27 風神シルフィード
緑の服の少年・・・・
わたしより少し年下・・・
中学生くらいの子・・・
まるで、映画で見たピーターパンのような・・・
空にさかさまに浮かんでわたしの顔を覗き込む。
「風神シルフィード???」
「うん、シルフでいいよ」
あどけない微笑みを浮かべる。
あんま・・・・強そうじゃ・・・ない・・・
でも、トールもそうだし・・・・
たぶん、すごい力を持ってるんだ・・・
「なに?そいつ」
羅刹女がシルフに気づく。
「あっ、俺・・・シルフだよ」
羅刹女のまわりを飛び回る・・・・
まるで、風のような動き・・・・
くるくるとまわりながら飛ぶ・・・
羅刹女はいらいらしたように
芭蕉扇で扇ぐ・・・
シルフの飛び方・・・・
まるで、からかわれてるように思っちゃうよ・・・
絶対逆効果っ・・・・
シルフは全然そんなこと考えてない・・・
風に乗り、さっきより舞いかたが激しくなる・・・・
「おっもしれえ・・・ハハハハ・・・」
わたしたちはもう壁に張り付いていることしかできない・・・・
その壁さえしなるような風圧なのに・・・・
「ねぇ・・・もっと扇いでよ・・・」
羅刹女の近くに行くとあおるようなことを言う・・・
ばかっ・・・これ以上やられたら・・・
わたしたちがふっとばされちゃうよ・・・・
「吹き飛ばしてやる!」
怒り心頭の羅刹女・・・・
大きく扇で扇ごうとする・・・
やばいよっ・・・・
その正面にシルフが舞い降りる・・・・
「ねぇ・・・風はね・・・友達だよっ・・・」
シルフは両手を開いて重ねる・・・
「吹き飛べぇぇ!!!!」
羅刹女はかすれるくらいの声で叫ぶ・・・・
大きく芭蕉扇を振る・・・
でも、風は来ない・・・
シルフの手のひらに吸い込まれるみたいに消えていく・・・
「ばかなっ。
これは宝具だよ・・・・」
何度も何度も扇ぐ羅刹女・・・
でも、結果は同じ・・・・
「風は操るものじゃないよ。」
シルフは羅刹女に手のひらをかざす・・・
「じゃあ、そろそろ返すねっ・・・」
シルフの手のひらから、風が吹き出す・・・・
それも、集中的に羅刹女を狙って・・・・
「きゃぁぁぁ」
羅刹女の悲鳴・・・
一瞬で壁まで吹き飛ばされて激突する・・・・
「それじゃあ、風使いになんてなれないね」
シルフは笑って、また空に舞い上がった・・・・