28 魔獣王との対面
「おめざめのようですね…」
わたしは、うっすらと目を開ける。
周りは、おちついたクラシック調の部屋。
まるで、一流ホテルのスウィートルームのような…
天蓋付きの広いベットで目覚める。
目の前には、メイド服の女性、あの鉄仮面の騎士の魔獣を使う男、それからストレートの長髪でマントを羽織った男。
わたしはやつらの捕虜になったことを理解する。
生きてる…
わたしは、もしかして人質になったのかも…
とりあえず、逃げる…それしかない…もし逃げられないのなら、みんなの迷惑になるわけにはいかない。
そのときは…
ベットから起き上がる。警戒の目で彼らを見る。
「初めまして、姫。
わたしが魔獣王。手荒なお迎えになったことをお詫びします」
「姫って」
「そう、あなたは魔獣の姫。そして、巫女」
「そんなのなった覚えはないわよ」
「覚えていないんですか?まあ、あの時あなたは小さかったですから、仕方ないかもしれませんね。
マグナからも何か聞いていませんか?
魔獣使いの国の話を」
「マグナ???」
「そう、あなたの母は魔獣使いの女王。魔界にて、結界を守っていた国の一族」
まるで、母からきいたおとぎ話の一節。
女王はすべてを生まれたばかりの子供に託して、自ら使い魔となる。
その後の物語は語られない。ひとりの騎士と侍従に守られて、その娘は逃げ延びたのかどうか。
それが、わたしなの???
「もう、結界を守っていた私たちの国はないんです。
結界は破られようとしている。もうすぐ、ゲート(門)が開く。地獄の門がね。
しかし、この国は魔獣使い、異能使いを排除する。
自分たちを超える力を持つ者に恐怖するだけ…
認めようとはしない」
「でも、わたしたちは…LOVE★WITCHESは…」
「たしかに、よくやっている。しかし、我々にさえ勝てない力。あまりにも微力。
ゲートが開くまでに間に合わない。
不毛の地から魔族が大量にやってくる。
それには、この国を変えなければならない」
「LOVE★WITCHESは最強だよ。そして、みんなに認められているの」
「しかし、小さな力だ。アイドルに軍としての動きはできない。
この国の上層部には、我々を使う力はない。せいぜい、責任逃れと自己保身の能力しかない。
そして、この国を変えるには、戦争か革命しかない」
「魔獣王は前回の魔獣戦争で負けたじゃん」
「そう、魔女たちの力にね」
「それじゃあ、LOVE★WITCHESにまかせりゃいいじゃん。
うちらが、魔族なんてやっつけてやるよ」
「そういう相手ではないです!今回も姫以外は、我々に歯も立ちませんでしたよ」
「嘘、美那子リーダーや愛梨さんまで…」
「正憲くんに軽くね」
「……」
正憲に…そんな…
「LOVE★WITCHESの中で、悪魔との戦いに必要なのは…姫と卑弥香さん、あの白魔女と黒魔女くらいですかね。
前回の戦争で、手を結ぶことも考えたのですが、無理でした。
考え方が違いすぎてね」
「でもでも、LOVE★WITCHESはみんなを守るためにがんばってるの」
「それは認めます。お遊びの戦いではそれでいいでしょう。
しかし、悪魔との戦いでは、そんなわけにはいかない。
わたしが宰相を務める姫の国は彼らに滅ぼされたんですよ」
「とにかく、わたしを帰して、あんたたちの言う姫としての命令よ」
「困りましたね。しかし、そのわがままは聞けないですね。
今の姫では、わたしにすら勝てません。まだ、すべての力を使えるわけではないですからね。
とりあえず、覚醒していただきます。
わがままはそれからにしてください。
それに、姫の力はそれだけじゃないんですよ」
「それだけじゃないって」
「姫は、気がついていないかもしれませんが…
この国に魔獣使いや魔法使いが現れたのはいつからかわかりますか?」
わたしは、首を横に振る。
「姫がこの国に来てからなのです。
その意味がわかりますか?
姫としての力が」
魔獣王は、衝撃的なことを言って、わたしに微笑みかけた。