32 栞vsリディア(2)
リディアが栞に近づく。
それに気づいて栞は立ち上がり、距離をとる。
足が少しふらついている。
やっぱ、この副官は強すぎる。
でも、栞はいつもどおりの栞スマイルを浮かべている。
少し、首をかしげてリディアを見る。
あいかわらず何を考えてるかわからない。
そのまま、天を指差す。
空から龍が舞い降りてくる。
リディアは表情を変えない。
龍がリディアに襲いかかる。
でも、微動だにしない。
幻の龍はリディアを擦りぬける。
「まやかしですよね?
こんなのには引っかからないです」
涼しげに笑う。
「うん」
栞は無邪気に微笑む。
「じゃあ、そろそろ本気でいくね。片目のおねえちゃん」
急にスピードを上げてリディアのもとに飛び込む栞。
いきなり蹴りを繰り出す。
でも、いままでの戦いからそれは当たらないことはわかっている。
えっ。その蹴りはリディアを捉える。
そして、そのまま懐にはいってリディアを投げる。
相手の力を利用した投げ、それにリディアは簡単に舞い上がる。
さっきまでの彼女じゃ、ありえない体たらくだ。
「どうして?」
「おねえちゃん。心を読んでるんだね。
仙術ではさとりっていう術。
破るのは簡単…」
「どうしてわかったんですか?」
「ビデオでみたよ。
美那子先輩のボールが当たりそうになったの」
そういえば、イレギュラーバウンドのボールが当たりそうになってた。
「で、どうして破るのは簡単なんですか?」
「うん、何も考えなかったらいいんだもん」
にっこりと笑う栞。
たぶん、こいつは普通に何も考えていない。
この危機的状況もわかってないのかもしれない。
「でも、わたしにはこれがあります」
手の平を前に差し出す。
発勁の構え。
手の平を身体に当てられたら終わり。
「それも簡単だよ」
栞は、またあどけない微笑みを浮かべて、リディアの懐に飛び込む。
リディアは栞の胸に手の平を当てる。
……何も…
起こらない…
「ねっ」
「どうして?」
「気の流れを読んだの。
仙術の基本だよ」
でも、リディアの攻撃範囲だ。
リディアは栞をつかもうとする。
「おねえちゃん。
さとりの術はなかなかだけど、気をつかうのはまだまだだね」
栞はリディアの身体に手の平を当てる。
そして、リディアの身体はすごい勢いで吹き飛んだ。