31 栞vsリディア(1)
優菜が踏み潰される!
その瞬間…
ゴーレムの動きは止まる。
もう、勝負は決まったから、じわじわとなぶり殺そうっていうの?
でも優菜の目を見るとそうじゃない。
勝利を確信した目。
それに比べて、メディアの方に焦りが見える。
必死でゴーレムを動かそうとする。
「無理よ。凍らせたから。
周りの空気には、水蒸気が含まれてるの。
それをまとわりつかせて、関節を凍らせたの」
メディアにそう言って足を掴んでいるゴーレムの手を砕いて立ち上がる優菜。
優菜はゆっくりと歩いて、止まったゴーレムを擦りぬける。
メディアは後ろに下がる。
それを一瞬で距離を詰める優菜。
後ろに振りかぶった手でメディアに掌底をぶちかます。
体術…
それもだけど、優菜の攻撃はそれだけじゃない。
優菜の掌底が当てられた部分から、メディアは凍っていく。
動きが止まるメディア。
そのメディアを優菜の力が氷像へと変えた。
ゆっくりと優菜はLOVE★WITCHESサイドに戻ってくる。
余裕の表情で、栞にタッチする。
栞は元気にハイタッチをして、中央に進み出る。
次はLOVE★WITCHESの誇る幻術士、鞍馬栞。
魔法とは違う力を使う。
古来から伝わる幻術って力。
何をやるかわたしらでも読めない。
LOVE★WITCHESの不思議ちゃんだ。
でも、実力は折り紙つき。
こういう時はいちばんたよりになる味方だ。
後ろで手を組んで、ぼーっと立って敵が来るのを待つ。
相手は、たぶんあの6本の手、もしくは装甲魔獣。
どっちが来ても簡単な敵ではない。
でも、栞にはどうにかしてくれるって期待をしてしまう。
予想に反して、前に出てきたのは。
眼帯の副官…
「もう、お遊びは終わり。
時間もないしね。あなた方の強さはわかりました。
ますます、配下に欲しくなりました。
これで、ミイナ様は序列一位の魔女になれます。
確認しますね。本当にひとりでも負けたら、配下になってくれるんですよね」
「LOVE★WITCHESに二言はない」
卑弥香社長はそう断言する。
あと二人。でも、相手はリーダーを3人も倒したあの副官。
でも、栞にそんな緊張感はない。
大きな瞳でじっとリディアを見上げて微笑む。
この子の考えてること、あたしらでもわからない。
いきなりふわっと飛び上がって、攻撃を仕掛ける。
栞の動きは独特。
まるで、体重がなくなったかのようにふわりと舞い上がる。
敵の武器の上に乗ったりもする。
栞は仙人に育てられたっていうから、空を飛べるのかもって思ってしまう。
たぶん、相手もこんな動きはみたことはない。
それに、栞の体術は相手の力を利用する。
わたしも戦ったことあるけど、こっちの攻撃はすべて空回りしてしまう。
美那子先輩でも、引き分けがせいぜいだ。
でも、リディアは反応する。
くるくると変幻自在な栞の攻撃をすべてよける。
その合間に手刀で栞を攻撃する。
栞もそれを受け流す。
まるで風のように相手の攻撃を無にしてしまう。
「小さいけどやるわね。
でも、わたしの敵じゃない」
リディアは手の平を突き出す。
あのリーダーたちを倒した発勁の構え。
触れてしまえば、弾き飛ばされる。
栞は、たぶん大丈夫。
攻撃を避けるのは、LOVE★WITCHESいち。
栞はその手はくわない。
でも、リディアはあのゆっくりした動きで、栞の後ろにまわり、その手の平を背中に押し付けた。
そのまま、栞は吹っ飛ばされ、何回も回転して倒れ込んだ。