表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LOVE★WITCHES (魔女アイドルグループの物語)  作者: PYON
第8部 北の魔女ミイナ
244/344

13 完敗

 ぼんやりとした視界。

 暗闇から意識が戻る。

 そうだ。あいつら。行かなきゃ。

 東都が…。先輩たちが来るまで、持ちこたえないと…。

 身体が動かない。でも、闘争心だけは持続している。

 胡桃、春香…

 ここはドコ?


 わたしの視界が、ぼんやりとした抽象画からはっきりとしたものになっていく。

 これはさっきのお店。

 だったら、さっきのは夢???

 わたしたちを簡単にあしらった敵。

 夢落ちであればいいのに。

 でも、麻痺した身体と二の腕の痛みは、さっきのが現実だって教えてくれる。


 動かない身体で、目だけでまわりを見る。

 私の隣には胡桃、春香が横たわっている。


「あ……」

 春香って呼びかけようとしても声にならない。


「気がついた?」

 わたしを覗き込む結花さん。

 そういえば、さっきこの人がやつらに立ち向かったような気がする。

 何者なの???この人???

 やさしそうな人、いつも笑っているような細い目。

 すごく普通の人に思えるのに。


「あ…あの…」

「大丈夫。春香も胡桃さんも無事よ。

 あなたも針に塗られた毒が効いてるだけ、死ぬような毒じゃないわ。

 麻痺させるだけの毒。少ししたら良くなるわ」


「でも、あいつらは…」

「行っちゃったわ。とりあえずあなたたちを助けるのが先決」

「じゃあ、東都は…」

 わたしは起き上がろうとする。

「さあ、でもあなたたちの仲間がいるんでしょ?」

「で…でも…」

「信じるの。少なくともわたしは信じているわ。

 あの人さえいたら東都は大丈夫ってね」

「あの人って…」

「秘密。でもあなたの良く知ってる人かもね」


「結花さん!」

 春香が上半身を起こす。

 気がついたみたいだ。

「春香。気がついた」

「行かなきゃ」

「無理よ。その怪我で…」

 わたしと違って、春香は奴らとの肉弾戦をしている。

 たぶん、骨の一本や二本はやられているはず…

 よろよろと立ち上がる。

 でも、初めて立った赤ちゃんのように足がもつれる。


「でも…でも…」

 春香が涙に濡れる。わたしたちは完敗だった。

 わたしたちの全力は小指の先でひねられたんだ。

「は…春香…」

 わたしも涙がこぼれる。

 いままで、こんなことはなかった。

 もう、少しで勝てる…そう思えた。

 あいつらには先輩たちでも、難しい。

 わたしたちはそう感じたんだ。

 だから、少しでも…あいつらの動きを少し止められるだけでもいい…

 刺し違えるつもりで行けば…なんとかできるかもしれない。

 春香もそう思ってるんだ。

 だから…


「ききわけのない子ね。大丈夫よ。あなたたちの仲間を信じればいいわ。

 ごめんね。あなたたちでは殺されておわりよ」

 春香の近くに結花さんが行き、春香のお腹にパンチをめり込ませる。

 また、ぐったりする春香を結花さんは横たえる。

 なんなの?この人。なにげにむっちゃ怖い。

「おやすみ。春香ちゃん」


 わたしもそのまま動かない身体で涙をこぼし続けた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ