01
北の国の大地の裂け目。そこは人が一人通れるくらいの洞窟となっていた。
「ここが、結界の裂け目ね」
黒いゴスロリ衣装の少女が眼帯の女に言う。
「そうです。ここを抜ければ、東都へとつながっているはずです。
しかし、この中は魑魅魍魎の棲家といわれてます」
「怖いの?
わたしの副官リディアともあろうものが」
「いえ、しかし北の神魔女の一人。序列5位の暴虐の魔女サリがここに入って出てこないと聞いたものですから」
「フフ、順位なんて誰がつけたんだか…実際に戦ったわけでもないのにね。わたしも序列7位っていわれてるけど、たぶん最強だしね。」
北都の北に巨大な長城がある。その北には巨大な山脈。そしてその北には帝国と言われる巨大な国があった。
自由都市と北を隔てる山脈は結界とよばれていた。魔族と呼ばれる北の住民の戦闘力は絶対的であり、結界がないと自由都市は瞬時に征服される運命にあった。
そして、魔族たちは北の寒い地から気候の良い中原を狙っていた。
大きな結界にも綻びはあった。
この裂け目もそのひとつ。
軍隊を送り込むには小さいが、数人なら十分に通れる裂け目だった。
北には神と呼ばれる7人の魔女がいる。
そのひとりひとりの力は軍隊にも匹敵する。
その一人がこの裂け目を見つけたのだ。
「じゃあ、行こっか。5人衆出ておいで」
ミイナの周りにいつの間にか5つの影。
副官らしき眼帯の少女が顔をゆがめる。
「あんたら、わかってるんだろうね」
「戦争だよね」
「じゃあ、いっぱい殺してもいいんだ。キャハハ」
「殺すのが戦争じゃないんだよ」
「でも、恐怖を植えつけないとね」
「そうそう。残酷に殺して見せ付けてやろうよ」
まるで、殺人鬼の集団。しかし、魔族の国は弱肉強食の掟に支配されていた。
特に北の魔女たちが支配する地域は特に…
帝国に対し個性の強い君主が群雄割拠する。それは、まとまるのを嫌がる君主たちの性格を反映していた。
彼らがまとまると帝国といえど困ったことになる。しかし、君主たちは誰かに仕えられるような人種ではなかった。
「行くよ」
彼女たちは裂け目に入っていく。
ミイナを先頭に5つの影。
最後に、リディアという少女も後ろを用心しながら、洞窟に入っていった。