03 転校
「転校生の山本美月さんです・・・・」
わたしは先生に紹介される。
「あの、山本美月です。
よろしくお願いします」
って誰も聞いてないジャン。
これって詐欺だよ。
だって、パンフレットには・・・・
さわやかな男子と女子・・・・
緑のキャンバス・・・
キレイな校舎・・・・
ぜったいありえない!!
1時間目だっていうのに人がまばらな教室・・・
床はゴミだらけだし・・・
後ろの方では女子が数人おしゃべりの真っ最中・・・
それも全員フルメイクだし、
髪はオレンジ色とか白とかピンクとか・・・
男子も不良っぽいやつばっか・・・
「山本さんの席は・・・」
先生が教室を見回す・・・・
「そこ開いてるぜ・・・」
真ん中くらいの席の男子が指をさす・・・
「じゃあ・・・そこで・・・」
「えっ・・・・」
なんか机の上に一輪挿し・・・
それに花が生けてある・・・
その花はしおれてドライフラワーになってるし・・・・
でも、これって・・・・
まさか・・・
ありえないよぉぉぉぉ!!!
普通さぁ。
正体隠すために眼鏡っ子してるし、
なんか研究所の人に渡された潜入捜査用の気配を消す香水とかつけてるにしても。
でも!
こんなかわいい子転校してきたら・・・
男子がざわめいて、
女子は羨望と嫉妬の眼差して見て、
とかあるでしょ・・・
でも、みんなシカトだよっ。
普通、ありえないよ・・・
その上、机の上に一輪挿しって・・・・
わたしはツカツカとかかとで歩いて、
その席まで行く。
そして、隣で寝ている金髪男子の机の上にその一輪挿しを叩きつける・・・
腕を組んで座る・・・
どんなもんだい!って感じで!!
ちょっとクラスが静まり返る。
そして、隣の金髪も顔を上げる・・・
あ~~~っ!
こいつ、大和のとこでギター弾いてたやつじゃん。
確かユウヤとか言って・・・
「よぉ」
寝ぼけまなこでわたしに挨拶。
「な・・・なんで・・・あんたがこんなところに・・・」
「一ヶ月前に転校してきた」
無愛想に答える。
一輪挿しをわたしの机に戻しながら・・・
「あんたねぇ」
わたしたちの会話は授業終了のチャイムの音にさえぎられた。