24 最強タッグVS正憲
愛梨さんと美那子先輩の最強タッグの前に立つ正憲。
前みたいにオドオドした態度はないが、いかにも頼りなげに映る。
「おまえも魔獣王の仲間か?
美月には聞いてるよ。友達なんだろ美月と…
引いてくれたら何もしないよ。
だから、何も言わずに通して欲しいんだ。
さもないと」
美那子先輩が正憲を説得にかかる。まあ、説得っていうか脅しなんだけど。
美那子先輩の小さな身体は、対峙してみるとすごくおおきく見える。
それは美那子先輩の実力。
それだけでも、相手にとってやばいのに、その横には金槌を肩に担いだBLACK★WITCHESのリーダー。
ふたつの魔女軍団の頭がそろい踏み。
いじめられっ子から最近脱却したばかりの正憲には荷が重すぎる。
がんばらないで、早く逃げたほうがいい。
でも、正憲は美那子先輩のまえから動かない。
すでに愛梨先輩は、金槌を構えて走り出している。
おもいっきり鉄槌を振り回す。
しなる柄から、遅れてヘッドが正憲を襲う。
でも、正憲は逃げない、悲しそうな目で2人を見る。
愛梨先輩の大金槌がなにもない正憲の手前で弾かれる。
その攻撃の振動で、愛梨先輩の身体も後ろに弾かれる。
普通なら金槌を離してしまうところだけど、愛梨さんの握力ってハンパない。
ダイアモンドさえ砕くといわれる愛梨先輩の鉄槌。
それでさえ破れない透明な壁。
それを使う正憲。
「ただ透明なだけだろ」
美那子先輩も正憲にダンクシュートを決めようとする。
バスケットボールの大きさオレンジ色の球。それが正憲の頭にぶつかる瞬間に光球ははじかれる。
「透明なだけじゃないんだ。
この魔獣は…いろいろやってみてわかったんだ…
美月さんの先輩たちに言うのは辛いんだけど…
無駄なんだ…その攻撃」
「なんだと!うちらに砕けないものなんてないよ!」
愛梨さんは再び鉄槌を打ち付ける。
火花が散るが、鉄槌は正憲に届かない。
「ぼくの巨人は…光をすべて通してしまう全く新しい物質でできているんだ。
それはダイアモンドより固く、変幻自在なんだ。
それに僕は気づいてしまったんだ。
そんな力を持っているとどうなるか…
魔獣王が教えてくれた…実験動物にされるってね。
そうじゃなくても…一生幽閉される」
「違うわ…わたしたちもそう…LOVE★WITCHESはみんなを守るとともに、魔女たちを守ってるの」
「でも、魔獣使いにはそういうシステムはないんだ。
僕たちが作っていかなくてはね」
「じゃあ、いっしょにつくればいいじゃない」
「そんな時間はないんだ…もう…」
「時間がないって」
「……」
正憲は黙り込む。そして悲しそうな目を2人に向ける。
「ごちゃごちゃ言ってないで、行くよ。美那子」
愛梨さんが鉄槌を振り回す。
鉄槌のヘッドがだんだん大きくなっていく。
美那子さんも正憲から離れ助走をつける。
「うちらに壊せないものなんてないよ!」
愛梨さんの鉄槌が正憲を襲う。同時に美那子先輩が光の玉を叩き込む。
LOVE★WITCHESの最大火力。それが、0.1秒の差もなく同時に正憲に決まる。
正憲の目の前で、ステルスジャイアントと2人の攻撃がぶつかり、爆発が起こる。
こんどこそ、巨人にダメージを与えられる。
正憲の前の爆炎が晴れる。
そこには無傷の正憲が、悲しそうに笑っていた。