27 美月の回想
私は東都の端の母子家庭で育った。
それと、中学にはいったときに、お母さんが本当のお母さんじゃないって知った…
って言うと、すごいかわいそうで悲惨な子みたいだけど、全然そんなことはない。
すごく愛されて育ったし、お母さんのことは本当のお母さんだと思っている。
なんか、遺産とかいうのがあって…セレブっていうことはないけど、貧乏ってこともなく…
学校でも、何も困ることなかったし…
まあ、お父さんがいないってことはあるんだけど…
それも、まっ、いいかって感じ…
別に、どうしてもいないといけないってもんでもないし…
お母さんさえいれば、それでhappyな子だった。
だけど、お母さんがわたしに禁止していることがひとつだけあった。
それは、この光球の力。
この力は物心ついたときから使えていた。
赤ちゃんの時から、光球を宙に並べて遊んでいたらしい。
この力を家の外で出してしまうとすごく怒られた。
まあ、怒られるのはその時だけ…あとは自由にのびのび育てられた。
わがままを言っても、笑って答えてくれた。
冗談ぽく「姫にはかなわないわ」とか言いながら…
やさしくて美人でわたしには自慢の母だった。
だから、LOVE★WITCHESに入るときはすごく反対された。
わたしも、力のおかげでみんなとあんまり遊べなかったから、テレビとネットだけが楽しみだった。
その中で特にはまったのが、LOVE★WITCHES。
私の夢は美那子先輩とかと一緒に戦うことになった。
その夢は簡単に諦められなかった。部屋に閉じこもって、お母さんに反抗した。
最終的には、お母さんが折れてくれたんだけど…
まあ、そこはいろいろあって、卑弥香社長自ら説得してくれて、なんとかなったんだけど…
暗闇に落ちる時になぜかそんなことを思い出した。
やっぱ、お母さんは私の力じゃ、先輩たちみたいに戦えないってことがわかっていたのかな。
ごめんね…お母さん。
でも、後悔なんてしてないよ。だって、わたしの夢だったんだから。
それと、思い出したのは、お母さんがわたしに話してくれたおとぎ話。
でも、白雪姫とかみたいにハッピーエンドじゃなくて、滅びてしまった国の物語。
昔、昔、あるところの王女が治める小さな国のお話。
その国は小さいけれども、強大な悪魔の国に対して神の国と呼ばれ、王女と12人の騎士たちが悪魔に対する結界の役目を果たしていた。
代々王女は、長い間の平和をになってきたけど、最強の騎士との間に姫が出来た時、結界が弱まり、悪魔たちが攻め込んできた。
王女と騎士たちは、それと戦うのだが、力及ばすに神殿に追い詰められる。
神殿は悪魔たちに囲まれ、万事休す。
その中で、王女は扉を開き、11人の騎士とともにその中に入っていく。
代々、王家はひとりひとり召喚獣の扉を持っている。その中に取り込んだ魔獣を使役することができる。
王女が開いたのは、生まれたばかりの姫の扉。
そして、王女たちが扉に入ると、扉は閉じられ、その姫を最強の騎士が連れて、悪魔の包囲を脱出する。
そう言った冒険の物語だ。
お母さんは物語の終わりに、こう言う。
「美月がその姫かもしれないね」
たぶん、そう言った落ちの創作だと思っていた。
「ちがうよ。わたしはお母さんの子供だよ」
わたしは、いつもそう答える。
わたしは、いろいろなことを思い出しながら、暗闇の中を漂った。