10 しのびよる敵
ほっと息を吐く綾さん。
力を使い果たしたようにうずくまる黒マント。
綾さんの勝ち。
鉄壁の防御は伊達じゃない。うん。
LOVE★WITCHESの影と呼ばれる3人。
さすが、メンバーに劣らない能力者の一人だ。
でも、ほっとするのもつかの間。
その後ろに黒いマントが現れる。
振り返る綾さん。
それをあざ笑うかのように、マントで山口代議士を隠す。
まるで消失マジックのように、マントが翻った時、代議士は消えている。
鉄壁の内側に入り込む技。
テレポート以外に考えられない。
そして、代議士を消す技も。
このマントの能力はテレポート。
戦うにはやっかいな能力者だ。
「目的は果たした。引き上げるぞ!」
炎使いが立ち上がる。
その声に反応するほかの3人。
わたしを襲う爪も、そのとたん止まる。
間一髪だった。
でも、向こうも…
わたしの黒い光玉は彼女の背後に迫っていた。
光玉も動きを止める。
そう、黒い玉は剣の王、気高く…そして融通が効かない。
動きを止めた相手は襲わない。
すばやく身を翻して離れる獣女。
「やるねぇ」
獣女の口角が上がる。
「次を楽しみにしてるよ」
私も挑戦的な微笑みを返す。
「私、美月。海崎美月」
「ふうん、わたしは西陣麻里。着ぐるみの宝具使いだよ」
そのまま振り返り、会場の外に走る。
そのすばやい動きに誰もついていけない。
わたしも、その後ろ姿を見送るしかなかった。