13 きぐるみvs魔獣
「ここを離れないで」
麻衣先輩が背中から抜いた木刀を構える。
わたしたちは社長の後方を固める。
でも、周りの警護はみんな敵のほうへ殺到する。
ちゃんと考えて行動しなきゃ。
守るのが仕事なんだから、相手に逃げられてもOK。
でも、警察の目的は逮捕または撃破となっている。
それなりに力の差があるなら、それでいいのかもしれないけど。
この場合は警備に集中すべき。
わたしたちの力は強力だけど、相手も強力なんだから。
舐めてかかっちゃいけない。
でも、経験の少ない特殊部隊は魔法が万能だと思っている。
それも、10人を超える魔女と魔獣使いがいるから、数で押し切れると思っている。
わたしたちは自分の力が万能ではないことをわかっている。
実戦はシミュレーションと全然違うんだよ。
扉から現れる3人のマント姿。
この前と同じだ。
その前に対峙する私服刑事。
まずマントを脱ぎ捨てる敵。
この前、わたしと戦ったあの娘だ。
この前は、チーターの気ぐるみだったけど、今日は灰色の気ぐるみ。
長い鼻が顔の中央に垂れている。
そう象の気ぐるみだ。
その前の男が手を上げる。
黒豹の魔獣が現れる。
そしてもう一人の男も、今度は虎。
それだけではない。
もう一人は立派な鬣のライオンを呼び出す。
気ぐるみを取り囲む3匹の猛獣。
それも、ただの猛獣ではない。
魔獣使いのいうとおりに動く。
知能を持った猛獣だ。
「うーん、たくさんでてきたねっ。
めんどくさいなぁ」
着ぐるみの象の鼻を振り上げる幼女。
でも、3匹の連携はわたしたちでもてこずる。
でも、楽しそうに笑う幼女。
「捕獲っ」
いっせいに襲い掛かる。
3方からの攻撃。
一匹くらいなら相手をできても、あとの二匹はどうにもならない。
幼女は身構える。
魔獣たちは襲い掛かる。
振り上げた鼻を振る幼女。
でも、あんな鼻じゃ、威力は知れている。
その鼻が左右に薙ぐと、すごい風が起こる。
猛獣たちは、吹き飛ばされる。
鍛えられた魔獣は主人の命令どおり、体勢を整える。
これくらいじゃ終わらない。
さすが、警察の秘密兵器だ。
こんどは一匹づつ襲い掛かる。
フォーメーションも考えられている。
まず黒豹が襲い掛かる。
その黒豹に、着ぐるみの前足が襲い掛かる。
黒豹をつぶすように上から。
ってそんなんじゃ、とめられないだろっ。
そう思うわたし。
でも、大きな音がして、黒豹はつぶされる。
ぺったんこになって、コアを破壊され黒豹は消える。
まるで…象に踏み潰されたみたいに…
この前のチーターの着ぐるみはスピード。
そして、象の着ぐるみは力。
敵は着ぐるみによって能力が変わるんだ。
黒豹の後ろからトラが飛び上がる。
そのトラを着ぐるみの鼻が直接叩き落とす。
強くたたきつけられたトラは、コアにダメージをうけて消失する。
次のライオン。
これはやけくそ気味の攻撃。
前足にすぐに踏み潰される。
特殊部隊の攻撃は、まったく歯がたたない。
「パオーン」
吼える象の着ぐるみ。
「優菜、まかせたよ」
「はいっ」
優菜が前に出る。
わたしたちのフローズンクィーンが、着ぐるみの前に歩を進めた。