11 有沢結花
倒れそうになりながら、相手を待つ。
目が霞んでくる。
もしかして、さっきの針には毒とか塗ってあったのかもしれない。
ふらつく足。
時間稼ぎにもならないかもしれない。
だめ、マイナス思考は…
なんとかなるんだ。世界は。
わたしたちの力は精神力。気持ちが負けた時点で終わり。
いままでの敵とは違う。
相手は力の半分も出していない。
ひとりひとりが先輩たちに匹敵する力を持つ。
わたしの前に、魔獣が近づいてくる。
「まだ、いるよ」
「踏み潰しちゃおうか」
魔獣が前足を上げる。
足が動かない。
もう限界なのかも。
「毒が効いてきたんでしょ。でも、ただの痺れ薬。
簡単に死なれたんじゃ。面白くないもんね」
「じゃあ、踏み潰してぺちゃんこにしてみるね」
魔獣の足が近づく。
もう、だめ。
ルシフェルだけでも、逃げて。
わたしの心が折れる。
そのとたん、ルシフェルは紫の球へと戻る。
ごめんなさい。LOVE★WITCHESなのに、こんなに惨めに負けるなんて…
意識が薄れていく…
魔獣の足が止まる。
たぶんゆっくりと踏み潰していくつもりなんだ。こいつら。
恐怖を与えて、命乞いをさせて。
わたしたちをハエとか虫けらみたいにしか思っていない。
絶対、屈服するもんか。
わたしたちは誇り高きLOVE★WITCHESだよ。
このまま、立ったまま終わりを迎えよう。
でも、その足は動かない。
薄れゆく意識の中で聴き慣れた声が叫ぶ。
「あんたたち、うちの店の前で何やってるの」
それは、さっきのお店の結花さんの声だった。