でも、4つだけじゃん。あとはわかんないの?」
「えっと、校舎裏の動く石造!」
「うん、それだっ!」
「でも、それじゃぁ5不思議じゃん」
「これだけだったと思うよっ。だってどこの学校もこんなもんだよ。
7つ全部揃ってるほうが珍しいっていうよ。
うちら、新設校だし、こんなもんじゃないかなぁ」
えっ。7不思議ってどこの学校にもあるものなの???
まさか、学校に必ず必要とか…
「でもさぁ。この七不思議ってみんな気づいてるの?」
「うぅん、わたしも今気づいただけだよ。
みんなそんなこと言ってないし…」
推理小説とかに数え歌に見立てるとかあるけど、だれも気づいてないんじゃ全然意味ないじゃん!
ただでさえ、みんなバカなんだから…
それにしても、だれも気づいてないなんて…
まあ、とりあえず…
犯人はまわりくどいやつってことがわかった。
新道のまわりの不良たちではなさそう。
あと、新道に恨みもってそうなのは…
あぁっ。
いたっ。
わたしの席の一輪挿し。
あれっって???
確か、新道にいじめられて不登校になったって。
「あのさぁ。例の不登校の子ってどういう感じ?」
いちばん物知りそうな美樹に尋ねる。
「うーん。なんかすごい存在薄い子だったよね」
「どこに住んでるかわかんない?」
「そこまではわかんないよ」
そうだよねっ。
影の薄い子だったって言うし。
そのわたしたちに、麻耶が小さく手を上げる。
「どうしたの?麻耶リン?」
「わたし知ってるよ。
幼馴染だし…
正憲っていうの。いじめられっ子っていうのとはちょっと違うんだけどね。
入学の時からうちと仲良くしてたのが、立花の気に入らなかったみたいで…
なんか、うちらって学園のアイドルみたいになっちゃったからさぁ。
正憲も正憲で、それに逆らうっていうか、立花のいうことを聞かなかったからさぁ」
「えーーーーっ。うちらも知らなかったよ」
「実は今日帰りに寄ろうと思ってたんだ。
プリントとか渡さなきゃだし。
正憲があんなになったのもわたしのせいだし…
美月…いっしょに来てくれる?
祐也が来てからいじめとかなくなってるし、学校来るように言って欲しいんだ。
美月って、バカだけど、うちらとちがって真面目そうに見えるし。
たぶん、正憲が新道たちをやったのとは違うと思うけどね」
麻耶リンの爆弾発言に顔を見合わせるわたしたち。
わたしたちはトレイを片付けて、麻耶リンの家に向かった。