02 プロローグ2
「また天誅組神楽だってさ」
「うん、最近多いね」
「まあ、悪いやつらをやっつけてくれるんだからいいじゃん。
うちらも手一杯だしね」
「でも、それって違法じゃん。
誰がわるいやつかどうやって決めるの?」
「うん、そうだなぁ」
ニュースを見ながら、ランチをするわたしたち。
最近のニュースはこればっか。
天誅組神楽。
現代の必殺仕事人。
悪いやつらをやっつけて、さらしものにする。
そして、その正体は謎。
その時、食堂のドアが勢い良く開く。
私と春香はそっちを見る。
体育界系のわたしたちは先輩が入ってくると挨拶をしなくてはならない。
もう条件反射になっている。ドアが開いただけで、立ち上がってしまう。
あんな音で開けるのは愛莉先輩かな。
バーンって感じで。
そこに立っているのは赤いスーツの女の人。
サングラスかけているけど、まさかあの…
向こうでご飯食べている美那子先輩が立ち上がる。
それも直立って感じで。
女の人はそっちにゆっくり歩いていく。
「まどか先輩っ。おはようございます」
「おはようございます」
美那子先輩の挨拶に合わせて、みんなが続く。
「うん、おはよう。がんばってるじゃん」
「ありがとうございます」
火焔まどか先輩。
LOVE★WITCHESの前リーダー。
そして、黒田沙耶香先輩と並んでLOVE★WITCHES最強と言われる。
突然、卒業を宣言してみんなの前から姿を消した。
普通は芸能界に残って、ソロでやるとか女優になるとかするのに、それもしないで。
噂では結婚説とかあるけど、真実はわたしたちにもわかんない。
でも、その迫力とかオーラっていうのは変わんない。
その点、沙耶香先輩と同じ匂いがする。
「ちょっと帰ってきたんで、卑弥香社長にあいさつに来たの。
まあ、でも元気そうじゃん」
「はい、先輩も」
まどか先輩の近くに、睦美先輩や麻衣先輩も集まる。
「おーい。おまえらもこっちへおいで」
わたしたちも呼ばれる。駆け足で先輩たちのテーブルへ。
「この子たちが新メンバー。
この人がまどか先輩、会うのは初めてだけど知ってるよね」
「はいっ」
美那子先輩の前のセンターを張ってた人。
知ってるどころじゃない。美那子先輩と同じで憧れの人だ。
「へぇ。かわいい子たちだね。
まあ、がんばりなよ」
「春奈に胡桃。小さいのが希美と栞。
それから、こっちのバカが美月」
美那子先輩の紹介。えっ、バカって。
「ふぅん。でも、美那子もバカだったから、気にすることはないよ」
ナイスフォロー。
「えーっ。わたしここまでバカじゃないよ」
そんなふうに思われてたの?
「この子が美月ね」
わたしをじっと見る鋭い目。
まるで吸い込まれそうな感じ。
「あれから世界を回ってたんだけど、ちょっと気になることがあってね」
目をそらして、美那子先輩との会話を続ける。
「気になることですか」
「うん、まあね。
それとちょっとホームシックかな。
美那子たちにも会いたかったし。
ひさしぶりに揉んでやろうか」
「お願いします。とくにこのバカとかまだまだだし」
やっぱ、バカなの?
でも、まどか先輩の特訓とかすごいって聞いてる。
ついていけたのは美那子先輩くらいだって。
愛莉先輩とか、麻衣先輩も相当鍛えられたらしい。
「じゃあ、食事終わったらトレーニングルームに集合ね」
美那子先輩が言う。
わたしたちは、席に戻って食事を続けた。