19 幕間
「サリ様、大丈夫ですか?」
ユーリカが黒いドレスの少女に声をかける。
「大丈夫だよ。リンは?」
「リンも大丈夫みたいです。今は外の帝国軍を食い止めています」
「そう…。あと、何人くらい…」
「数えてないですよ。そんなの。一万くらいまでは倒しましたが…。
焼け石に水でしたね」
彼女たちは、帝国の軍隊に囲まれていた。
序列1位の魔女と戦い勝利した魔女サリに対し、他の魔女達と帝国軍が手を結び戦争を仕掛けたのだ。
両者ともにサリの力を認め、恐れていた。
10万以上の軍隊と6人の魔女軍団に対し、サリ達は追い詰められていった。
「ただ、静かに自分の国を守りたかっただけなのに…
どうしてこんなこと」
「そうですね。一度も自分から攻めたことはないですよね。
なのに、暴虐のサリですか…」
「ええ、その名が抑止力になればと思っていたんですが、北の地では通用しませんでした」
「まさか、帝国と魔女が手を組むとはね」
「金剛力ユーリカも、神軍師リンの名も同じ。出る杭は打たれるってことです」
「だいぶ楽になりました。ユーリカ行きましょうか」
「はい、とりあえず逃げられるだけにげましょう。リンと3人で…」
サリとユーリカは洞窟の中を外の光に向かって歩きだす。
そこに歩いてきた、ショートヘヤーの少女。
「リン」
ユーリカが声を掛ける。
「戦況は?」
「それより話が」
「新しい作戦でも思いついた?リンの軍略はまさに神の域だからね。
期待してるよ」
「話はサリ様に…」
そっけなくユーリカに言う。
この愛想のなさはリンの合理性の現れ、必要な事以外は口にしない。
「そう…じゃあ…サリ様に」
ユーリカもそんなリンに慣れている。他の者がユーリカにそんな態度をとったらただではすまないのだが。
「サリ様…」
「どうしたの…」
「死んで下さい。それが、村人たちを助ける道…」
リンの後ろには、青い鎧が立つ。
その後ろには、帝国軍。
「リン、きさま…裏切ったのか」
ユーリカが憤怒の表情で吠える。
「この方は、帝国4将軍のひとり、ラインデッカー将軍です」
その後ろから、ローブの女が現れる。
序列2位の時空のシャルロッテ。
現在最強と言われる魔女。
「魔女会議も、あなたには消えてもらうことで一致したわ。
下刻上なんて流行ってもらうと困るの」
「リン…
本当に村人たちは守れるの?」
落ち着いた表情でサリは、かつての仲間に問いかける。
「はい、僕が序列7位になってサリ様を引き継ぎます」
「そう…」
「サリ様っ!」
ユーリカは納得しない。
リンに掴みかかろうとする彼女をサリが制する。
「じゃあ、やっておしまい。
あなたの手で…
無能なリーダーを」
「はい…」
リンが2人を見つめる。
それから、手を上にあげる。
その途端、光の玉が現れ、それがリンたちを包み込む。
その光が一点に収束したとき、2人の姿はその場から掻き消えていた。