06 神楽参上
これってメチャ忙しいんですけど!
飲み物を持って、あちこち動き回る。
胡桃も同じ…
「こっち、ビールねっ」
「こっちはシャンパン!]
警備も兼ねてるのに、もっと他のやつ働けよ。
綾さん…また飲み物落としたし…
使えねえ…
男の人の注文はわたしに…
そして、女の人の注文は胡桃に集中する…
胡桃…また話しかけられているし…
困った顔で対処している。
わたしも同じ…
歳聞かれたり…メイド経験とか…
あきらかにうちに来ない?的なスカウトとか…
セクハラ発言…
ん…
こいつって守るべきターゲットじゃん…
ハゲでデブで脂ぎって…生理的に無理っ…
腰とかに手回ってるし…
いちおう引きつり笑いしながら、その手を掴んで離すようにする。
普段なら、即グーパンチだ。
「それでは、山口先生のこれまでの功績をビデオでごらんいただきます」
舞台の中央に、大画面モニターが降りてくる。
政治家のパーティってつまんない。
でも、これで資金を集めるらしいから、つまんなくてもしかたないのか。
お金を払ったらそれ以上に楽しんでいただくのがLOVE★WITCHESなんだけどね。
画面には、なにかホームビデオで撮ったような画質の悪い画像が映る。
「先生、これでなんとかお願いします」
机の上に札束が積まれる。
風呂敷につつまれた札束、いくらあるの?
「困りますね。こんなことされては」
笑いながら、さっきのキモデブおやじがそれを、横の秘書に渡す。
「先生を見込んでのお願いです」
「わたしも義理がたい男だからね。前向きに善処しますとしかいいようがない。
本当に困った。困った。」
といいながら札束を秘書に渡していく。
言ってることとやってることが全然違ったりする。
「あとの細かいことは秘書の藤田くんと話してもらえるかな。
なあに、悪いようにはしないよ」
秘書がクライアントの前に立つ。
あーっ。あの人、テレビで見たことある。
なんか最近自殺したってニュースで言ってた。
この人の身代わりになってたんだ。
パーティ会場は騒然となる。
あわててるのは主催者側。
「止めろ、ビデオを止めろ!」
ハゲデブがうろたえて叫ぶ。
まわりの男が映写室に向かおうとする。
「天誅組!神楽!参上!」
マイクを通じた声。
映写室の方へ向かう男の前に立つ黒づくめの人。
向こう側にも黒い影。
そして、いつの間にかステージの真ん中にもマイクを持った黒ずくめの女が立っている。
左右から黒服の男たちがステージに向かおうとする。
たぶん、SPとかの人。
わたしたちは山議員の前に陣取る。
とりあえず、ハゲデブを守るのが任務だ。
ステージに向かった男たちは、左右の神楽とかいうやつらにバタバタと倒される。
2人とも素手の戦闘だけど、なかなかの強さだ。
体術では、たぶんわたしと互角。
でも、それだけとは思わない。
わたしたちと同じ魔女の可能性が高い。
綾さんが、山口議員の前に出る。
鉄壁の体制。
これで、わたしと胡桃は動ける。
わたしと胡桃はうなづいて、左右からステージにダッシュした。