05 きもい?
裕也の机に自分の机をくっつける。
「教科書見せてねっ」
裕也は返事もしない。
でも、教科書をわたしの方へちょっとずらしてくれる。
絶対照れてるだけ・・・
なんか後ろから殺人的な視線。
わたしは振り返って、微笑んでやる。
まあ、次の休憩時間も絡んでくるだろうけど、
裕也の近くにいればあいつら手を出せない・・・・
なんかゴリラちゃんは男子としゃべってる。
敵意いっぱいの顔で・・・
あいつらをけしかけようっていうの?
とりあえず、授業に集中・・・・
英語なんだけど・・・・
先生が自分で教科書を読んで、
自分で解説してるだけ・・・
たぶん、生徒が聞いてるかなんて関係なし。
っていうかぁ・・・
誰も聞いてないってわかってる。
でも、こんな授業じゃあ。
成績あがるわけないよ。
裕也は完全寝てるし・・・
そういえばさっきの時間も・・・
こいつ気持ちよさそうに・・・
わたしなんか毎日4時間くらいしか寝られないんだよ。
裕也を睨む。
でも、その綺麗な顔にドキッとする。
まあ、イケメンの部類だし・・・
無愛想だけど、許してやるか・・・
わたしが裕也の寝顔を見ているうちに授業が終わってしまう。
たぶん、このままじゃ、わたし・・
バカになっていく一方だと思う・・・・
まあ、どうでもいいやモードになってしまう。
休憩時間になると、
裕也が起きて立ち上がる。
「どこ行くの?わたしも行くっ」
わたしを見下ろす裕也。
まあ、あのメンバーでは大きいほうじゃないけど、170㎝くらいの身長。
笑顔で裕也を見上げる。
「おまえさぁ・・・」
初めて裕也の声を聞く。
「キモイよ・・・
眼鏡ずれすぎだし・・・
変な臭いするし・・・」
えっ・・・
なんて・・・・
なんていったの・・・
わかんない???
「だから、キモいしウザいよ!」
プシューって身体の力が抜けていく。
そんな言葉、言われたことないから・・・
どう切り返していいかわかんないよ・・・
キモイ???
ウザイ???
眼鏡もダテだし、
香水も目立たなくするためだし・・・・
でも、どうでもいいや・・・
魂の抜け殻みたいになっているわたしを背に
裕也は教室を出て行った。
「ちょっと来てくれる」
わたしの肩を叩く手・・・
ふりかえるわたしの目の前に
笑いをこらえるのに必死なゴリラちゃんたちの顔があった。