21 魔眼のしずく
お店の大画面テレビは、魔女たちの様子を写している。
さっきの美那子さんや沙耶香先輩の戦いも、すべてニュースとして生中継されていた。
東都の危機。わたしもLOVE★WITCHESの一員。黙って休んでられない。
「いかなくっちゃ」
「無理よ」
結花さんがすかさずにわたしを止める。
「でも…でも…」
「大丈夫だから。それに…」
わたしの目の前には3つの玉。
それは、白くなって輝きを失っている。
「この人が回収してきてくれたんだけど、石化してるわ」
ヒゲのシェフはすまなそうな顔でわたしに会釈する。
「ありがとうございます」
わたしは渡された三つの玉を抱きしめる。
あとの光球もあの黒い針に貫かれて使えるかどうかわからない。
でも、それでも…
春香も立ち上がろうとする。
胡桃も同じ。
指一本でも動く限り、私たちはあきらめない。
そうでないと、LOVE★WITCHESじゃない。
わたしが一番ましみたい。
なんとか、奴らの前に…
「どうしても行くの?」
結花さんがわたしに問う。
「はい…」
「じゃあ、わたしくらい倒せるよね。それくらいじゃないと足でまといになるだけだよ」
厳しい目でわたしを見おろす。
さっき、やつらに対峙したときみたいに威圧感たっぷりの目。
こんなに怖い人だったんだ。
やつらが引いたのもわかる。
わたしは立ち上がり、結花さんとにらみ合う。
結花さんの横を抜けようとする。
その手首を掴む手。
その握力の強さに顔をしかめる。
そのまま、わたしの身体が宙を舞う。
手首の動きだけで投げられてしまう。
この人の強さ、半端ない。
わたしは受身をとって一回転し、すぐに立ち上がる。
たぶん、結花さんが本気なら一撃で殺られていた。
今のわたしではこの人を倒すなんて無理。
わたしはLOVE★WITCHESなのに…
東都をまもらないといけないのに…
目に涙が溜まる。
それが、抱えている3つの玉にポタリと落ち濡らす。
その落ちたところから、白く濁った玉は輝きを取り戻していく。
「魔眼のしずく…あなたも…」
結花さんがつぶやく。
わたしの周りには7つの玉が現れる。
戦闘上等っていうように、みんな闘志がみなぎっている。
絶対、結花さんを抜けてやる。
「結花さん、じゃましないで、いかなきゃ、ならないの」
「わかったわ…」
わたしの道を開けてくれる。
「ごめんなさい…」
わたしは、すれ違いざま、そう言って、お店の扉を駆け抜けた。