03
「海崎美月です。よろしくお願いします。」
脚を組んで座ってる沙耶香さんの前で頭を下げる。
正直言って、恐いくらいの迫力。
何も言わずに、わたしをじっと見ているだけ。
愛莉さんは心配そうにわたしと沙耶香さんを交互に見る。
そういえば、研修の時に聞いた話。
沙耶香さんに気に入られなかった子。
3ヶ月で脱退したとか。
戦いの時助けてもらえず、殉職したとか。
大丈夫なのかな。
絶対、ここって場違いな感じするし。
そして、沙耶香さんが微笑む。
それにつられてわたしも微笑む。
ひきつってるけど。
「珍しいわね。普通の子がうちのユニットに来るなんて。」
「わたしも普通だよ。」
愛莉さんがふくれる。
一瞬で空気がかわったみたいになる。
「ごめん、ごめん。ここ、バラエティ組だから。」
沙耶香さんが大きく笑う。
もしかして思っていたのと違うのかも。
わたしも、ちょっとリラックスして。
「わたし、沙耶香。一応、このユニットのリーダー。あなたのことは安城から聞いてるわ。よろしくね。」
ゆっくりと手を差し出す。
わたしはその手を握って、微笑んだ。
そういえば、沙耶香さんってすごく歌が上手いんだった。
とくにバラード・・・
コンサートの中盤にソロで歌うのを何度も聞いたことがある。
アルバムとかにも必ず一曲は入っている。
基本的には卑弥香さんが作詞とか作曲とかしてるけど・・・
沙耶香さんも何曲か書いている。
そういう人と一緒に仕事できるんだって、
すごく感動かも。
それと愛莉さんも・・・・
バカだとか言われてるけど、踊りとかすごいし・・・・
すごい綺麗だし、
あこがれてる友達もたくさんいた。
だんだん気持ちが切り替わってくるわたし。
現金なもんだって自分でも思う。
そのとき、ふいに沙耶香さんの携帯が鳴る。
題名は思い出せないけど、クラシックの曲。
髪の毛をかきあげて、携帯を耳に当てる。
「はい・・・・」
沙耶香さんの声・・・・
愛利さんとわたしの携帯も鳴る。
メール着信の音楽。
もちろん、ラブウィッチーズの新曲。
まだ、ファンの気分が抜けてないわたし。
携帯を開くと、本部からのメール。
指令内容が簡潔に書いてある。
『ユニット4出動要請
夢の原公園
Enamy 5
魔獣使い 4
ウイザート1』
それからエナミーの詳細が添付してある。
写真を見ると、
オタクっっぽい人ばかり。
その中でウィザードの人。
ニュースとかで見たことある。
たしか、雷人 桂木とか言って。
なんか、ウィッチーズの大ファンで、とくに麻衣さんの。
会うためにわざと事件を起こしたりしてるって。
「仕事、久しぶりですねっ」
わたしは緊張してるのに、嬉しそうに言う愛莉先輩・・・
「そうだね。あんまりおよびがかからないよね」
「沙耶香さんがむちゃくちゃするからです」
「いや、愛莉も切れたら何するかわかんないし」
「危険人物ですねっ。わたしたち」
そういえば、このユニットいちばんやばいって聞いたことある。
あんま戦闘シーンのDVDとかない・・・・
確か・・・・
愛莉さんは大金槌が武器・・・
沙耶香さんは黒い鞭・・・・
「やつら、この前、一般人まきこんでるし。殲滅オッケーだって」
「うんうん」
嬉しそうに話す先輩たち・・・・
殲滅って・・・・
「じゃあ、いこっか」
わたしは立ち上がる先輩たちに付いて部屋を出た。