08 闇針使いルレイア
二人が相手を引きつけている間に、わたしは隙を伺う。
まるで、スナイパーのように息をひそめ死角を探して移動する。
やつらに今まで戦ったどの敵よりもヤバげな気配を感じている。
ひとりひとりが、レジェンド級。
先輩たちでも勝てるかどうかわからない。
とりあえず、わたしがやつらを止めないと、東都は大変なことになる。
「うるさいハエがもう一匹いるよ」
仮面の中でいちばん小さいのが、魔獣の上で足をバタバタさせながら副官らしいのとしゃべっている。
その目は一瞬、わたしを捉えたような気がする。
これだけ遠いんだから気のせい?
でも、どこに移動してもその目はこっちを向いているような気がする。
とりあえず、光の玉を大きく動かす。
わたしのいる位置と逆方向から、奴らを狙わせる。
その光球たちを目で追いかける仮面の少女。
「ふうん。やっぱうるさいよ。やっちゃっていい?」
「そうね。あなたの闇針で落としちゃって。ルレイア」
メガネの副官はうなづく。
「じゃあ、落としちゃうね」
そのとたん、少女は軽く腕を振る。
わたしが攻撃命令を出したのと同時に。
奴らに向かって突撃する光の球は、ひとつひとつ静止して消えてしまう。
どうして???
でも消えたのは5つだけ。
あと2つ残っている。それは正確にリーダーらしい幼女に向かう。
でも、少女がその目で光球を睨んだとたん、落ちてしまう。
どうして?わたしの力が通じない。
光の球を再度呼び出そうとしても、呼び出せない。
完全に落とされたんだ。
わけがわからなくなったわたしの方を仮面の少女が見る。
やっぱ、わたしの位置がわかってたんだ。
もう一度、緩慢な動作で腕を振る。
やばい、そう思う暇もなく、わたしの腕を痛みが走る。
なぜ?
そう思って痛みのするところを見る。
そのわたしの二の腕には、黒い針が突き刺さっていた。