08 魔獣王と正憲
「よく来てくれたね、正憲くん」
「ええ、でもまだ仲間になると決めたわけではないですよ」
「そうか。しかし、ここに来たってことは、我々の考えに同調できる部分もある…と考えていいんだね」
「はい…あなたの考え方しだいです」
魔獣城。首領室。
正憲は魔獣王と対峙する。
強い視線で魔獣王を見る正憲。魔獣王の目力に負けないような視線。
まるで火花が散りそうな。
「もし、仲間にならないのであれば、君の力は我々の脅威となる。
ここで、消えてもらうことになるかもしれないね」
「脅し…ですか」
「いや、この程度の脅しに屈するようでは使い物にならないね。
その場合も消えてもらうしかないね」
「では、伺います。
魔獣使いが支配する世界が目標でしたね」
「ああ、我々は神に選ばれた人間だ。
それが、どうだ。魔獣使いっていうだけで、社会から締め出され、犯罪者と同様に扱われる。
無能な権力者が自分の保身のために、我々を押さえつける。
無能な一般市民はそれに同調する。
おかしくはないか。
君だって、ただの不良の親玉…以外の何でもない。
西や北や南。まわりを敵に囲まれているのにね。
能天気なもんだよ。この国の国民は…」
「優れた者が支配しなければならない…と」
「そう。よくわかっているね。嬉しいよ」
「LOVE★WITCHESがいる」
「ああ、そうだね。しかし、あのやり方じゃ東都はどうなってしまうんだろうね。
あの権力者たちじゃ、何も組められない。
いざという時にはね。
そして、少しの失敗で、マスコミに叩かれ失脚する」
「じゃあ、手を組めばいいのでは…」
「努力はしてみるよ。しかし、無理だろうね。
魔獣戦争も彼女たちが歯向かわなければ起きなかった。
うちの中にも、彼女たちを恨んでるやつも多いしね」
「あなたが、独裁者になるってことですか」
「いまのところ、そうなるだろうね。
ただ、過去の独裁者と同じ轍は踏まないよ。
だから、正憲くん、君をスカウトした。
わたしと同じくらいの力を持つ君をね。
それと、一二神将と言われる幹部。その中にそれくらいの力を持つ幹部があと3人いる。
いつでも、わたしの首を取れるってことだね」
「この人たちも、その幹部のひとりってことですか?」
正憲は近くに立つ先代玄武と先代朱雀を指差す。
「なんだと、当然じゃねえか。
おまえは祐也の下だろ。だから俺の下だよ」
玄武が正憲に近づいて凄む。
「いや、この人たちは、十二神将ではない。
とりあえずはハマヌーンの部下ってことになっている」
「安心しました。この程度で幹部だなんて、LOVE★WITCHESやDEEP☆GREENには絶対勝てません。
いいでしょう。俺はあなたの仲間になりますよ」
「合格だ。よろしくたのむ。十三人目の神将よ」
魔獣王は握手のための手を差し出す。
「ちょっと待て!
こいつを倒したら俺が13人目だな」
玄武が正憲の胸ぐらをつかもうとする。
正憲はそれを軽く避ける。
そのとたん、何もしていないのに玄武がふっとび石壁にめり込む。
ステルスジャイアントの力だ。
パチパチと魔獣王は手をたたく。
「すごいね。噂にたがわず」
再び手を差し伸べる魔獣王。
その手を正憲は掴み、握手をした。