29 優菜vsメディア(1)
「これで終わり…
まあ、そこそこ楽しめたかな」
ルレイアが自軍にきびすを返そうとする。
「そうね、これで終わりね」
「えっ???」
ルレイアの目が驚きに大きく見開かれる。
ルレイアの首には小麦色の腕が巻きついている。
そして、彼女の首筋には暗器が当てられている。
真奈美先輩???
針の山の方を見る。
それは、ただの木切れに変わっている。
変わり身の術???
「どうして?」
「うちは忍者。気配を消すのが仕事よ。
忍者の基本だね。
じゃあ、さよなら」
真奈美さんが腕をしめる。
簡単に落ちるルレイア。
ぐったりしたルレイアをその場に横たえる。
北の魔女のひとりが前に進み出る。
マントと仮面の普通くらいの背の子。
T155くらいかな。
いままで、じっとしてた子。
どんな力を秘めているかわからない。
でも、こっちも優菜の登場。
フローズン・クィーン。
強力な氷の力は、どんな敵ともオールマィティに戦える。
普段は柔らかくて天然っぽいとこあるけど、こういう時に頼れる仲間だ。
「フローズン・クィーン氷室優菜よ」
「ゴーレムマスター、メディア」
倒れたルレイアをはさんで対峙する、二人の魔女。
メディアが手を上げると、道路が波打ってひび割れる。
地震のような大地の揺れに、優菜はひざまづく。
震度6って感じかな。
相手は地属性の魔法使い?
わたしたちの世界では地属性はレアとなっている。
道路や建物を壊すし、LOVE★WITCHESにも地属性はいない。
ってわたしたちも壊すんだけどね。
相手の攻撃に笑みを浮かべる優菜。
地震だけならなんとかなる。
特にここは開けた場所。
上から何かが落ちてくることはない。
地震で動きは止められるが、優菜には飛び道具がある。
優菜の前に十数本の氷の短剣が形作られる。
優菜はゆったりしてるように見えるけど、実は天才。
普段は必要ないだけで、本当は空中戦も得意なんだ。
足場だけに気をつければ、こんなやつ敵じゃない。
優菜が空中を指差す。それからゆっくりと腕をメディアに向かって振る。
空中で形作られたナイフが、その合図に呼応して投げ出される。
ナイフの雨がメディアを狙う。
いきなり、メディアも手をあげる。
そこにいきなり形作られるのは、石の壁。
道路の瓦礫が、メディアを守るように壁を作る。
いや、壁というより人の形。ゴーレムだ。
氷のナイフの雨は、ゴーレムにあたって、脆く砕け散った。