23 栞VS羅生門
後ろに吹っ飛んだ、後鬼…
砂煙を上げて地面を滑る。とりあえずこれで一丁あがりだ。
あとは前鬼と陰陽師本体だけ…
でも。砂煙の中で立ち上がる黒い影。
後鬼…
鬼なので、表情はわからないが、まるでダメージを受けていないように、前に進んでくる。
羅生門と戦っている栞が、チラッと式神と戦っている2人を見る。
ふわりふわりと栞の攻撃をかわし続ける陰陽師。
まるで、空気と戦っているよう。
しおりの体術も不思議な体術だから、仙人どうしの戦いみたくなっている。
「式神は、普通の魔獣とは違いますよ。
コアなんてものはありません。
疲れるなんてこともね…
古来より伝わるパーフェクトな使い魔ですよ」
栞の視線に気がついた羅生門は笑う。
「じゃあ、あなたを倒す」
栞の手刀は躱される。速くはないけど、変幻自在の予測できない体術。
それを悠々と躱してしまう。
「それは、もっと無理ですよ」
「そんなことない!」
栞が本気を出す。栞の身体が分裂する。
3体になった栞。分身…栞の幻術のひとつだ。
どれが本体かわからない動き。でも、2体はまぼろし…。
羅生門は後ろに引いて、指で印を切る。
そのとたん、2人の栞が消え去る。
「幻術は破れるのですよ。
しょせん幻にすぎません」
こいつには栞の幻術が通用しない。
栞は龍を呼ぶ。栞の後ろに現れる巨大な龍。
これは、破れないはず。
しかし、羅生門がブツブツと呪文を唱えて、指で宙に印を書くと、龍はあとかたもなく消えてしまう。
幻術が通用しない相手。これは栞の天敵だ。
栞は体術だけで戦うしかない。
それに大掛かりな幻術を使ったからか、疲れが見え始める。
「負けないっ」
栞は、相手の懐に入り込む。リーチの短い栞が攻撃を当てるにはそれしかない。
足技中心に繰り出す。普通の相手ならこれで十分なんだけど、やっぱり笑いながら避けられてしまう。
そればかりか、ふわりとした動きで羅生門が足技を繰り出す。
疲れが見え始めている栞にそれを避けることはできない。
へんな靴を履いた足は栞の腹部を捉える。
栞はその蹴りを受け、大きく後ろにふっとばされ、地面に転がった。