31 脱出(1)
とりあえず、逃げなきゃ。
べつに監獄とかに入れられているわけじゃないけど…
さっき目覚めたスイートルーム。
ちょっと、入口を開けてみたけれど、護衛の人に押し戻された。
ときどき部屋に入ってくるのは、メイド服の女の人だけ…
魔獣王の手先だけあって、そのメイドさんも普通じゃない気を感じる。
たぶん、LOVE★WITCHESのメンバー級の力を持つ。
護衛の人もそう。
たぶん、十二使徒とかいう人たちの一人。
ただ、わたしにもカードはある。正憲だ。
いくら強くなったっていっても、あの正憲なら付け入る隙はある。
あの子はやさしい子だし、話せばわかるって思っている。
まず、ここをどうやって出るかだ。
脱出ゲームなら、なんかヒントがあるんだけど…
これは現実。
そんな思い通りにいくわけない。
自分の知恵だけがたより…
そして、それはわたしの得意分野。
みんな、バカバカ言うけど、アイドルやってなければ名探偵とかになってたはずだ。
窓は、すこしだけ回転するようになっている。
高層ビルとかで、外に出られないようにする窓。
わたしの頭脳はフル回転を始める。
いちばん確実な逃げる方法を考える。
もう、人間コンピューターと言ってもいいかも。わたしの頭脳。
魔猫ルシフェルを使って、壁ごとぶっ飛ばす。
魔王城にダメージを与えられるし一石二鳥。
「嫌だにゃ」
「えっ?」
「めんどくさいにゃ」
「でも…」
「他のやつらにやらせるにゃ」
じゃあ、トールだ。
雷で壁ごとぶっ飛ばす。
「無理だよ。ここは最上階じゃないし、雷って曲げるの難しいんだよ。
それに、壁に当たったって美月も無事ですまないとおもうよ。
俺は大丈夫だけどね。
やってみる?」
わたしは黄色い球の前で左右に顔を振る。
シルフ…風で壁を中から壊す。
それから、シルフと風に乗って飛んで逃げる。
「うん、でも石壁を壊すってことは、この部屋の中はすごいことになるよ。
美月がバラバラになっちゃうくらいの風力だからね」
これもやばい。
じゃあ、じゃあ、剣王ゼノン…
なんでも切れる刃で壁を切る。
「剣王ゼノンを召喚する!」
黒い球が剣の形に変化してわたしの手に収まる。
よーし、これで窓を切る。
窓に向かって剣を構える。いけーっ!
ガシャン。大きな音がなって、分厚いガラスを大ぶりな西洋剣が貫いた。
そのとたん、部屋のドアが勢いよく開けられて、その中央にあの美人メイドが西洋剣を構えて立っていた。