33 沙織vsミイナ(1)
栞は、自陣に戻ってきて沙織さんとタッチする。
完全勝利まで、あと一人。
でも、残っているのは白の巫女。
LOVE★WITCHESのヒーリング担当、刑部沙織。
戦闘にはあまり出たことはない。
BLACK★WITCHESの愛梨先輩とかじゃだめなの?
でも、きゅっと唇を結んで前にゆっくり歩く沙織先輩。
ストレートの銀髪が左右に揺れる。
それに対して、前に出るのは…
カーリーならいいけど、あのリーダーの魔女はやばすぎる。
でも、向こうもあと1人負けたら終わり。
予想どおり、前に出るのは、リーダーのミイナ。
「最後の一人ね。
あなた名前は?」
「刑部沙織」
「なかなかの気をもってるわね。
まあ、わたしにはかなわないけど」
「……」
余裕の魔女の王を、沙織先輩が睨む。
「わたしはミイナ。
北で序列7位の魔女。
っていっても、今だけだけど、すぐに一位になるわ」
「無理…」
「えっ?何を言ったの?聞こえなかったわ」
「無理…あなたじゃ」
「へえ、わかったようなこというじゃん。
おまえに北の何がわかる」
ミイナに怒りの色が現れる。
「こんな、平和そうなところでぬくぬくとして、北はね。
殺るか殺られるかの世界なんだよ。
枕を高くして寝られるなんて日はないの」
「わかる…」
いままでの余裕の表情が崩れるミイナ。
沙織さんの表情は変わらない。
心理戦では沙織さんの勝ち。
でも、実力は相手のほうが上。
ミイナがまず仕掛ける。
手刀を沙織先輩に振り下ろす。
速い。魔眼だけでない、ミイナの実力がわかる。
ギリギリで避ける沙織先輩の髪がひと房持っていかれる。
鋭いナイフのような攻撃。刃物のような拳だ。
それだけでなく、連続して攻撃してくる。
みたこともないような拳法。
間合いのとりかたが難しい。
その攻撃についていってる沙織先輩。
こっちの動きも普通の体裁きじゃない。
軽く曲げた指が相手を裂こうと繰り出される。
沙織さんが戦闘するのは、あんまりないけど、美那子先輩たちは戦闘しないんじゃなくて、戦闘させないって言ってる。
あまりに強すぎて相手を壊してしまうからってことらしい。
今の戦いをみればそれも理解できる。
最強の敵を相手に一歩も引かない。
2人の攻撃を中心に嵐のような風が巻き起こる。
それくらい激しい戦い。
両者の戦いは互角。決着はつきそうにない。
「なかなかやるわね」
「あなたもね」
「ひさしぶりに本気で戦えたわ。東都の魔女にも骨のあるのがいるのね。
でも、それもこれで終わり」
「わたしもなまってた身体がほぐれた」
2人は距離をとって拳を交えるのをやめる。
どちらかと言えば、ミイナの方がボロボロになっている。
こうやって見ると沙織さんのほうが押しているのかも…
2人は息を整え、次の攻撃へと備えた。